(本頁は「焼石岳の花図鑑(4) 7月高所編」の続きである。)
八月になると、焼石は再び花が多くなる。
特に多いと感じるは、キク科のトウゲブキ。
中沼コースを歩くと、中沼の畔から銀明水まで延々と、更に姥石平から山頂まで、この花が咲いている。
中沼のトウゲブキ群生。2017/08/06
山頂で見たトウゲブキ。2017/08/06
ミズギク 2017/08/06
ミズギクは名前のごとく、水湿地に多い。
ドクゼリは高山植物ではないが、中沼から銀明水にかけての湿地や水中に多い。
ドクゼリ 2017/08/06
オオバセンキュウ 2021/08/05
大型のシシウドの仲間はオオバセンキュウだった。
湿地では、これらの花に紫のコバギボウシが混じるが、この花は高所にも多いので後で紹介する。
中沼の畔で。
ソバナ 2022/08/05
マルバキンレイカ 2018/07/27
トリアシショウマ 2018/07/27
近くでよく似たヤマブキショウマも見かけた。
ヤマブキショウマは銀明水の上部まで進出している。
ヤマブキショウマ 2021/08/05
森の中で。
ジャコウソウ 2022/08/29
オオヤマサギソウ 2021/08/05
ツルアリドオシ 2017/08/06
森の中では、他にイブキゼリモドキやコイチヨウランなどを見かけた。
イブキゼリモドキ 2021/08/05
銀明水より上の灌木帯で見た花たち。
ハナニガナは黄と白花が混生する。
ハナニガナ 2017/08/06
アラシグサ 2017/08/06
アオノツガザクラ 2022/08/05
フキユキノシタ 2017/08/27
以上。
「(6) 8月高所編」へ続く。
(本頁は「焼石岳の花図鑑(3) 7月低所編」の続きである。)
七月以降、中沼コースを歩くと、
中沼の畔から姥石平の入り口あたりまで、あちこちでアヤメの花を見かける。
北方系のアヤメ、ヒオウギアヤメだ。
積雪量の多い銀明水付近では開花が遅く、八月に咲くものもある。
この仲間は初夏、梅雨時の花というイメージがあるせいか、
真夏の
しかも、高山のアヤメには少々面喰ってしまう。
姥石平下のヒオウギアヤメ 2017/07/14
ヒオウギアヤメ 2017/08/06
オオバミゾホオズキ 2017/07/14
銀明水やその上の湿った斜面草地には、
夏場、ミヤマキンポウゲやシナノキンバイ、カラマツソウ、モミジカラマツ、リュウキンカ・・・
とキンポウゲ科が多い。
それにヒオウギアヤメやコバギボウシなど紫パーツが微妙に絡む。
このお花畑、残雪の量により、開花期が大きく変わる。
いつも肩透かしを食らう場所だ。
ミヤマキンポウゲ 2017/07/14
シナノキンバイ 2021/08/05
カラマツソウとシナノキンバイ 2017/07/14
カラマツソウ 2017/07/14
モミジカラマツ 2017/07/08
ミヤマカラマツ 2017/07/08
ミヤマカラマツは東成瀬コースや銀明水以下の樹林帯に多い傾向が有った。
ヒナザクラは銀明水より上の雪渓際などでよく咲いている。
開花は雪解けに左右され、早いものは六月、場所によっては八月に咲き出すものもある。
ヒナザクラ 2017/07/14
ウサギギク 2017/07/14
チングルマとイワカガミ。2017/07/14
チングルマの実 2017/07/08
アカモノ 2017/07/14
七月の焼石は花が少ないと先に述べたが、
その最たるものが姥石平だ。
この時期は緑一色なので、六月中旬までのあの花筵は夢だったのかといつも思う。
がよく見ると地味な花がけっこう咲いている。
七月の姥石平。バックは横岳。2017/07/14
ムカゴトラノオは東北では極めて少ないが、焼石には多く、他は和賀岳山頂部くらいだろうか。
ムカゴトラノオの群生。2017/07/14
ムカゴトラノオ 2017/07/14
ネバリノギラン 2017/07/14
キバナノコマノツメは場所によっては六月から咲いている。
キバナノコマノツメ 2017/07/08
ウスユキソウ 2017/07/14
オノエラン 2017/07/14
他にはギョウジャニンニクが多いと聞くが、この花はいつも撮り逃がしてしまう。
マルバシモツケ 2017/07/08
ウラジロヨウラク 2017/07/08
