民主党の代表選挙が、菅直人総理の勝利で終わり、内閣改造が行われた。民主党代表選、内閣改造を受けて、マスコミの世論調査では、菅内閣の支持率がV字回復を見せている。10月6日にも召集が予定されている臨時国会だが、参議院で野党が多数を占める中で、菅内閣の手腕が試される。菅総理が、忘れてならないのは昨年の衆院選で政権交代を望んだ国民の願いである。それまでの自民党小泉改革による余りに行きすぎた規制緩和を転換し、疲弊した生活を再建してほしいということであったはずだ。
■バス産業の規制緩和
2000年貸切バス業界における事業参入要件が緩和が行われ、大型は5台、中型は3台から参入が可能となった全国では2111社から4196社へ倍増。長野県内は50数社から180社以上に実に3倍となった。運賃も認可制から届出制に変わったため、競争激化が運賃のダンピングにつながり、そこで働く労働者の賃金を低下させていった。車掌も乗務が義務付けられていたが、原則不要とされ、ガイドクラブなどへ移り派遣業務化されてしまった。
路線バスも、同様に参入が免許から許可制に変わったが、影響が大きかったのは路線の退出が許可制から事前届け出制になった影響が、直接住民の足を奪っていく結果につながっていった。この10年間で全国で3167路線が廃止され、交通空白地帯が生まれ、自治体などの運行によるコミュニティーバスが運行を始めたが、運転手の多くは1年間の雇用契約による低廉な賃金となり、バス業界全体の労働者の賃金を引き下げ、年収300万円台となっている。
■タクシー業界の規制緩和
参入規制緩和により、もっとも悪影響が出たのはタクシー業界である。2002年に全国で7046社だった事業者は、12786社に増えた。輸送人員(お客)は約3億人減っていることから、奪い合いとなりワンコインタクシーなどが生まれた。タクシー業界は、歩合給が中心であるため直接労働者の収入減となった。タクシー労働者の平均年収はピーク時1991年430万円から2009年には280万円にまで落ち込んでいる。地方は、200万円を割り込んでいるところもある。
昨年、ようやくタクシー適正化に向けた特別措置法がつくられ、地域協議会がスタートし、営業台数の削減や下限運賃の適正化が始まったが、規制緩和の是正には程遠く、賃金ダンピングの防止、労働条件の改善には至っていない。
■交通基本法の制定を
現在、国土交通省は、「健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動権を保障」するための交通基本法制定に向けた検討が行われている。交通基本法制定の目的は「移動権保障による活力のある社会の実現」を目指すとし、「都市、地方、離島を問わず、バス、タクシー、鉄道、旅客船等の多様な交通手段による地域公共交通を維持・再生し活性化。自家用と公共の交通手段の最適な組合せ(ベストミックス)を再構築」「道半ばにある交通施設や乗り物のバリアフリー化を徹底」「人々の知恵と新しい技術を活用し、効率的な方法で地域の交通手段を確保する」としている。
その実現のために、「地域の協議会を通じた地域公共交通の維持、再生、活性化」を行うとしている。
国の施策としてモータリゼーションを進め、公共交通分野で規制緩和を行い、それをフォローするため「地域公共交通再生活性化事業」が行われるという側面が無いわけではない。しかし、CO2削減問題が世界的な課題となってきた今日、脱マイカー社会の構築に向け交通基本法制定に向けた議論を加速させていきたい。
■9月23日は「カーフリーデ―」
松本市は、9月16日から23日を「モビリティーウイーク」とし、中心市街地において車に頼らない空間をつくりだし、徒歩・自転車・公共交通の利用による環境にも優しい街づくりを目指す運動の一環として行われます。
最終日の23日は「カーフリーデ―」として、大名町などが歩行者天国となり、様々なイベントが開催されます。この機会に交通のこと移動のことを、考えるキッカケにしてほしいものです。
県は、これまでに「ノーマイカーデー」の実施から一歩進め、「ノーマイカーウィーク」を実施していますが、まだまだ参加企業が少ない状況です。さらに今後、取り組みを進めていく必要があります。