重ねてロシアの暴挙を糾す

この間、外務省、海上保安庁、水産庁からのヒヤリングを続けてきましたが、マスコミも含め国民の皆さんにかなり誤った認識が広がっていることに憂慮を禁じえません。

前々回の私のエントリーに対しても、違法操業であったことを前提にした議論が散見されましたが、それは、ロシア側の一方的な主張に基づく誤った認識に他なりません。拿捕された船の船長が過去に「レポ船」に手を染めていたことかに、漁で収穫を上げるためには日ロ間で合意された協定の定めるラインを超えて操業することが半ば常態化してきたこと、などを議論の「前提」にして、ロシア側の主張を鵜呑みにしたものです。

ロシア側の主張ばかりが巷間流布されているのは、拿捕された船の乗組員がロシア側に拘束されていることに最大の原因があることはいうまでもありません。船に積まれたGPSの記録を検証すれば、第31吉進丸がどの地点で操業し、どの地点で銃撃・拿捕されたかが判明するはずですし、ロシア国境警備艇の行動が適切なものであったかどうかについても、乗組員の事情聴取を日本側で行って初めて明らかになるものです。(もちろん、その結果、吉進丸の違法操業が明らかになる可能性も排除できません。)

したがって、ロシア側が関係者全員の身柄を拘束し、一方的な主張を繰り返している現段階においては、デュー・プロセスの観点からも、外交交渉の観点からも、あらゆる予断は排してかからねばならないと思います。ここは、無防備の漁船に銃撃を加えたロシア側の過剰警備について強く非難しつつ、真相究明の「公平性」を担保(ロシア側主張に対し、日本側の事実認定の基づく主張を明確にすること)するためにも、粘り強く、船長以下乗組員全員の即時解放を求め続ける以外にありません。

また、そのすべての前提として、そもそも北方領土が我が国固有の領土であること、したがって、その周辺海域はあくまでも日本の領海であること、すなわち、かかる海域においてロシア政府に我が国漁船を拿捕する権限はなく、「領海侵犯」を容疑として当該船舶の乗組員を訴追することなど容認できないことを言明する必要があります。

もちろん、日本側の漁業関係者に対し改めて漁業規則の遵守を求めるとともに、再発防止のため海上保安庁による付近海域における巡視艇による哨戒を強化していかなければならないことは当然の措置ですが、それにもまして、北方領土をめぐる日露協議の再構築を急がねばなりません。

あくまで私見ですが、我が国漁業関係者の切実な声を踏まえて、1956年の日ソ共同宣言のラインに沿って歯舞、色丹両島の返還を先行させる現実的な解決策も模索されるべきではないかと愚考します。あくまでも「4島返還」の旗は降ろさず、日ロ間に横たわる障害を除去するため、また、その前提たる領土問題をめぐる交渉の手詰まりを打開するために、今こそ思い切った戦略的なアプローチを構想する機会だと思います。

なぜなら、ロシアは、我が国外交の最大の課題である対中「遠交近攻」外交における「北の要」でもあるからです。
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