原発の運転期間は、法令によって1回に限り20年を超えない範囲で延長が認められているが原則40年が上限と決められており、廃炉そのものは全ての原発がいずれ迎える共通の課題である。原発事故が原因で廃炉となった福島第1原発における廃炉作業の困難さが時折ニュースで報道される。しかし通常の寿命を迎えて廃炉となった原発の報道は少ないが、その廃炉作業も簡単ではなさそうだ。
2021年2月時点で、全国の電力会社は建設中も含めて合計60基の原子炉を抱えており、このうち、廃炉が決まっているのは24基もあり、福島第一原発の6基や中部電力浜岡原発1、2号機等24基だ。日本でこれまでに廃炉が無事終了したのは国内に1基だけある。現在の日本原子力研究開発機構(JAEA)の動力試験炉である。1976年に運転を終え20年の廃炉作業後1996年に更地になり、現在に至っている。この原子炉は試験炉であり、定格出力は1.25万kWで、これは現在の商用原発(1基あたり100万kW程度)と比べるとかなり小規模であるが、それでも20年要した。
この他、米スリーマイル島の原発があるが、2号機が1979年に炉心溶融事故を起こした後、溶けた燃料はほとんど取り出されているようだが、建屋や冷却塔は残っており、2041年に解体を始め、2053年に終えるとしている。採算の悪化で閉鎖を余儀なくされた1号機は2019年営業運転を終了し、今後60年をかけて廃炉にしていく予定のようだ。つまり、世界的に見ても商用の原子炉で廃炉作業が完全に無事終了した前例はなく、廃炉作業の過程で予想外の問題が発生することも覚悟しておかなくてならない。
さて、浜岡原発1号機(54万Kw)、2号機(84万Kw)の廃止措置計画は、2030年代後半までに約30年間にわたり実施する予定とのことだ。同計画では期間全体を第1段階「解体工事準備期間」から第4段階「建屋等解体撤去期間」までの4段階に区分し段階的に進め、2023~2029年度は原子炉領域解体撤去期間となっており、現在特にニュースになっていないところを見ると、順調に進んでいるものと思われる。
福島第1原発の1~4号機は東日本大震災で原子炉が破損し核燃料が流れ出しているためその取り出し作業が難儀を極めているニュースが時々報道される。当初廃炉作業を始めてからすべての作業を終えるまでに最長で40年かかるとしていだが、現時点では何時終了するか見通せない状態だ。
5号機(78.4万kW),6号機(110.0万kW)は、事故当時、定期検査のため運転を停止していたため、津波が襲来した後も大きな損傷には至なかった。しかし、2014年に廃炉が決定し、今後は、研究開発等の実証試験で活用することを検討しているそうで、当面廃炉作業は無いようだが、問題先送りの一つだろう。
日本は将来原発の廃炉作業に膨大な費用とマンパワーを抱えており、また廃炉作業で生ずる核廃棄物の処分場が決まっていないことも含め、先のことを考えずに良いとこ取りを先にしてしまった反省を大いにするべきであろう。2024.03.06(犬賀 大好ー989)
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