
水面映ゆ 池に棲みゐる 蟇と月 夢詩香
*「蟇」は「ひき」で、ひきがえるのことです。
水面に月の光が映えている小さな池の中で、蛙と月が一緒に住んでいる。そんなのを詠んでみたくて作りました。「ひきとつき」なんてのが「き」が重なってて気持ちいいし。一文字違うだけで意味が全然違うのも楽しい。
月とすっぽんとか、雲泥の差とか、ことわざにありますね。まるでレベルが違いすぎるって意味でつかわれますけど。長く生きてると、差ってものは、人が思ってるほど苦しいことではない気がしてきます。
みんなちがってみんないいっていうのはみすずだけど、人それぞれ差があるのは当たり前で、人間が苦しいのは、その差ってものに、大きなものを感じすぎてるからじゃないかなって気がする。
確かに月は届かないけど、光にはいつだって触れる。雲と泥はあるところの高さが違うけど、雲はいつか降りて来て、泥を濡らしてくれる。
小鳥みたいに空が飛べないからって、人間はだめじゃない。時々小鳥が人間を見に来てくれるのは、小鳥にとっては人間のほうがおもしろいからなんだろう。
ちがうから、時々ちがいすぎるから、みんな知らない間に近寄ってきてくれる。
池の中で、月と蛙が一緒に住んでるみたいに、人間て、違いすぎるものと、いつもいっしょにいる気がする。