読書感想日記

最近読んだ本の感想

『日曜の夜は出たくない』 倉知 淳 著(創元推理文庫)

2007-07-31 11:20:54 | 推理物
 ヨメさん文庫から。
 七つの話による短編集である。
 それぞれ別々の世界が広がり、人々がしっかりと生きている。
 いずれも、ごく身近にありそうな世界である。
 純真な人、悩む人、精一杯生きる人、友人に囲まれている人、幸せな人…
 そして、どの世界の中でも、ひょうひょうとしているN先輩。
 その人柄からだろうか、博識ぶりを披露されても、不思議と嫌味には感じない。
 ただ、この性格の人が、現実に私と親交のある先輩だったら、とても苦手だが。
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『過ぎ行く風はみどり色』 倉知 淳 著(創元推理文庫)

2007-07-31 11:12:26 | 推理物
 ヨメさん文庫から。
 なかなかの長編である。
 亡くなる人もいるが、読み終えると、悲しみを幾分含む爽やかな風を感じる。
 不謹慎かも知れないが、私は、登場する人同士の関係だとか、トリックや動機といったことには、あまり興味がない。しかし、この本は、時々ふっと笑ってしまいそうになりながら、気が付くと、栞から20ページほど先を読んでいる。
 きっと、登場する人が、みな人間臭く、作品の中で生きているからだろう。
 それは、N先輩も含めて、人間の持つ、いろいろな顔を自然に描いているから。
 そして何よりも、小難しい言葉を使うことなく、情景が目の前に広がるように綴られた文は、とても読みやすかった。
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『歴代総理の通信簿』 八幡和郎 著(PHP新書)

2007-07-17 15:17:47 | 歴史物
 この本1冊で、日本の歴代総理大臣の略歴、主な業績を知ることができ、無学な私には、日本の歴史についての入門書あるいは解説書として、参考となった。
 ただ、表題のとおり、総理大臣一人一人を評価し、ランク付けしているのには、驚いてしまった。
 それも、それぞれの人の勇気、能力、見識までも見ているそうである。
 結論がわかっている現在からすれば、結果論で過去を批評するのは、簡単なことであろう。
 私は、筆者を全く知らないにもかかわらず、こんな風に考えてしまい、大変失礼かとは思うが、筆者は、その当時、実際に生きていたとしても、同じように総理を批評できるほど、勇気、能力、見識をお持ちなのだろうか。
 大事なことは、それほどの優秀な人こそ、過去の過ちを見つけたならば、様々な角度から検証し、今後、再び同じ事を繰り返さない方法を検討して国を、そして国民を、よりよい方向へ導くのが道理なのではないだろうか。
 そうだ、この際、リーダーたるにふさわしい勇気、能力、見識をもち、自信に満ちあふれる、ご立派な筆者に総理大臣の地位をお任せし、日本を世界に誇れるような、よい国に導いて頂くのはどうだろう。
 後年、国民が筆者を批評し、ランク付けするチャンスがあれば、是非、私も批評に加えて頂きたい、と思っている
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『会津武士道』 星 亮一 著(青春新書)

2007-07-17 15:12:17 | 歴史物
年長者を敬い、仲間・弱者を助け、常に自己研鑽し、藩のために働く。 
そして、「ならぬことは、ならぬ。」
また、自己責任をきちんと果たす。例え、それが切腹であったとしても…
これら会津藩の教育は、今の日本に最も必要なものではないだろうか。
さすがに、切腹ではなくとも、それだけの覚悟をして行動する
という心構えだけでも十分だと思う。
著者は、会津藩出身の著名な人物の行き方、言葉を紹介し、それによって、
小さな島国の日本が、世界の国々と対等にわたりあうために、国民
特に若者が何をなすべきか、を語りかけている。
そして、国民が国のために尽くす、ということの本当の意味を。
それは、決して軍国主義につながるものではなく、そうしなければ
資源のない日本が、世界の中で生き残っていけないのだ、と。
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『桜田門外ノ変 上・下』 吉村 昭 著(新潮文庫)