他の高山でよく見かけるニッコウキスゲやヨツバシオガマを、焼石では何故か見かけない。
七月の焼石が寂しく感じられるのは、案外このあたりが理由なのだろうか。
以上。
「(5) 8月低所編」へ続く。
(本頁は「焼石岳の花図鑑(2) 6月高所編」の続きである。)
東北の他の高山、例えば早池峰や秋田駒、鳥海山では、
七月になると、花がワッと多くなるものだが、
焼石ではどうしたのか、花が少なくなったように感じる。
種類は多くなっているのに何故だろう。
新たに咲く花が偶々地味だったり、白花が多いせいだろうか。
樹林帯でまず出会った花はギンリョウソウだった。
ギンリョウソウ 2017/07/08
地味だが、ランの仲間が多い。
ジガバチソウ 2017/07/08
ノビネチドリ 2017/07/08
コケイラン 2017/07/08
ショウキラン 2017/08/06
ショウキランは例年ならば、七月中に咲くのにこの年は何故か八月にも咲き残っていた。
オオバタケシマラン 2017/07/08
マイヅルソウ 2017/07/08
ツクバネソウ 2017/07/08
クルマバツクバネソウ 2017/07/08
ツマトリソウ 2017/07/08
キヌガサソウは焼石岳のあちこちに散在して生育している。
焼石沼付近のキヌガサソウ小群生。 2018/06/23
キヌガサソウ、南本内岳の個体 2018/06/23
銀明水付近の個体 2017/07/08
ヤグルマソウ 2017/07/08
ツバメオモト 2018/06/23
ワタスゲ 2017/07/14
ヒロハユキザサ(ミドリユキザサ) 2017/07/08
ミツガシワ 2017/07/14
ミツガシワは上沼に多い。
コバイケイソウは上沼の湿地では、六月中に咲き出しているが、
南本内岳の山頂部では七月が盛りだった。
コバイケイソウ 2017/07/08
以上。
「(4) 7月高所編」へ続く。
(本頁は「焼石岳の花図鑑(1) 6月低所編」の続きである。)
標高約1400mの姥石平に到着すると、
まだ六月だと言うのに、雪は無く、ご覧のような花筵になっている。
2017/06/17
2017/06/17
姥石平から東焼石岳にかけての風衝地は、この時期、色とりどりの花に覆われる。
おそらく東北では一番、全国的に見ても屈指のお花畑ではないかと思われる。
ただし花の期間は短く、六月の上旬に始まったかと思うと、
下旬には早々に店じまいしてしまう(期間は年によって変動あり)。
その構成メンバーを紹介する。
ハクサンイチゲ 2017/06/17
ハクサンイチゲ 2017/06/17
一輪タイプ 2019/06/04
一輪タイプの緑花 2019/06/04
ホソバイワベンケイ 2018/06/23
ミヤマシオガマとホソバイワベンケイ 2017/06/17
ミヤマシオガマとミヤマキンバイ 2017/06/17
ミヤマシオガマ(白花品種) 2017/06/17
ミヤマキンバイ 2017/06/17
ミヤマシオガマは東北では、早池峰山、羽後朝日岳、焼石岳、船形山、月山だけに産する。
なおよく似たヨツバシオガマは焼石では見当たらない。
姥石平のお花畑構成種で、開花が一番早いのはユキワリコザクラだろう。
東北では少ない花で、焼石の他には岩手山と蔵王連峰の一部くらいか。
ユキワリコザクラとミヤマキンバイ 2017/06/17
ユキワリコザクラとミヤマシオガマ 2019/06/04
イワカガミ 2017/06/17
ヒナザクラ 2019/06/04
ムシトリスミレは他のメンバーよりやや遅れて咲き出す。
ムシトリスミレ 2018/06/23
キバナノコマノツメ 2017/06/17
この時期の焼石岳山頂部はまだ花が少ない。
ミヤマダイコンソウは東北では少ない。他には、秋田駒ヶ岳、三ツ石山、朝日連峰など。
ミヤマダイコンソウ 2017/06/17
イワウメ 2017/06/17
クロミノウグイスカグラ(ケヨノミ) 2017/06/17
コメバツガザクラ 2017/06/17
ミネザクラ 2019/06/04
ミツバオウレン 2017/06/17
ミヤマオダマキ 2018/06/23
数は少ないが、ミヤマオダマキも咲いていた。
以上。
「(3) 7月低所編」へ続く。
