俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

ランドセル

2014-10-18 10:16:31 | Weblog
 最近、欧米や中国でランドセルが注目されているそうだ。子供のための鞄としてではなく機能性・耐久性が優れた大人のためのバックパッキングとして評価されているらしい。
 当然のことだと思う。ランドセルほど多くのモニターの意見に基づく商品は珍しかろう。毎年100万個以上売れる鞄など世界中のどこを探しても見つかるまい。ギネス級のヒット商品と言っても良かろう。消費者からは連日、莫大な数の意見が寄せられるだろう。フィット感や丈夫さ、仕切りの機能などについて天文学的な数の要望が寄せられ、熾烈な競争をしている各メーカーは他社に勝つために改善に改善を重ねた。ランドセルには日本人全員の知恵が集結されている。世界に誇れる逸品となって当然だ。
 日本文化には奇妙な特性がある。権力者や文化人は碌な物を作らないが、庶民は良い物を自分の生活に取り入れる。世界に衝撃を与えた浮世絵は庶民の娯楽だったし、今や世界に誇るサブカルチャーである漫画やアニメは親や教師にとっては目の敵だった。草履はビーチサンダルとして世界中に普及し、風呂敷は世界で最もエコなラッピング用品だ。日本の庶民には良い物を識別する能力が備わっており、それが海外で評価されてから初めて画期的な製品だったと気付かれる。
 青色LEDのような最先端技術だけではなく、日本人の暮らしは素晴らしい文化の宝庫だ。ランドセルのようにクール・ジャパンとして評価されるべきものはまだまだ沢山あるだろう。
 私は漢字かな混じり文は世界に誇るべき文化だと思っている。表音文字と表意文字の双方の長所を生かす表記はどこにも無かろう。良いものなら何でも取り入れるという日本人の長所が現れている。韓国ではようやく漢字が見直されつつあるようだ。ハングル一辺倒にしたせいで韓国は日本と中国の文化から切り離されて誤った国粋主義に向かってしまった。この偏狭さが文化の発展を妨げ`Don't Korea'が「不正をするな」の意味で使われるほどの国民性の劣化を招いてしまったのではないだろうか。

2014-10-18 09:41:42 | Weblog
 自然現象は目的を持たない。台風は条件が揃えば発生してその後の気象条件に基づいて移動するだけだ。地震は大地の歪みが大きくなれば発生する。これらに目的は無い。条件が整えば勝手に発生する。自然現象を擬人化して目的論的に解釈すべきではない。
 その一方で生物には目的がある。自己の生存と繁殖だ。この2つの目的に背く個体は淘汰される。生物の総ての器官はこの目的を達成するために機能する。自然を目的論的に解釈してはならないが生物の活動は目的論的に説明できる。宗教は自然現象まで目的論的に解釈しようとして嘘を並べるが、生物は生物学的あるいは進化論的な目的論で説明できる。
 有害な物を食べた動物は下痢をする。これは有害物を体外に排出するという目的に適った反応だ。この際、酸に対するアルカリのように毒消しになる薬であれば有効だが、通常使われる下痢止めは腸の働きを抑えるだけなので有害物を体内に留めることになり却って危険な状態を招く。
 打撲をすれば腫れて熱を持つ。これは血流を増やして患部を治癒するための防御反応だ。冷やして腫れを引かせることは治癒の妨害になる。
 生物の体は合目的的に作られている。そのことを理解せずに不快な症状だけを抑え込もうとする対症療法は殆んどが有害だ。
 蚊に刺されれば痒くなる。これも目的があってのことだ。多分、蚊に刺されても痒くならない体質の人はかつていただろうし今もいるだろう。しかしこれは不適応と言うべき変異だ。蚊のような病原体を媒介する虫に刺された場合、不快であるほうが適応体と言える。
 デング熱で騒いだ東京やマラリア感染の危険がある南国であれば蚊の危険性を理解して避けようとする。しかし通常人が蚊を嫌うのは刺されると痒いからだ。実際、虫刺されの薬は感染症の予防薬ではなくただの痒み止めだ。人は感染症を恐れず痒みを嫌う。だから蚊に刺されたら不快を感じることが感染症の予防のために役立っている。
 痛みを殆んど感じない人がいる。彼はいつも傷だらけらしい。それは痛くないために傷を怖がらないからだ。このように痛みが傷の予防力として働く。蚊に刺されても不快を感じない人は蚊を余り嫌がらない。だから感染症に罹り易い。蚊に刺されてすぐに痒みや痛みという不快感があるからこそ人は蚊に刺されまいとして、それが感染症を予防する。痒み止めを虫刺されの薬と思っていることこそ人類の愚かさの証明だ。脳よりも体のほうが賢いから、体は蚊に刺されれば不快を感じてそれを回避しようとする。人類は愚かなので重大な支障となる感染症を恐れない。だから痒みという不快感が最も有力な防疫策となる。体は脳以上に合目的的に反応する。これは進化の賜物だ。不快を緩和するだけの対症療法は人類の浅知恵の証しだ。不快な症状を警鐘と捕えて真因に対処することこそ必要だ。