ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

恨みの裏地

2017-04-03 04:21:27 | 短歌






空蝉の 身にまとひぬる いつはりの 帷子につく 恨みの裏地






*今日は短歌です。

「空蝉の」は「世」とか「身」とか「命」とかにかかる枕詞です。枕詞には美しい言葉が多いし、何かと便利ですからよく使います。「空蝉」は蝉の抜け殻のことだし、「月草」は露草のことだ。「かぎろひの」は「春」にかかる、「夏草の」は「深し」とか「かりそめ」にかかる。「たらちねの」とか「あしひきの」とかは有名だから知っていますね。

たくさん知っておくと便利ですよ。ここでも時々扱っていきましょう。

冒頭の枕詞は快いが、歌の意はちょっと厳しいですね。

帷子(かたびら)は、裏をつけないひとえの衣のことです。裏地は普通ありません。ということは要するにこういうことですね。

空蝉のように空っぽの身のくせに、嘘で立派な帷子を着ていると、いつの間にか誰かの恨みが裏についてきて、裏地のようになっているよ。

人間はよく嘘をついていますが、そういう人は実際いつもとても立派な服を着ている。上等な生地を使い、デザインも進んでいて、センス良く着こなしているが、どこか胡散臭い。コロンなどをつけていい臭いを振りまいていても、どこか嫌なにおいがするような気がする。あまり近寄りたくない。

実際、そういう人の陰に回れば、嘘をついているその人を立派な人間に見せるために、色んな人が苦労している。その苦労している人の恨みが、その人の陰についているのです。それが嫌な感じになって、嘘つきの姿に染みついているのですよ。

一体その立派な服を着るために、その人は何を人にさせたのでしょう。安い給料でお針子を働かせ、服を縫わせたに違いない。お針子など馬鹿だからそんなことしかできないのだと言って馬鹿にして、安い金で買いたたいたに違いない。昨日、あるクラブで働いた暴言を取り消すために、どれだけの人に口止め料を払いましたか。傷つけた人間を黙らすために、どれだけの封印をしましたか。どれだけの人間の心をないがしろにしましたか。

金と力を使って無理矢理だまらせた人間の恨みが、おまえの陰にとりついている。嫌な奴だと言っている誰かの感情が、おまえの全身に塗られている。だから馬鹿な人間にはいつも、帷子の裏のような見えない裏地が、どこかについているのだ。

それが、見たくないと思うほど汚いのです。

どれだけ表面をきれいにしても、感じる人間の心をすっかりだますことはできない。まだ感覚の発達していない人でも、なんとなくいやだと思って逃げていくのです。

恨みの裏地とは要するに、馬鹿の陰で働かされている、いい人間の恨みのことです。そんなものを、いつまでも封じ込めておくと、大変なことになりますよ。







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