こんにちは「中川ひろじ」です。

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20231208 11月定例県議会 一般質問その3 介護保険制度について

2023-12-14 22:36:01 | 長野県議会

【中川】次に介護保険制度について、お伺いします。

 2000年からスタートした介護保険制度は、国・県・市町村においては3年ごとの見直しを行い、現在来年からの第9期介護保険事業計画の策定を行っているところと承知しています。

 最近の新聞報道で、訪問介護事業所が廃止をしていることや、訪問介護員が不足していると感じている事業者が9割に達していることなどが報道されています。また、介護疲れから子どもが親を殺すというような悲惨な事件が続いています。介護職の離職とともに、介護をする家族の離職者も後を絶ちません。

(1)そこで、介護保険制度の課題についてお伺いします。最初に介護労働者の処遇改善についてです。私が調査した松本市社会福祉協議会の訪問介護事業所では、常勤職員が37人、パート職員が36人の計73人体制です。このうち20代はゼロ、50代、60代が50人58.5%、パートの70代が9人12.3%という状況です。訪問介護員の不足から、朝夕の利用が必要な時間帯に要望に応えらない時があるそうです。ケアマネージャーさんからは、「これまで使っていた訪問事業所がバタバタなくなっている。危機的な状況だ。介護の仕事がきついというイメージだけが伝わっていて若い人から敬遠されている。介護も医療と同じように人間の尊厳を守る仕事として社会から認知してほしい」と訴えられました。

 そこで、お伺いします。

①ここ5年間で長野県内の訪問介護事業所の廃止数、および新規指定者数はどのような状況でしょうか。

②県内の訪問介護員数の推移及び給与の状況はいかがですか。

③外国人人材の介護職場における就業の状況はどうなっていますか。

④訪問介護員の処遇を改善するためには、介護報酬の引き上げが必要ですが、県としてどのような取り組みをしてきましたか。

⑤県は訪問介護員の資格取得を支援しているところですが、そもそも資格を持っている人が辞めている現状があります。訪問介護員の処遇改善に向け、ケアマネージャーや訪問介護員の有資格者にアンケートを実施したらどうかと思いますがいかがですか。

 以上健康福祉部長にお伺いします。

【健康福祉部長】介護保険制度について御質問を頂戴しております。

まず訪問介護員の処遇改善について5項目お尋ねいただいております。

最初に訪問介護事業所の廃止数と新規指定数でございますが、令和5年4月1日から過去5年間で、廃止事業所が111事業所、新規指定した事業所が110事業所でございます。

次に県内訪問介護職員の給与と人数でございます。

令和4年度介護労働実態調査によれば、訪問介護員の月額賃金は241,997円となっております。

なお、県内の訪問介護員数は令和4年度末で5,879人であり、ここ数年は概ね横ばいで推移をしております。

 次に外国人人材の就業状況でございますが、長野労働局の「外国人雇用状況」によると、令和4年10月末現在、県内の社会保険・社会福祉・介護事業において、外国人を雇用している事業所数は178事業所であり、外国人労働者数は677人でございます。

次に、県として、介護報酬引き上げにどのような取組みをしてきたかというご質問でございますが、介護職員の処遇改善のためには、まずは、国において十分な介護報酬が設定されることが必要でございまして、これまでも、介護報酬の増額改定など必要な制度の改善を強く要望してきたところでございます。

また、県としては、介護職員の方により高い賃金が支払われるよう事業所に対して集団講習会や専門的な相談員の派遣などを通じて、より上位の処遇改善加算を取得していただくための支援を行い、積極的に働きかけを行ってきたところでございます。

有資格者にアンケートを実施してはどうかといったご質問でございます。

既存の調査としては、介護労働安定センターの介護労働実態調査や県の介護事業所サービス調査がございまして、これらの調査結果によりますと、賃金の問題もさることながら、離職の主な理由として職場の人間関係などが挙げられておられまして、職場の環境改善が必要なことが伺えると考えております。