【はじめに】
焼石岳は奥羽山脈の中ほど、岩手県の南西部にある地味なお山だ。
高さは1500mを少し超える程度と低いが、
日本アルプスならば2500m以上の高所でないと見られないような高嶺の花が豊富に見られる。
早池峰山や鳥海山のように固有種が無いのは残念だが、
種類の豊富さ、お花畑の規模では東北でもトップクラスではないか
(少なくとも奥羽山系では断トツ)と思っている。
そのフロラ(植物の種類)は近隣の栗駒山や秋田駒、岩手山など新しい火山とは異なり、
少し離れた月山、朝日連峰など日本海側の高山や蔵王の不忘山、
遠く離れた北アルプス白馬岳と共通種が多いように感じる。
何故そうなのか。理由は定かではないが、勝手な推測をいくつか述べてみる。
姥石平越しに見た焼石岳山頂。2019/06/04
山頂の東側、姥石平には広大な風衝草原が発達している。
ここは冬の季節風が極めて強そうだ。
風で雪が飛ばされ、ハイマツや低木が生えにくい。そのため草原になっていると推測。
一方、その下の山腹、東側斜面には大量の雪が溜まり、
日本海側第一線の鳥海山、月山の東斜面に迫るくらいの多雪地帯になっている。
そのせいか亜高山帯にアオモリトドマツなど針葉樹林を欠如している。
また焼石岳は火山だが、山体が古く、至る所に大小の凸凹地形がある。
凹地の多くは、雪解け水を貯め込んで、池や湿原になっている。
このような多雪気候と複雑な地形が、
昔の寒冷な時代に広く分布していた北方系植物のシェルター(避難場所)となり、
現在でも数多くの高山植物を育んでいるのではないかと・・・。
本図鑑は、焼石岳の最も一般的な登山コースである中沼コースで見られる花を主体にしている。
それ以外には秋田側から入る東成瀬コース、北側の湯田コースも少しだが歩いてみたら、
中沼コースには無い花がけっこう咲いていた。
同じ山なのにフロラが違うので、この二ルートについては、後の方で別頁にまとめてみた。
掲載順はおおむね、開花が早いものから、山の低い所から見られる順に並べているが、
開花期間の長い花や特徴的な一部の花は複数回登場させている。
植物名の同定にあたっては、手持ちの複数の高山植物関係書籍を参考にさせて頂いたが、
自信の無い種類については、「~だろうか。」と表現している。
正確な名前をご存知の方、また何か間違いにお気づきの方はご指摘頂きたい。
【六月(低所)の花】
焼石の花盛りは意外と早い。その中心は山頂のすぐ東に広がる姥石平。
中腹はまだ雪に覆われていると言うのに、そこだけは雪消えが速く、
六月上旬には冒頭写真のようなお花畑が出来上がる。
が、中腹に咲く花から始めて行く。
2019/06/04 銀明水のリュウキンカ群生。
ミズバショウ 2017/06/17
リュウキンカ 2018/06/23
この山にはミズパショウとリュウキンカがとにかく多い。
中沼のほとりなど低所では六月上旬に咲くが、
銀明水の上部や南本内岳の一部など、雪消えの遅い場所では、
八月お盆頃に咲いていることもあり、驚いてしまう。
中沼から銀明水にかけての登山道沿いや焼石沼付近には
リュウキンカの黄金の花道や絨毯が出来てみごとだ。
ミズドクサは中沼に多い。バックの黄花はリュウキンカ。
ミズドクサ 2017/06/17
ツルキツネノボタン 2017/06/17
ツルキツネノボタンは北海道から長野県にかけて分布し、比較的まれな植物とされているが、
八幡平やここ焼石ではごく普通に見かける。
ブナ樹林帯の花たち
タムシバ 2021/06/10
ムラサキヤシオ 2019/06/04
ミヤマスミレ 2021/06/10
ミヤマカタバミ 2018/06/23
サンカヨウ 2017/07/08
サンカヨウの白い花弁(厳密には内萼片)は雨や夜露にあたると透明になることがある。
サンカヨウの花のアップ 2018/06/23
シラネアオイ 2018/06/23
オオバキスミレとノウゴウイチゴ。2018/06/23 焼石沼付近にて。
ノウゴウイチゴ 2018/06/23 花弁は7,8枚。
アキタブキ 2018/06/23
灌木帯の花たち
ベニバナイチゴ 2021/06/10
サラサドウダン 2018/06/23
サラサドウダン 2018/06/23
以上。
「(2) 6月高所編」へ続く。