呼ぶ声を 恋ひて香河を 遡り 天飛ぶ魚は 受胎を目指す
*これは、かのじょの処女長編小説「フィングリシア物語」の世界を詠んだ歌です。不思議な感じがしますね。結構重厚なファンタジー小説です。重いテーマが何重にも敷かれ、複雑な伏線を繰りながら見事に大きな愛が物語をつらぬいている。
「香河」は「こうが」と読んでください。物語の中に出てくる大河の名前です。「天飛ぶ魚」も物語に出てくる空を飛ぶ巨魚タリルのことです。不思議な設定がある。それには幼少年期の暗黒期を乗り越えてきた魂が見た境地というものが、反映されている。
あまり読んでくれた人は多くないようですが、これから読んでくれる人は、このフィングリシアという世界の地図を描いてごらんなさい。おもしろい図が見えるはずです。作者が物語の中に隠し絵のように秘めた構図が出て来ます。そうすれば、タリルという存在が何を隠喩しているかもわかります。
答えを言うのは簡単ですが、それはもっと後のことにしておきましょう。この存在が生きていられる間に、あなたがたに謎の答えを教えることができたらいいのですが。
それはさておき、ここで私撰歌集というものについて書きましょう。私撰歌集とは何か。要するに、自分の好みで短歌を集めて本を作ることです。勅撰というのは、天皇や上皇の命によって歌や詩を集めることですね。短歌というものは小さなものですから、切手やコインのように収集できます。自分の好きな歌や、優れて学びたい歌などを集めて、きれいなノートになど集めてみなさい。そうすれば、なかなかに素敵な本ができるでしょう。
その人その人の持っている感性によって、選ぶ歌が違う。お互いのコレクションを見せ合うなどもおもしろいことですよ。いろいろと歌集を読んで探してみましょう。図書館や本屋さんにも歌集はありますが、ネットにもいろいろな歌集があります。ウィキクォートや青空文庫など活用しなさい。友達の歌などで気に入ったのがあれば、本人に許しを得て、コレクションに加えさせてもらいましょう。
もちろん、作者の名を明記するのは忘れずに。作者の名前も作品のうちですから。
古い歌にも名作はたくさんありますが、比較的新しい作家にもよい歌詠みはいます。俵万智などはわたしは好きではないが、あなたがたには響くものがあるかもしれない。石川啄木はよいですよ。わたしのおすすめです。
そのようにして、短歌に関する自分の教養を厚くしていくことができます。歌を詠みたい人は、ぜひともやってごらんなさい。勉強ができます。
その私撰歌集にも、美しい名前をつけましょう。自分の好みやセンスをたっぷり染み込ませて、いい名前を付けてみましょう。
宝物のような一冊ができるでしょう。