高齢者による交通事故が連日のようにマスコミに登場する。抜本的な解決策は高齢者が自動車の運転をしなくて済むような社会の実現である。このためには完全自動運転化か自動車が無くても生活に困らない環境の構築であるが、現状では当面無理である。
高齢者の交通事故は様々な原因によるが、認知症によるものが一大要因である。認知症患者による事故を予防するために、現在年齢が75歳以上で免許更新を希望する者には認知機能検査と高齢者講習の受講を義務付けている。
さて、4月19日午後、東京の池袋で高齢者87歳が運転する乗用車が暴走して2人が死亡する悲惨な事故が発生した。この高齢者は、ブレーキをかけたが利かず、アクにセルが戻らなかった、と主張しているが、認知症の疑いがあるとのことだ。
しかし、一昨年運転免許を更新し、その時は問題無しとされていたようだ。もし認知症が原因であるならば、現行の検査法でも事故が予防できないことを示している。
認知症と言うと、アルツハイマー病を思い浮かべるが、実際には様々な認知症があり、100種類を越えているそうだ。現在、アルツハイマー病が全体の約5割、脳梗塞などが原因の血管性認知症が約2割、残り3割をピック病やレビー小体型認知症が占めているとのことだ。
認知症で無く、不整脈や糖尿病などで意識消失を起こす可能性のある病気でも運転免許の返上は任意になっている中、認知症と診断されたからといって、すべての患者から一律に免許を取り上げるのは、不公平と言わざるを得ない。
100種類以上もある認知症をすべて同一に扱うのは無理がある。アルツハイマー病の場合は、記憶力が衰えてくるので、方向音痴になったり、距離感が分からずハンドル操作を誤ったりする可能性が大であるそうで、現在の認知機能検査でもある程度予防できるかもしれない。
また認知症の一つであるピック病とは、脳のある部分が特異的に委縮する病気の一種で、性格の変化や理解不能な行動を特徴とする病気だそうで、若年性認知症もそのひとつのようだ。感情や意欲を抑制できず、物事を段取りよく進めることができなくなり、高速道路の逆走やあおり運転をすることが多くなるとのことだ。
この病の場合、記憶や認知機能は阻害されないので、認知機能検査で好成績を収めることができ、現在の方法は全く役に立たない。このように認知症の症状はそれぞれ異なるので、現行の認知機能検査は万全では無く、気休めとの感もしてくる。
車は便利だ。車が無いと活動範囲は大幅に制限される。特に交通の便が余り良くない地方や、足腰の弱まった高齢者には必須だ。
また、認知症の予防には車の運転が非常に有効と主張する人もいる。車の運転には体のみならず頭も使うので、この説には説得力があるが、一旦認知症になると車は凶器と化す。
アクセルとブレーキを踏み間違えないようにする装置もいくつか市販されているようだが、10万円以上と高い。せめて行政はこの装置設置への補助金を出して欲しいと思っていたら、6月11日小池都知事が9割の補助金を出すと言明した。
この装置の効果や補助金支給の条件は定かでないが、1万円以下の負担であれば、少しでも早く設置したい。
また、先日6月下旬に閣議決定する成長戦略には、自動ブレーキなどの安全機能がついた車のみ運転することができる高齢ドライバー専用の限定免許制度を新たにつくることを盛り込んだそうだが、参院選挙のキャッチフレーズ造りのためではないかと、その実現性を懸念する。2019.06.19(犬賀 大好-556)
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