2007-07-10 14:21:56 | 歴史物
題は、言うまでもなく、幕末日本の鎖国政策を解き、安政の大獄によって
自らの施策を強力に推進した井伊直弼が、水戸藩士に倒される事件である。
 当時の日本は、幕府が諸藩をまとめたものであって、一つの国ではなく、
また、幕府は諸藩の力を弱める施策を進めていた。
 このため、日本としての国力、特に軍事(防衛)力は、近代化した欧米諸国
とは比べものにならないものとなっていて、その事実がようやく知られはじめる
のとあわせて、隣の中国が、欧米諸国に占領されつつあるという、他人事ではない
話が聞こえてきた。
 開国要求に対して「抵抗して占領されてしまうより、いっそ開国してしまい
貿易を増やし、技術を学んで国力を強くする」と考えた井伊直弼ら幕府側と、
「まず天皇の下に民が一つになり、国力を備えた後に、欧米諸国と対応すべき」
と考えた水戸藩などとの意見の相違が、次第に衝突していく。
 つまり、両者とも、その本質は「日本という国の存亡」という同じ目標だった
のに、考え方が異なってしまい、お互いが自分の考えを正論として通そうとした
ために、ちから力づくの衝突となってしまったのだ。
 残念ながら、現在の日本では、国のためにここまで知恵を絞り、命をかける
ようなことは、起こりえないのではないか。
 この本は、水戸藩士側からの視点で書かれているが、幕府側からの視点での
『開国』(津本陽著、新潮文庫)では、正反対の見方を読むことができ、
無学な私にも、歴史というものの奥深さを感じさせてくれる。
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『殺戮にいたる病』 我孫子武丸 著(講談社文庫)

2007-07-07 18:42:36 | 推理物
ヨメのコレクションから。
なかなか面白い作品だった。まず、登場人物が多くない。登場人物を覚えることが苦手なのだ。
次に、登場人物の行動を、時間を追って対比させるという構成で進むので、テンポがいい。
また、猟奇的な場面があるものの、さらっとした表現に抑えてある。
そして、楽しい意味での裏切りもあり、とても読みやすい本であった。
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戦艦大和ノ最期 吉田満 著(講談社文芸文庫)

2007-07-06 00:40:53 | 歴史物
これから、私の読書感想を記していく。
どちらかというと歴史物が多いと思うが、いろいろな本を読んでみたい。
なお、古本屋や図書館を巡って探した本をじっくり読む上に、あまり筆が進まない性分ではあるが、
日記と題した以上は、なるべく更新していきたい。

まずは、今日読み終えたばかりの本が、この「戦艦大和ノ最期」である。
この本は、以前からずっと読みたいと思っていたが縁がなく、先日、ふらっと立ち寄った図書館で
見つけたときは、図書館という場所を忘れて「あった!」と叫ぶところだった。
私には珍しく、どんどん先を読みたくなり、驚異の速度で読み終えてしまった。
日本の最新技術により作られた超弩級戦艦「大和」は、菊水作戦の一環として、3300名以上の乗員と弾薬を満載、沖縄本島への往路のみの燃料を積んで、敵航空部隊の囮として、果ては敵部隊への砲台となるべく、1機の航空援護機もなく、9隻の護衛艦とともに出撃する。
真珠湾をはじめ、日本の航空部隊が、その技術力で大艦巨砲時代の終わりを世界に見せつけたにもかかわらず、あくまでも戦艦だけで、ましてや精神力によって、数と技術で巻き返してきた敵航空部隊と戦え、とする進歩のない軍上層部は、命令のみ発し、戦いの現場での指揮はしない。
戦争に赴くのが国民としての義務、と自分を無理矢理納得させ、すべてに別れを告げて兵士となった人々は、敵に劣る技術を日々の訓練や精神力で補うも、戦いの最前線で無惨に散って行くのみ。
軍の上層部が作戦中止を決断できないなか、現場指揮官が中止した英断。
以前読んだ「指揮官たちの特攻」(城山三郎著)に勝るとも劣らなかった。
私のささやかな読書歴の中で、堂々のベスト3だ。
戦争の肯定・否定を問わず、無駄に時間を過ごしてしまっている自分の人生を反省させられる作品である。
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