なにもせず ちとせくらしし おのが身の 闇を悔いずて 月を恨みき
*人間は平凡に暮らせることを幸せと言い、時に何も努力しない自分の逃げ道に使いますが、それはいいことではありません。平々凡々と生き、自分に無理をさせないで、いいことはほとんど何もしない人間は、暇にあかして人を馬鹿にすることばかりやるからです。
小人閑居して不善をなすというのは真実だ。結局何もしないということは、人の努力に頼るということなのです。政治の腐敗を嘆きながら自分は何もせず、結局はお上に頼る愚民というのはこれだ。
全部ひとのせいにして生きている。
平凡な人の心の中には、何もしなかった時間にやってきた、あらゆる愚かなことの闇がある。人の悪口ばかり言ってきた。悪口を言うくらいのことは罪ではないと思ってもらってはこまる。人に同調して、気に入らないやつの悪口をいうだけで、その人の風評を作り、その人を苦しめてしまう。その人が世のためにいい仕事をしている場合は、その人の活動を邪魔することによって、世間に害を与えてしまうのです。口で簡単に言うくらいのことで、非常にいやなことになる。何もしていないだけで、悪いことが起こる。
故に何もしない人というのは、どんどんぼんくらな顔になっていく。醜いというより馬鹿みたいな顔になっていくのです。それがつらいものだから、努力して美しくなった人に嫉妬する。
そしてあらゆる邪魔をするのです。
何もしないということほど、じつは深い闇はないのです。簡単でずるいことばかりして、大勢の闇に解けて、あらゆるいやなことをするからです。
これを無明の闇という。全然なにもしない人の心の闇なのです。
こういうものが、人間をずっと苦しめてきたのです。
人は努力しなくてはいけません。時には自分に無理をさせて、自分の殻を破るようなことをせねばならない。それでなければ、自分の中にある力を、あまりに愚かな方向に流し、ついには世界を破滅に導いてしまうことにもなる。
何もしないことが、最も愚かな罪なのです。