身を歌ひ 鶴のねたみを 買ふ雀 夢詩香
*わたしは小さいころから、けっこう変わり者と言われていました。
女の子同士でつるみあうのが苦手で、ひとりで本ばかり読んでた。つきあいが悪いのがわざわいしてか、いじめみたいのに会うこともありました。
大人になっても、そんなことがあって。まだ子供が幼稚園だったころ、同じ幼稚園に通っていた子のお母さんに、少し目をつけられてしまったことがあるんです。
ちょっと意外だったのは、そのお母さんというのが、わたしから見ればとても恵まれた人だったということ。いわゆるセレブという感じで、持ってるバッグはプラダだったし、服もおしゃれで素敵。かなりの美人。なんでも、旦那さんのお父さんが、小さな会社の社長さんなんだそうで。
なんでそんな人が、きつい目でわたしを見るのかな。まあわたしは、あの人に自分から近寄って行かないし。ひとりで写真を撮ったり俳句を詠んだりするのが好きで、そんなマイペースな姿が、目障りだったのかもしれない。
ちょっと危なかったんだけど、いじめには発展しませんでした。というのも、それから間もなく、その人のお子さんが病気になってしまって、看病しなくてはならなくなったからです。
重い病気だったみたいで、一年ほど入院した後、お子さんは亡くなってしまいました。その頃のその人は、別人みたいに痩せていました。いろんなことがあったみたい。
人の幸不幸なんてわからないな。今ではあの人とは滅多に会うこともないんだけど。
テレビでもよくセレブの話題なんかが流れますけどね。あの人たちは、本当に幸せなんだろうかと思う。幸せだったら、なんでそれをわざわざ見せつける必要があるだろう。
わたしは貧乏だし、夫にも子供にも結構苦労してるけど、不幸ではないな。それなりに何とかなってるし、自分なりの俳句を詠めるのは楽しい。