日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

日本は財政バランスを考える必要がないのか

2018年04月18日 09時26分52秒 | 日々雑感
 2018年度予算は一般会計総額が97.7兆円と過去最大である。主たる歳入は、税収が約60兆円、新規発行国債が約34兆円だ。一方歳出は、社会保障費が約33兆円で断トツであるが、その次はこれまでに発行した国債の元利払い分、約23兆円だ。社会保障費の増大はやむを得ないとしても、利払い分は過去のつけである。このつけのため、何と新規国債の約7割が費やされるが、更につけは増える一方だ。既に日本の経済は自転車操業に陥っている。

 国家の財政の健全化のためには、基礎的財政収支(プライマリーバランス(PB))をゼロにする必要があると言われている。PBとは、一般会計において、歳入総額から国債等の発行による借金を差し引いた金額と、歳出総額から国債の利払い分等を差し引いた金額を比較したものだそうだ。

 そこで、本年度予算で見ると、前者が約64兆円、後者が約82兆円であり、PBは真っ赤な赤字である。国債の発行に頼らなければ64兆円しか収入が無く、税収だけでは歳出総額約98兆円は到底賄えない異常状態なのだ。しかも、この98兆円の内28兆円は過去の借金の利子分だ。借金が無ければ82兆円で済むが、それでも税収だけでは賄えないのだ。

 PBがゼロの状態、すなわち国債に頼らない状態が財政の健全化であるとするのはよく理解できる。しかし、前述のPBにおいて、歳出総額から国債利払い費が除かれているのが腑に落ちない。過去の負の遺産がある限り、無視することは出来ない筈だ。本当の意味のバランスがとれた予算編成とは、過去の負の遺産も考慮しなくてはならないのではないか。PBの定義を変える必要がある。
 
 PBの赤字状態は前回の東京五輪後に始まり、これまでの借金分を合わせ、国と地方の長期の借金残高は18年末で1108兆円の見通しだそうだ。また、仮に2019年度の長期金利が想定を1%上回れば、政府が支払う国債の元利払い費は1兆円増えるそうだ。現在、異次元金融緩和の一環として超低金利政策が続けられているが、利払い費増大も金融緩和を止められない理由の一つであろう。

 さて、2010年に政府が掲げた目標は2020年にPBの黒字化であった。しかし、2017年には黒字化目標を2025年に先送りし、さらに今回2027年に再先送りとした。

 政府は、来年10月の消費税率10%への引き上げにより増収を目指すが、片や人気取りの教育無償化などで歳出が増え、PBバランスは二の次だ。更に安倍政権の人気回復の為、消費増税の再度の延期の声もささやかれる。

 自民党の財政再建に関する特命委員会の岸田文雄政調会長は今年2月、財政健全化に向けた党内議論をスタートさせた。ポスト安倍と目される岸田氏は9月の党総裁選をにらみ、経済政策で独自色を出す必要に迫られている。

 岸田委員長は、2022年には団塊の世代が75歳の節目を迎え始め、財政を圧迫する社会保障費の抑制などを議論する考えを示した。財政健全化は必要で真っ当な政策であるが、概して世間は増税には反対、社会保障費の抑圧は拒否反応となる。世間に迎合的な安倍氏に代わり、岸田氏に国民に負担を強いる政策立案が出来るであろうか。

 政府の財政再建への基本的な考え方は経済成長による税収の増大である。経済成長であれば国民に負担を強いることは無く、誰からも反対されない。2015年時点の政府の財政再建計画では、18年度の名目経済成長率を3.9%と見込み、税収はバブル期を超える約65兆円と見込んでいた。ところが直近の政府見通しでは名目成長率は2.5%程度にとどまるようだ。

 一般会計税収は2016年度は55.9兆円、2017年度は57.7兆円だそうで、2018年度の税収65兆円は捕らぬ狸の皮算用となろう。現在日本経済はアベノミクス景気で絶好調との声も聴かれるが、それでもこの程度なのだ。税収の増加による、PBの黒字化は夢物語だと認識すべきだ。

 そうだとすれば、歳出の削減でしかPBの黒字化は期待できない。国民に痛みを伴う改革を期待するのであれば、まず自らの痛みを実行する必要がある。国会議員の経費削減がかって騒がれたことがあったが、やったとしても大した額にならない等の理屈で有耶無耶になった。額の問題では無く、気持ちの問題と心すべきである。2018.04.18(犬賀 大好-434)

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