読書感想日記

最近読んだ本の感想

「BOX!」 百田 尚樹 著 太田出版

2010-01-30 09:11:27 | 小説
 若いって、こんなに素晴らしいことだったのか…と今さら気づきました。
 そしてまた、強いって、格好いい。単純に、そう思いました。
 それは「才能」であり「力」であり又は「技術」でしょうか。
 どんなことであれ、誰にも負けない「武器」をもっている人…
 誇れる武器を何一つ持たない私には、とてもうらやましく、憧れる存在です。
 そして、努力して成功した人に対するつまらない妬みでしょうか…私は、天性に備わった武器こそ、誰も真似のできない神懸かり的で最も優れているモノであり、「努力」して手に入れた武器をやや格下に見てしまうような先入観を持っていました。
 しかし、物語の中で頑張っている彼らの姿から、一生懸命に、地道な努力を積み重ねて手に入れた武器こそ、実は天性の武器よりも優れたモノではないか、と思えるようになりました。というか、本当は、努力することこそ尊く素晴らしい、ということを頭ではわかっているはずなのに、努力が続かない自分を自己弁護したいがために、つい、努力することを蔑んでしまう…そんな歪んだ妬みこそ蔑むべきことであると、やっと目が覚めたのでしょうか。
 動機は何であれ、年齢も関係なく、様々な欲望や障害などを乗り越えて、ただ一つのことに集中して努力を継続できる能力、これこそ真の天性の武器であり、その努力の日々という絶対的な自信に裏打ちされることで、手に入れた武器は最強のモノとなると…
 あー、学生の頃から、もっと真面目に、いや馬鹿になって努力していたら、私の人生は違っていたのかな…と後悔したり、幾つかの淡い想い出を思い浮かべつつ、しかし、そんなことを忘れさせてくれるように、ひたむきで元気のいい彼らから、あらためて「努力」の素晴らしさを気付かされ、そして何よりも「元気」を分けてもらいました。
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「失われた町」 三崎 亜紀 著 集英社

2010-01-23 22:28:38 | 小説
 故郷や大切な人を失ってしまったら、どうすればよいのだろう…
 「失う」とは、亡くすこととは比べものにならないほど、遺された人に深い傷を負わせる出来事である。
 ただ平凡に日々を暮らす町の人々…人知の遥かに及ばない大きな力に魅入られたその日から、彼らには抗う術もなく、まるで運命であるかのように、ごく自然に受容させられ、やがて、その時を静かに迎える…不可思議で、あまりにも理不尽な現象…
 私だったら…家族を連れてどこまでも逃げ回るのだろうか…あるいは失った人や故郷の思い出を胸にして密やかに又は逞しく生きていけるのだろうか…それとも、勇敢にこの現象へ戦いを挑むのだろうか…
 人々が生きていた証…「残光」の場面に、私は胸が苦しくなると同時に、思わず鳥肌がたった。更には、装幀の演出にも…
 どこまでも理不尽で執拗な現象に、そして、この物語に終わりはあるのだろうか…
 待てよ…もしかすると、もはや私も、いつの間にかこの運命を受け入れているのかもしれない…
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「生き方」 稲盛 和夫 著 サンマーク出版

2010-01-20 12:04:51 | 評論
 ここには、誰もがすぐに人生を成功というレベルに導いてくれるような、『魔法』のような言葉は書いてありません。
 恐れ多いことですが、こんな私でさえ、正直に言って「何だ、そんなことか。言われなくてもわかっているよ…」と感じる部分がありました。
 しかし、今思えば、それは言葉の表面上の意味しか考えていなかったためで、危うく、私は、このままいつまでも凡人の域を出ないところでした…
 当たり前のように思えること。だからこそ、学生の頃に戻ったつもりで読み返しました。 すると、何度めでしょうか…ようやく私の鈍い頭が反応して「そうだったのか!」という閃きと同時に、やや大げさかもしれませんが、思わずひれ伏してしまいそうになりました。
 そうです。今までの私は、わかっているつもりのことを本当は理解していなかったのです。
 だからこそ、すべてのことが中途半端に終わり、あきらめてきた原因が、自分自身にあることを理解せず、私の人生はいつもこんなものだ、と思いこんでいたのです。
 さあ、あとは、私なりに理解したことを実践し、継続していくだけです!
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「邂逅の森」 熊谷 達也 著 文藝春秋

