海洋法案の成立は絶望的に

前々回のエントリーで今国会成立に向けて期待を膨らませた「海洋権益を守る法律案」の審議入りそのものが困難な状況に陥ってしまいました。

我が党の海洋権益関連2法案は、すでに2月に衆議院に提出済み。ところが、「吊るされた」状態(委員会への付託がなされないことを意味する国会用語)のまま会期終盤を迎えました。「吊るし」を降ろすか否かを決めるのは与党の国対です。通常、降ろさない理由は多様です。たとえば、単にその法案が気に入らない、他に審議すべき(と与党が考える)優先法案がいくつもある、与党側の法案が与党審査を終えるのを待つ、などなど。

海洋法案の場合は、与党側の法案がなかなか出てこなかったことが最大の理由でした。自民党では、武見参議院議員を座長に、石破代議士や西村康稔代議士など海洋権益保護のための国内法整備に熱心な議員の努力により、媚中派議員の抵抗を乗り越えて、ようやく4月11日に与党審査を通過したのです。

その名も「海洋構築物等に係わる安全水域の設定等に関する法律案」。この法律は、海洋構築物の安全及び当該海洋構築物等の周辺の海域(半径500メートル)における船舶の航行の安全を確保するため、海洋法に関する国際連合条約に定めるところにより、海洋構築物等に係る安全水域の設定等について必要な措置を定めるもの。EEZ内における海洋権益(とくに非生物資源)を確保することを主眼とした広範な民主党案に比べて、安全水域に的を絞り込んだのが自民党案の特徴です。この法案が、先々週に衆議院へ提出され、与野党案が出揃ったのです。

ところが、民主案は経済産業委員会へ、与党案は国土交通委員会へ付託されることに。東シナ海など海洋のエネルギー資源について所管するのは経済産業省ですから民主案が経産委員会へ付託され、安全水域内における船舶の航行の安全を確保するのは第一義的には海上保安庁なので与党案は海保を所管する国土交通省に対応する国交委員会へ、それぞれ付託先が異なったことはやむをえません。

そこで、私たちからは、よりスムーズな審議入りを目指し、耐震強度偽装問題への対策のための建築基準法の改正案など審議日程が窮屈な国土交通委員会より、比較的日程に余裕のある経済産業委員会で審議しようと自民党側へ働きかけたのが、先々週末。しかし、一度は経済産業委員会へ付託と言うことで動き出したのですが(ですから、前々回のエントリーに「審議入りへ」と書きましたが)、今週になって、やっぱり国土交通委員会から動かせない、との不可解な回答が。14日に懸案の2法案の審議が終わるので、その直後に審議入りしたいと言ってきたのです。

ちょっと待って欲しい! 小泉首相の意向で会期延長がなくなった以上、会期末が18日なので、国会審議ができるのは16日いっぱい。15日に審議入りして、たとえ翌日までに修正協議を成立させて衆院で採決しても、参院に送付された瞬間にタイム・オーバーです。つまり、結局やる気ナシということなのか・・・?石破さんや西村さんはやる気満々なので、どうも与党国対によって阻まれている公算が高いのです。

与党側との折衝に当たった細野代議士も憤懣やるかたない様子。私も、先週「朝生」出演の際に、「参議院まで送ってくれたら必ず最短で成立させる」との確約を武見さんからもらっていたので、なんとも悔しい。これによって、海洋権益に対する我が国の大事なカードは、さらに数ヶ月、臨時国会の開幕を待たなければ成立を見ないこととなってしまったのです。その間、外務省は、中国側とどんな交渉をするのだろうか、と考えると焦燥感に駆られます。

世の中では、共謀罪や国民投票法案や教育基本法案に関心が集まっていますが、その陰でこの海洋権益を守る法案のような大事な法案が葬り去られる(といっても、もちろん継続審議ですが!)ことは、国家として、いや、海洋国家・日本として、なんとも情けないことです。小泉総理、せめて、あと一週間の会期延長を! 悔しさを胸に、夜空にライトアップされた議事堂の中央塔に向かって心の中で叫びました。

追記:いただいたコメントの中でご心配の向きがありましたので一言。たしかに、経済産業委員会には二階大臣が、国土交通委員会には公明党の北側大臣が座っておりますので、いずれにしても海洋権益法案の審議にとっては厳しい環境です。ただし、これは、議員立法の平行審議なので、大臣答弁は不要ですから、関係ないといえば関係ないですね。(2006-06-01 09:46)
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