「エレジーは流れない」三浦しをん 著 双葉社

　「空想の世界」とは思いつつも、実在している町で暮らす人々の何気ない暮らし、そして若者たちの日々の喜怒哀楽を描いているかのような、温かい作品。
　主人公だけでなく登場する誰しもが、それぞれの人生を気負うことなく、しかし精一杯生きていることが手に取るように伝わってきて、「生きる」ということが尊く愛おしいものだと教えていただきました。
　とても素敵な作品でした。
　「生きる」ということについて、半端な啓発本より、この作品をお勧めします。

「包帯クラブ」天童 荒太 著 筑摩書房

　他人に厳しく、つまり自己責任が厳しく問われる時代である。
　何らかの被害に遭い傷ついたとしても、いわれのない誹謗中傷を避けるためには、誰かに打ち明けることは憚られ、本人自身が傷から目を背け、隠し、何事もなかったかのように生きていかなければならない世の中である。
　困り、疲れ果てている人にそっと寄り添い、少しでも悲しみや苦しみを分かち合えるような生き方ができれば、と思う。