いずれにいたしましても、ご指摘のとおり介護現場で働く訪問介護員の声を聞くことは大変重要でございますので、県としても様々な機会をとらえて把握に努めてまいります。

【中川】続いて、地域包括ケアシステムについてお伺いします。地域包括ケアシステムは、団塊の世代が後期高齢者になる2025年を目指して主に在宅の強化を目指してきました。しかし、実際は75歳の方は、まだまだお元気な方が多く、現在は2040年に介護需要がピークになると想定されています。

厚生労働省の資料によると在宅サービスの利用者数は2000年97万人から2020年384万人と4倍に増え利用率は65.1%から83.1%に増えています。一方施設サービスは特養の入居条件が原則要介護3以上となったことから2000年52万人から2020年95万人に1.8倍に増えていますが、施設サービスの利用率は地域密着型を入れても34.9%から16.9%へと半減しています。

病院においては、地域包括ケア病棟が設置され、患者が早期に地域包括ケア病棟から出ることで診療報酬が加算されるという制度も入りました。結果として、老健だけでなく病院でも3か月ごとに行き先を探さなければならないという苦労が増えました。

 国は、この地域包括ケアシステムの深化(深める)と言っていますが、これまでの総括が必要だと思います。そんな観点から以下質問をいたします。

①医療における訪問診療、看取りの数は増えてきたのでしょうか。

②地域包括ケアシステムの状況が見えづらいという課題がある中で、県としてどのように取り組んできましたか。

③在宅の伸び率の要因は、特別養護老人ホームの受け入れが要介護3以上になったことと、サービス付き高齢者向け住宅が在宅扱いとなっていることだと考えられますが、県の認識はいかがですか。

④2015年から要支援1,2を総合事業で行うこととなりました。かねてから小規模町村で受け入れできる条件があるのか心配されてきましたが、状況はどうでしょうか。また、多様なサービスの提供ができるようになりましたが、県内における緩和型、住民主体型、短期集中型のサービス提供状況はいかがでしょうか。

⑤今後、地域包括ケアシステムを深化させていくためには、「地域内移動」「緊急通報システム」「医療と介護の連携強化」「遠隔地医療」「男女が共に担う介護」「フレイル予防」「人材確保支援」「地域共生」などの課題が浮かび上がっています。9期の計画に向けて、県としての支援が必要と考えますが、いかがでしょうか。以上健康福祉部長にお伺いします。

【健康福祉部長】次に、地域包括ケアシステムのこれまでの総括について、5項目ご質問をいただいております。

まず、訪問診療及び看取りの件数でございますが、平成28年度と令和3年度を比較いたしますと、訪問診療は約21万1千件から、約23万9千件へ、看取りの件数は約3千3百件から約5千1百件へといずれも増加をしているところでございます。

次に、地域包括ケア体制の構築状況の「見える化」に向けた取組でございます。

令和3年度から、健康寿命の延伸や在宅死亡率など、明確な成果指標を掲げ、ロジックモデルを使って分かりやすく「見える化」を図ったところでございます。

成果指標の状況について申し上げますと、例えば、健康寿命は男性で平成30年の81.0歳から令和3年には81.4歳、女性では同じく84.9歳から85.1歳と改善をしておりまして、令和3年はいずれも全国1位となっております。

次に、在宅サービスの利用者割合が増加した要因についてのご質問でございます。

介護保険制度が開始されてから20年以上を経過し、要介護の方が増加する中で、在宅サービスの充実が図られ、それを利用しながら住み慣れた地域で暮らしていくという意識が浸透したことが主な要因であると考えております。また、施設サービスは、今後、高齢者人口がピークを迎えますので、その時期を見据え、近年の整備数は以前よりは控えめになっております。

なお、ご指摘の特養の入所が介護度の高い方に限定されるようになったり、あるいは、制度開始当初はなかったサービス付き高齢者向け住宅が充実し、入居者が在宅サービスを利用される方も多いといった点も、そういった流れを定着させるうえで影響しているものであろうと考えております。