2010-01-17 23:27:17 | 歴史物
 冬の川を上流へ上流へと遡ると、やがて雪に包まれた深い山々の世界に辿り着く。
 そこに、生き物の姿はない。
 なぜなら彼らは、厳しい季節を乗り越える最も合理的な術を知っているからだ。
 そんな中で、季節に応じた身体能力を持たない生き物…人間…は集落を作り、先人からの知恵…自然や神を敬い、恐れ、授かった糧に感謝して、必死に生き抜いてきた。
 しかし、工業化が進むと人間は驕り、豊かさを求めて次々と自然を破壊する…ひたすら利潤を求めることを、生きる術としてしまった…
 掟としきたりに縛られつつ、出会いと別れを重ね、それでもなお、時代の流れに抗おうとするかのように、力強くひたむきに生きていく主人公の姿は、まさに「生きる」とは何か、を教えてくれる。
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「くらのかみ」 小野 不由美 著 講談社

2010-01-11 00:33:07 | 推理物
 まだ子どもの従兄弟たちが過ごした夏休みの数日間のお話しです。
 私は、ほんの一瞬で、小学生の頃に戻っていました。
 とは言っても、彼らのように利発なところではありませんが…
 私は、母方の従兄弟が多かったので、毎年、夏休みになると、親戚のほとんどが住んでいた地方へ一人で遊びに行かせてもらい、それぞれのお宅を何日か周期で泊まらせて頂き、さらにはみんなで集まっては賑やかに過ごしていた日々…
 妙に背伸びをして大人ぶってみたり、怖い世界の話しに興味をもったり…
 彼らが不思議な出来事の謎を解いていく姿は、私と従兄弟たちの姿と重なり、ついには、私が昔から彼らと従兄弟だったような錯覚に陥っていました。
 ですから、彼らと一緒に過ごす時間が途切れてしまったあと、現実の世界へ意識を戻すまで、けっこう時間が必要でした…
 とてもいい時間を過ごさせて下さった著者に、感謝します。
 あー、あの頃に戻ることができたなら…
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「銀漢の賦」 葉室 麟 著 文藝春秋

2010-01-07 16:30:55 | 歴史物
 一般に、「義」を貫くとは、主人に忠誠を誓い、忠実に働くことをいうのでしょう。
 しかし「義」を貫こうとすれば、かえって主人に対して不義を働く、という覚悟をしなければならないことも…
 謀略の世界では、敵は多い上に、真の「義」は巧妙に隠されるもの。
 理解されないことを承知の上で、すべてを犠牲にして「義」に生きる人生とは…
 また、人は年を重ね、境遇や立場によって変わってゆくもの。
 それでも、心の奥深くに残っていたのは、幼友達との夢であり絆である「義」…それぞれが、夢と義に生き、命をかける…
 そして、時を経て、今まで見えていなかったものが見えるようになると…
 「義」に生きるとは、とても奥の深いことだと感じさせていただきました。
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「デューク」 江國香織 著 講談社

2010-01-02 00:15:52 | 小説
 あなたは、今、逢いたい人はいますか…
 私には、逢いたい人が何人もいます。
 お世話になった人、昔話しをしたい人、言いそびれてしまったお礼を述べたい人、そして今更ながら、どうしても謝りたい人…
 懐かしい人たちと過ごした時間…ともに遊び、喜び、ときには怒り…そんな過ぎ去った日々を、まるでつい最近のことのように思い出す一方で、あのとき、あんなことをしておけばよかった、もっとこんな話しをしたかった、きちんと謝っておくべきだった…そんな後悔ばかりが募ってしまいます。
 それでも、お互いが生きてさえいれば、いつの日にか逢えるかも知れませんが、もはや違う世界へ旅立ってしまった人に対しては、その願いは永遠に叶わないからこそ、寂しさと募る思いは増すばかりです。
 特に、再び会えない相手が、大切な家族だったペットならば尚のこと、会うことができたなら、お互いに理解できる言葉で、いろんな出来事を話してみたい、そして、ちょっと怖いけれども、私のことをどう思っていたのか、正直な気持ちを聞いてみたい…
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