自民、公明両党は12月15日、2023年度から27年度までの5年間で総額約43兆円となる防衛費の大幅増を、法人税、たばこ税、復興特別所得税の3つの税目を組み合わせた増税で実現する方針で一致した。但し、いつから実施するかについては、2024年のいつかとしつつ今後の課題とした。これで財源に対する議論は一段落し、これから防衛力強化の中身に対する議論が活発となっていくと思われる。
これに先立ち12月12日、「国家安全保障戦略」を含む、安全保障関連3文書の改定を巡り、自民・公明両党が合意に達した。国家安全保障戦略は”日本は戦後最も厳しい安全保障環境のもとに置かれている”と認識して、これまでの専守防衛から敵基地攻撃能力の保有と大きく方向転換した。
最も厳しい安全保障環境とはロシアのウクライナ侵攻が大きく影響している。ロシアはウクライナがロシアを離れ西側諸国に接近しようとしているのを拒もうとしてウクライナに軍事介入した。この時代こんな前近代的なことをやるとは全くの想定外であったが、中国の習近平総書記や北朝鮮の金正恩総書記はプーチン大統領と同じことをやるに違いないと脅威を煽っているようにも思える。
これまで日本は日米同盟の名の下、専守防衛に専念してきた。しかし、トランプ前大統領が米国第1を言い出して以来バイデン現大統領も日米同盟における日本も相応な役割を果たすよう要求するようになった。例えば、最近中国が台湾は自国領土だとして武力統一を匂わせており、台湾を巡り米国と中国の衝突が現実味を帯びてきた。万が一軍事衝突が起こった場合、日本はこれまで通り専守防衛の立場で蚊帳の外で様子見と言う訳にはいかず、何かしらの軍事介入が要求されるに違いない。米国からの圧力が日本の防衛費GDP比2%化に大きく影響していると思われる。
12月17日、敵基地攻撃能力を反撃能力と言い換えて、軍事能力の大転換を安保関連3文書に明記することを閣議決定した。語感からすれば反撃能力は敵基地攻撃能力より弱弱しい感であるが実質的には何ら変わりない。兎も角軍事力の抜本的な強化を掲げており、相手のミサイル発射拠点を叩く能力やサイバー攻撃を未然に防ぐための能動的サイバー防御の導入などが盛り込まれている。
日本が敵のミサイル基地やその発射を指令する中枢機能をミサイル攻撃する能力を保有することは、明白な憲法九条違反の可能性が大きい。これから国会で憲法違反とならないように反撃能力に制限を設けていくのであろうが、反撃能力に抑止力を持たせるためには最終的には核武装しかない。これまで日本は一貫して専守防衛の範囲内で抑制的に安全保障政策を組み立てることで、戦争を回避する平和国家として存在してきた。今、世界の国々が一斉に軍事大国の方向に踏み出そうとしてしている中、日本独自のやり方が出来ないものであろうか。2022.12.18(犬賀 大好ー872)
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