東京五輪の大会関係者が観客数の上限について最終判断時期を5月以降とすることを決めたと今月15日報道があった。先に国際オリンピック委員会(IOC)や組織委員会等の大会関係者の5者協議で4月中に判断する予定だったが、新型コロナウイルスの感染状況が定まらないことから、決断を先送りしたのだ。
今月12日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、日本で新型コロナウイルス感染が収まらずワクチン接種も滞る中で東京五輪を開催するのは最悪のタイミングであり、日本と世界にとって”一大感染イベント”になる可能性があると伝えた。
このニュースに限らず、7月中に人類がコロナウイルスを克服出来ると予想する専門家はいない。それにも拘らず観客数の上限決定を先送りしたのは、何としてでも実行したいが無観客だけは避けたいとの政府の苦しい意向が反映されている。
自民党の二階幹事長は4月15日、東京五輪・パラリンピックの中止が選択肢になり得るとの考えを示した。河野太郎規制改革相も同日のテレビ番組で、東京五輪を無観客で開催する可能性に言及した。これまで政府内は計画遂行で固めていたが、内実が漏れ出してきた。あるいは、政府が中止を決断した時の衝撃を和らげるための予防線を張った為と勘繰ることもできる。
IOCは東京大会では既に海外観客の受け入れを断念しているが、完全な形で実行したい安倍前首相の後を引き継いだ菅首相の完全な形とならないまでも出来る限り多くの客を入れて実行したいとの気持ちはよく分かる。しかし、コロナ防止と五輪をいかに両立させるかの方策を探して上限決定を先送りしたことは容易に推測される。
4月17日には菅首相とバイデン大統領の日米会談が行なわれた。共同声明では、バイデン大統領は、今夏、安全・安心なオリンピック・パラリンピック競技大会を開催するための菅総理の努力を支持する、とあり、また共同記者会見でも、菅首相が東京オリンピック・パラリンピックの開催を実現する決意であることを伝えたが、バイデン大統領からはこの決意に対する支持を改めて表明しただけで米国が選手団を送るとの明言はなかった。
大統領は首相の決意は尊重するが、米国としては参加すると決めてはいないと言ったまでだ。米国ではワクチン接種が進み、新規感染者数が減りつつあると言えども、オリンピック開催までに収束することなど考えられない。
4月6日、北朝鮮の体育省は、この夏の東京五輪について新型コロナウイルスによる世界的な保健の危機状況から選手たちを守るために参加しない方針を明らかにした。北朝鮮は日本の感染状況を理由に挙げているが、世界の中には自国の感染状況が理由で参加できない国も現れてくるだろう。例え、五輪の会場を日本国民で埋めたとしても、寂しい大会になること間違いない。
いよいよ東京五輪の無観客開催が現実味を増してきたが、最悪の場合中止にまで追い込まれるであろう。2021.04.21(犬賀 大好ー696)
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