昨日18日に初めての日米経済対話が開かれた。この中で米側は日本と二国間の通商交渉を開始する可能性も示唆した。トランプ大統領の関心が強い自動車や農業分野の市場開放が背景にある。対外的な通商交渉を担う米通商代表部(USTR)代表に指名されたロバート・ライトハイザー氏も3月14日、日本の農業分野の市場開放を第一の標的として最重視する方針を示している。日本は現在二国間交渉には応じられないとの立場であるが、日米の貿易不均衡問題が経済対話の主要な論点になることは確実である。
環太平洋経済連携協定(TPP)は発効寸前まで進んだが、トランプ米新大統領は1月23日、TPPから離脱するとした大統領令に署名した。これにより世界経済の4割を占める巨大貿易圏構想は旗振り役の米国の離脱で発効が絶望的となった。
米国の離脱通知後、初めてとなったチリでのTPP閣僚会合は、今後の方向性を示せず3月15日、閉幕した。オーストラリアとニュージーランドは米国抜きのTPP11を進めたいようであるが、日本はこれを認めると、米国との間で二国間協定をやらなくてはならないジレンマに陥る。また、マレーシャとベトナムは、米国抜きでは意味が無いと主張し、チリやペルーは中国も参加すべきだと主張しているようだ。
各国の思惑はばらばらであり、5月にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)の貿易相会合が予定されているが、TPPの枠組みは解体含みとなりそうだ。日本は表向き米国を加えた全12ヵ国での発効を目指す姿勢を崩していない。粘り強く米国を説得して引き戻そうとする日本の戦術は、見直しを迫られること必須である。
他方、日本や中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など計16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の事務レベル交渉会合が2月27日、神戸市で開かれた。RCEPがアジア太平洋地域の経済統合の軸になることも期待され、日本は中国ペースでの進展を警戒しながら交渉の早期妥結を目指すそうだ。
また米通商代表部(USTR)は3月31日、貿易障壁に関する年次報告書を公表し、その中で日本の自動車や農産品などの市場開放を求めた。農業分野では相当な市場障壁が存在するとしたうえで、牛・豚肉、乳製品などで高い関税が残っていると指摘した。自動車については、日本特有の検査手順や販売網の拡大に障害があるなどとして、米国製の自動車の販売が少ないと指摘している。
TPP交渉では、日本政府は農家の反対を押し切って農産物の大幅な関税引き下げに合意したが、2国間の本格的な交渉になれば、農家に対する補助金がやり玉に上がり、関税撤廃等の要求をしてくるであろう。
日本はこれまでに米国との間で、数多くの日米二国間協定を結んできた。例えば、1989年の日米構造協議がある。日米貿易摩擦解消のため、アメリカ合衆国財務省が ”日米構造協議” を立案し、アメリカ合衆国通商代表部が実際の折衝にあたった。1985年のプラザ合意があったにも関わらず、アメリカの対日赤字が膨らむ要因は、日本の市場の閉鎖性にあるとして、主に日本の経済構造の改造と市場の開放を迫る内容となっていた。規制緩和の一つ、大店法の実施もその例であった。これにより地方都市近郊にショッピングモール等の大型店が、駅前にシャッター通りが出来る切っ掛けとなった。
何度かの二国間協定にも拘わらず日米貿易の不均衡は今なお続いている。しかし、この不均衡は、両国の国土の大きさの違い、文化の違い等にも関わることであり、解消できる話ではない。政府はTPPの存続を基本方針としているようだが、2月末、米上院で商務長官に承認されたウィルバー・ロス氏(79)は、TPPについてはかねてから実現に反対しており、トランプ大統領より強硬かもしれない。
これまでの二国間協定でも米国に押し切られた感が強いが、日本の外交力を総動員し、何とか頑張って欲しいものだ。2017.04.19(犬賀 大好-330)
環太平洋経済連携協定(TPP)は発効寸前まで進んだが、トランプ米新大統領は1月23日、TPPから離脱するとした大統領令に署名した。これにより世界経済の4割を占める巨大貿易圏構想は旗振り役の米国の離脱で発効が絶望的となった。
米国の離脱通知後、初めてとなったチリでのTPP閣僚会合は、今後の方向性を示せず3月15日、閉幕した。オーストラリアとニュージーランドは米国抜きのTPP11を進めたいようであるが、日本はこれを認めると、米国との間で二国間協定をやらなくてはならないジレンマに陥る。また、マレーシャとベトナムは、米国抜きでは意味が無いと主張し、チリやペルーは中国も参加すべきだと主張しているようだ。
各国の思惑はばらばらであり、5月にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)の貿易相会合が予定されているが、TPPの枠組みは解体含みとなりそうだ。日本は表向き米国を加えた全12ヵ国での発効を目指す姿勢を崩していない。粘り強く米国を説得して引き戻そうとする日本の戦術は、見直しを迫られること必須である。
他方、日本や中国、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など計16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の事務レベル交渉会合が2月27日、神戸市で開かれた。RCEPがアジア太平洋地域の経済統合の軸になることも期待され、日本は中国ペースでの進展を警戒しながら交渉の早期妥結を目指すそうだ。
また米通商代表部(USTR)は3月31日、貿易障壁に関する年次報告書を公表し、その中で日本の自動車や農産品などの市場開放を求めた。農業分野では相当な市場障壁が存在するとしたうえで、牛・豚肉、乳製品などで高い関税が残っていると指摘した。自動車については、日本特有の検査手順や販売網の拡大に障害があるなどとして、米国製の自動車の販売が少ないと指摘している。
TPP交渉では、日本政府は農家の反対を押し切って農産物の大幅な関税引き下げに合意したが、2国間の本格的な交渉になれば、農家に対する補助金がやり玉に上がり、関税撤廃等の要求をしてくるであろう。
日本はこれまでに米国との間で、数多くの日米二国間協定を結んできた。例えば、1989年の日米構造協議がある。日米貿易摩擦解消のため、アメリカ合衆国財務省が ”日米構造協議” を立案し、アメリカ合衆国通商代表部が実際の折衝にあたった。1985年のプラザ合意があったにも関わらず、アメリカの対日赤字が膨らむ要因は、日本の市場の閉鎖性にあるとして、主に日本の経済構造の改造と市場の開放を迫る内容となっていた。規制緩和の一つ、大店法の実施もその例であった。これにより地方都市近郊にショッピングモール等の大型店が、駅前にシャッター通りが出来る切っ掛けとなった。
何度かの二国間協定にも拘わらず日米貿易の不均衡は今なお続いている。しかし、この不均衡は、両国の国土の大きさの違い、文化の違い等にも関わることであり、解消できる話ではない。政府はTPPの存続を基本方針としているようだが、2月末、米上院で商務長官に承認されたウィルバー・ロス氏(79)は、TPPについてはかねてから実現に反対しており、トランプ大統領より強硬かもしれない。
これまでの二国間協定でも米国に押し切られた感が強いが、日本の外交力を総動員し、何とか頑張って欲しいものだ。2017.04.19(犬賀 大好-330)
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