次に、総合事業のサービス利用や提供状況でございます。

介護予防・日常生活支援総合事業が開始される前の平成27年3月には、介護予防訪問介護及び通所介護の利用者は14,099名でございましたが、令和5年4月に、総合事業の従前相当サービスを利用した者は14,142名とわずかながら増加しており、提供体制としては維持できているものと認識をしております。

「多様なサービス」につきましては、63の介護保険者のうち、基準緩和型が56保険者、住民主体が18保険者、短期集中は30保険者で提供されている状況でございます。

最後に、様々な課題について県の支援が必要ではないかというご質問でございます。

現在策定中の第9期長野県高齢者プランでは、「地域包括ケア体制の深化・推進による健康寿命の延伸」、あるいは「介護人材の確保・介護現場の生産性向上」などを重点施策として掲げる予定でございます。ご指摘のとおり、地域包括ケア体制の深化は重要な課題でございまして、そのためには医療と介護の連携強化をはじめとして、様々な問題がございます。県として、取組が進むよう、市町村を支援してまいります。以上でございます。

【中川】介護保険制度の導入時、介護の社会化が目指されてきましたが、保険制度がゆえに必要な施設整備や介護報酬の改定が行われれば保険料の引き上げにつながるため、持続可能な制度としていくため様々な改正が行われてきました。現在、国においては、介護職の賃上げを来年2月から月6千円上げることのほか、介護施設の相部屋代の個人負担、介護サービス利用費の2割負担の対象拡大などについて検討が行われています。

一方で、要介護1,2も総合事業に加えることや、ケアプランの有料化などについては、介護の現場から「要介護1,2であっても認知症の方への対応は総合事業では厳しいのではないか」「介護サービスの利用控えにつながる」「有料化に対する利用者からの反発」といった意見が出され、次期見直しまで議論が持ち越されています。

介護事業の直接の担い手は市町村ですが、持続可能な制度と高齢者にとって必要な介護のはざまを埋めることが県の役割ではないでしょうか。

⑥そこで、知事にお伺いします。介護の現場を担う皆さんが誇りをもって働き続けることができるように、そして高齢者が安心して老後を過ごせるような長野県にしていかなければならないと考えますが所見を伺います。

【知事】私には、介護現場を担う方々が、誇りをもって働き続けることができるように、そして高齢者が安心して老後を過ごせるような長野県にしていかなければならないと考えるが、所見を伺うというご質問をいただきました。

まず、介護現場で日々ご尽力されている皆さま方に、心から敬意を表したいと思います。

介護職員の皆さま方の処遇改善が図られ、そのことによって必要な介護人材が確保されるということが現時点において最も重要だと考えております。
 そのため、県としては、介護報酬の増額を国に強く要望するとともに、介護事業所が処遇改善加算を取得できるよう、積極的に支援していくほか、介護ロボット・ICTの導入支援などによる、介護現場の生産性向上を促していきたいと考えております。

また、高齢者が安心して地域で暮らし続けるためには、地域包括ケア体制の一層の充実が必要だと考えております。
 これまでの取組で、例えば、身近な生活支援サービスを実施する市町村が増え、訪問診療や看取りの件数も増加してきたところでございます。

現在策定している第9期高齢者プランでは、こうした方向性をより推し進め、高齢者の方々が安心して暮らせる長野県となるよう取組んでまいります。

【中川】介護保険制度についてですが、松本市は、9期の計画をたてるにあたって、実態調査を行っています。現在居宅要介護・要支援認定者のうち5割の方が施設などへの入所を希望していません。希望している方でも、その理由は「家族に迷惑をかけたくない」「自宅では急な容態変化や介護者の都合など緊急時の対応の面で不安がある」という理由です。

一方、家族を介護されている方は2割の方が「今後も働きながら介護・介助を続けていくことが難しい」と回答、また「認知症への対応」「夜間の排泄」「外出の付添」に不安を感じているそうです。

あらためて原点にかえって、介護の社会化ということを考えるべきではないかということを最後にお訴えします。


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