ひとり語り 劇車銀河鐵道 いちかわあつき

 ひとり語りの口演や、絵本の読み語りなどの活動をしています。
 何処へでも出前口演致します。

中川李枝子著「ももいろのきりん」

2009-05-30 13:15:18 | Weblog
「ぐりとぐら」や「そらいろのたね」などたくさんの名作を生み出している童話作家 中川李枝子さんの「ももいろのきりん」をずいぶん久しぶりに読みました。

 この本の初版発行は、1965年7月1日となっています。私の生まれたのは1960年ですので、そう。ちょうど幼稚園の時に、まだまだ生まれたてのこの本を、読んでもらったと思うのです。いや、読んでもらったんじゃないかと・・・。

 実は最近読み直すまで全く忘れていたんです。
「エルマーの冒険」や「エルマーと16ぴきのりゅう」は、しっかり読んでもらっていた記憶があるんです。黄色と青のシマシマの竜をお絵かきした記憶もなんとなく残っています。
 
 しかし、「ももいろのきりん」はまったく忘れ去られていました。でも、読んでいきながら、少しずつ思い出していきました。

「ももいろのきりん」は、るるこちゃんがお母さんから大きなももいろの紙をもらうところからはじまります。るるこちゃんはその紙で、きりんを切り抜いて作ります。前足を長くしすぎて、後ろ足がたりなくなったので、前足を半分にして、後ろ足にします。そしてシッポは、るるこちゃんが頭に結んでいたももいろのりぼん。

 そうそう、そうだった。この話を読んでもらってから、幼稚園児だったわたしたちも紙を切り抜いて、きりんやどうぶつたちを作ったりしたよな、確か・・・。

 このあとももいろのきりんのキリカの背中に乗って、るるこちゃんはクレヨンの木のある山へと行き、きいろいさるやそらいろのうさぎ、ぶどういろのりすやクリームいろのきつね、チョコレートいろのひつじやあおいいろのうま、きいろいぶた、あかいたぬき、そしてあかいりぼんのようなへびに出会います。が、みんないろがはげていたりよごれたりしています。

 るるこちゃんとキリカが、山のてっぺんのクレヨンの木からクレヨンを取りに行こうとすると、みんなはくちぐちにとめようとします。
 だめだめ、クレヨンの木のところには、オレンジいろのいじわるなクマがいて、クレヨンをとらせてくれないというのです。

 それから、キリカがオレンジいろのクマをやっつけて、みんなを綺麗にクレヨンで塗りなおしてあげて・・・とまぁそんな話なのですが、どうしてこのお話が私の記憶から抜け落ちてしまったのか? 色々と考えてみました。

 私は幼い頃より絵を描くのが好きでした。しかしそれはもっぱらクレヨンや色鉛筆ではなく、鉛筆で、でした。もちろん、クレヨンも持っていたし、色鉛筆ももっていましたし、それでも描きはしました。でも鉛筆が一番好きでした。鉛筆で細かく丁寧に描くのが得意でした。が、色を塗るのは苦手でした。

 私は色弱の検査で、緑色や茶色などの中に赤系統の色が混ざると、赤系統が消えてしまう、色弱だといわれました。それと関係してか色コンプレックスが私の中に芽生え、赤系統に限らず色を覚えられない子供になりました。もちろん原色の赤や黄色、青などははっきりとわかりますが、中間色など今でもとんでもない色を言ったりすることがあります。

 友達や親にあれは何色? とか家具や建物、動物や鳥などを指差されて聞かれると冷汗が出て、わかっているものでも答えられないようなことがありました。

 おそらくこの「ももいろのきりん」でも同様のことがあって、色がわからなかった、答えられなかったということがあったのでしょう。
 私の中からるるこちゃんとキリカは消えました。

 40数年ぶりに私のなかにによみがえった「ももいろのきりん」というお話は、とても優しく、その頃の私を包んでくれたように思いました。

 そのほかにも私は左利きで、母に治すようにいわれたりしましたが、どうしても右利きにはなりませんでした。なぜ使いにくい利き腕を使ってはいけないのか、幼いながらに納得がいかなかったのだと思います。私は頑固な子供でもありました。

 人はいろんなコンプレックスを抱えているものです。他人から見ればなんでもないようなことが、大問題であったり、ずっと心の中の棘として残ってしまったりするものです。
 
 それが何十年前のことでも、もう遅いということはありません。その頃の自分に戻って、自分で自分の棘を抜いてみてください。方法は様々だと思いますが、まずは子供の頃の自分はどう思っていたかを思い出すこと・・・。

 あんがい親になって、自分の子供がそれを教えてくれたりすることもあります。子供は親の鏡です。
 まあ、素人療法ですが、私はこれらのことをセルフカウンセリングと、勝手に呼んでいます。

 また自分史みたいなものを書いて、むかしの自分を思いだし、その時々の自分を許してあげたり、また自分を傷付けたと思われる他者を許したり、その逆で、自分が傷付けたと思われる他者に許しを請う。そんなことをやってみてはどうでしょう。それは直接でなくてもかまいません。心の中でいいんです。
「ごめんなさい」って心から言うんです。なんだか気持ちが軽くなって、楽になりますよ。