白猫の 香箱に棲む 鳥の音を やはらかに編み 寝床をつくる
*今日も短歌です。最近わたしの句がきついので、わたしよりは少しやさしいものが作った歌を、とりあげています。
かのじょは一時期、白い猫を飼っていました。シロと名付けて愛していた。だが、夫が猫嫌いなので、家に入れて飼うことができず、夫の目を盗んでは、裏口を訪ねてきた猫に、あまりものを与えて養っていた。
時々、猫が家に入ってきて、暖かい家の中に住みたそうな態度を見せるたびに、かのじょは無理にでもそれを追い出さねばならないことを、苦しんでいました。
愛するものに、つらい仕打ちをせねばならないことはつらい。そんな気持ちも、あの夫にはわからないのだ。
自分の妻に、猫を飼うことも許してやれない。そんな男が偉そうにしているのは、猿にも劣る。
馬鹿な男だ。
おっと、また強い感じになりましたね。少しは自分を抑えようとしてはいるのだが、どうしても出てしまう。
猫が前足を自分の体の下に入れて、行儀よく座っている姿を、「香箱を組む」ということを、知っている人はたくさんいます。猫ブームですから、そういう知識は知れ渡っている。香箱は香合ともいい、香を入れる容器のことです。美しい表現ですね。
そのかわいらしい形の中にも心がある。その心が、家の中で暖かく住みたいと言っている。その心を感じて、あの人がやわらかな寝床を作っている。
小さな箱の中に、古い座布団やタオルを敷くだけでいい。それだけで猫は喜んでくれる。
だが、そんなことさえ許してもらえなかった。無念というにはあまりにもきれいな涙だが、捨ておいては悲しすぎる。
そういう気持ちが、この歌を詠ませたのです。