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20160425 第439回「月曜の声」

2016-04-25 23:53:17 | 政策・訴え・声
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TPPと私たちの食・農・くらし 鈴木宣弘東京大学教授 より現実的な影響試算

2016-04-25 23:44:32 | TPPと私たちの食・農・くらし
より現実的な影響試算~必要な追加予算は10年で8兆円
まず、追加的対策がない場合に、かつ、生産性向上を前提としない(生産コストは現状のまま)の場合に、どれだけの影響が推定されるかを示し、だから、どれだけの対策が必要かの順で検討すべきである。
また、影響の推定には、ブランド品は価格低下が半分といったような適当な仮定でなく、過去のデータに基づいて、輸入価格と国内価格(例: 輸入牛肉1円下落でA5牛肉は0.87円下落)、在庫水準と価格(例: コメ在庫1万トン増で米価41円/60kg下落、バター1割増で2.6%下落、脱粉は2%下落)、価格と供給量(例: 米価1%下落でコメ供給は1.162%減少)などの関連性の程度を計測し、その係数を適用することで、一定の合理性を確保して価格下落による生産量・生産額への影響を推定することができる。表1には、そのような丁寧な影響の代替的な推定手順に基づいた鈴木研究室グループによる生産減少額の推定結果が示されている。これは、H25の生産農業所得統計の全国の品目別生産額の上位100品目について、関税がゼロの花卉類などを除いて、生産減少額を推定したものを簡潔にまとめたものである。

個別に項目立てした主要品目のみでも、農林水産業の生産減少額は1兆円を超える。全体では、農林水産業の生産減少額は、農業で12,614億円、林業・水産業も含めると15,594億円程度と推定される。
さらに、産業連関分析も行うと、農林水産業の生産減少(15,594億円)による全産業の生産減少額は、36,237億円と推定される。波及倍率は2.32である。就業者に与える影響として、対象品目の生産に係る農林水産業で63万4千人、全産業で、76万1千人の雇用の減少が見込まれる。
さらに、日本学術会議答申(平成13年)によると、主として水田の持つ洪水防止機能、河川流況安定機能、地下水涵養機能、土壌浸食防止機能、土砂崩壊防止機能、気候緩和機能の貨幣評価額の合計は58,345億円にのぼる。水田面積の3.7%程度が減少することに伴って、こうした多面的機能も3.7%が失われると仮定すれば、全国における喪失額は、2,159億円程度と見込まれる。以上によって今回の政府試算が著しい過小評価に陥っていることが裏付けられる。
我々の試算では、価格下落による生産量の減少率を過去のデータから推定して生産減少額を約1.3兆円と推定したが、これから価格下落を相殺するのに必要な差額補填額を計算すると年約6,600億円と見込まれる。牛肉関税などの喪失分も考慮すると約8,000億円の追加予算が毎年必要になる。10年続ければ8兆円である。つまり、再生産が可能なように国内対策をしたと主張するには10年で8兆円規模の追加予算が必要であり、そんな予算措置は示されていないし、今後も無理であろうから、国会決議は守られたという主張は破綻している。7年後にもう一段の譲歩が半ば義務付けられているのだから事態はさらに深刻である。
国から通達を出された都道府県庁にも同情する。そもそも、「影響がないように対策をとるから影響がない」というような国の試算に準拠して、各道府県での影響額を試算し、それを踏まえての対策検討を指示するというのは、ほとんど何をやっているのか、意味不明であると言わざるを得ない。このような数字を基にしていては、TPPの影響がどれだけあるかを把握して、それに対処するための政策を検討するという本来あるべきプロセスが完全に壊されてしまう。
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