昨年2021年は世界の多くの国・地域においてインフレが加速し、歴史的な高水準となっているようだが、日本は相変わらずデフレ状態のようであり、この違いの原因は何であろうか。
米国の12月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比+7.0%に達し、39年ぶりの高水準となったとのことで、先進国におけるインフレ加速は一般的な現象で、各国の中央銀行が金融引き締め方向に舵を切っている。
一方、日本銀行は今年1月18日の金融政策決定会合で、従来通りの大規模な金融緩和策の維持を決めた。その理由はCPIが目標の2%に達していないとのことだが、このところ資源高や供給制約を背景に食品など生活必需品の値上げが相次ぐ中、違和感を感ずる。黒田総裁は記者会見で、”賃金上昇を伴わない資源高主因の物価上昇は一時的にとどまる”と述べ、最近の値上げラッシュは一時的だとして金融緩和政策を続行する決意を示したのだ。
黒田総裁の判断が正しければ結構であるが、2013年の総裁就任挨拶で、物価上昇率2%は2年で達成すると大見えを切ったが未だ実現しておらず、しかも責任も取らず反省の弁も無く、今なお総裁の椅子に居座っており、どうも信用出来ない。
日本の最近の消費者物価はその6割に近い品目が上昇しているとのことだ。物価上昇率は携帯値下げの影響が一巡するこの春に2%に迫る見通しと識者は語る。現状では米欧に比べ需要の回復や賃上げの動きは鈍いため、コスト増が先行する成長なきインフレが家計の重荷になるとの警鐘をならしている。
総務省が1月21日発表した2021年12月のCPIは変動の大きい生鮮食品を除き前年同月比で0.5%上昇し、4カ月連続でプラスとなった。電気代などエネルギー関連の品目で値上げが続き、全体を押し上げた。12月分は携帯電話料金の値下げが指数を1.48ポイント押し下げていて、これを除けば物価上昇率は2%前後になるとの話だ。
菅前首相の功績の一つである携帯電話料金の値下げが無ければ、CPIは2%を達成していただろうが、この場合でも、黒田総裁は金融緩和を止めていたであろうか。労働者の報酬が上がらず、物価が上がる現象を悪いインフレと称し、報酬と物価が上がる現象を良いインフレと称するようだ。黒田総裁は、最近悪いインフレが進行中と強調しているようだが、異次元金融緩和を続行しても解決しないような気がする。
日本の労働者の賃金はここ10年上がっておらず、2021年9月の国税庁の資料によれば、現在の日本人の平均年収は約430万円と低く、この原因は労働生産性が悪いとの説明がよくなされる。しかし、企業は利益を労働者にではなく企業の内部留保に回しているためではないだろうか。リーマンショック以来企業は存続のための予備資金をため込み、労働者側も自社の存続のために給与の増加を我慢しているのだ。
この状態が改善されなければ、いくら異次元金融緩和を続けてもデフレ脱却とはならないだろう。2022.01.29(犬賀 大好ー785)
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