俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

詐欺

2015-05-27 09:38:50 | Weblog
 振り込め詐欺が巧妙化してドラマ仕立ての詐欺になりつつあるようだ。何人かで様々な役を演じて臨場感を出しているそうだ。詐欺に加担する気は全く無いが、2つの理由から高度化は却って損だと指摘したい。
 1つは当たり前のことだが、共犯者が増えるほど足が付き易い。
 もう1つは全く意外な盲点だが、比較的利巧な人まで引っ掛けてしまうことだ。利巧な人まで狙えるのならそのほうが稼ぎが多くなると思うのは大間違いだ。利巧な人であればどこかで「怪しい」と感付かれる可能性が高くなる。途中で気付かれたらそれまでに積み上げたトリックが無駄になるだけではなく、逆に罠を仕掛けられる恐れさえ生じる。むしろ徹底的に愚か者に絞って仕掛けたほうが確実かつ安全だ。普通の人なら絶対に引っ掛からないようなトリックにすれば普通でない人だけが引っ掛かる。
 宝くじの当選番号を新聞発表の前日に知らせて予め当りくじが分かるかのように装う宝くじ詐欺など、まともな人なら絶対に引っ掛からない。新聞発表が半日遅れであることを知らないお目出度い人だけが引っ掛かる。こんな人だけを狙っていれば手掛かりを残さず簡単に騙せる。大体、宝くじを買うという時点で知的レベルの低さが分かる。配当率が50%にも満たない世界最低のギャンブルに手を出すような人は詐欺師にとっては絶好のカモだろう。
 かつての天下一家の会や豊田商事などは、普通の人であれば引っ掛からないほどレベルの低い詐欺だった。逆説的な言い方だが、低レベルだったからこそ大儲けできたと言える。振り込め詐欺の原点である「オレオレ詐欺」が成功したのもその手口が稚拙だったからだろう。
 今もドイツでは発禁の書であるヒットラーの「わが闘争」にはこう書かれている。「宣伝は総て大衆的で、その知的水準は宣伝がめざすべき者の中で最低の者が分かる程度に調整すべきである。それゆえ獲得すべき大衆が多くなればなるほど純粋な知的高度はますます低くしなければならない。」ヒットラーが狙ったのは「わが闘争」を読もうとさえ思わないほど知的レベルの低い人による熱狂だったようだ。
 大阪都構想は無料の「敬老パス」を取り上げられた老人の怒りによって潰された(と思う)。大阪都構想と敬老パスは全く別の問題なのだが、自民党などはこのことを捕えて「都になれば公共サービスが低下する」と訴えていたらしい。こんないい加減な主張を鵜呑みにする人々の意向によって政策が決まるのだから、民主主義とは不合理な制度だ。


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