今年の春闘での大手企業の賃上げラッシュは、異次元金融緩和で大儲けした大企業が従業員にやっと還元できたと喜ぶべきであろうが、日本全体の企業数の99.7%が中小企業で、従業員数の70%以上が中小企業で働いており、日本商工会議所の調査によれば、賃上げを実施できる中小企業は全体の60%未満にとどまり、賃上げ率は2%程度になる見込みだとのことだ。中小企業で大企業と同じ水準の賃上げが行われなければ、異次元金融緩和の恩恵は一部にのみ留まることになることになる。
さて、5月に入り毎日のように諸々の物価の値上げが報道されているが、最近物価上昇率は4%台から3%台に低下しているそうだ。このまま2%にまで低下すれば、日本経済は安定発展するとのエコノミストの話であるが、年金生活にとって諸物価値上がりが定着するのかと思うとうんざりする。
ところで、国内では人手不足が深刻化しているようだ。今朝のニュースでも牛丼で有名な吉野家がこの連休中に人手不足の為休業するとの報道があった。人手不足は毎年この時期顕著になるようだが、休業までするとは大変な人手不足なのだろう。恐らく今後は、中小企業の人手不足による倒産増加が避けられそうもないとのことだ。
政府も異次元と称する少子化対策の必要性を訴えているが、最新の将来推計人口によれば50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るとのことだ。各年齢層全体が均一に減少すれば良いが、働き手が減り高齢者が増加するのが問題なのだ。
この問題解決の一助として自民党の外国人労働者特別委員会は技能実習生の受け入れ目的の変更を議論しているとのことだ。そもそも技能実習制度とは外国人が日本で働きながら技術を学び、帰国後の自国の人材育成を通じた国際貢献を目的とするものであった。しかし、受け入れ側の日本では人手を確保する手段になっており、現実との乖離が甚だしかったようだ。
そこで、政府は外国人労働者が日本で安定して長期に働けるように特定技能制度を新設した。技能実習制度では3年の在留期間を特定技能1号では最長5年とし、特定技能2号では制限無しとした。現状1号では約14万人が働いているとのことだが、2号は10名程度とのことでいないのも同様だ。
先述の特別委員会は現在、建設と造船・舶用工業に限られている2号の適用分野を広げようと各業界と議論を進めているようだ。1号では家族同伴は許されなかったが、2号では許される為、近年異常な円安で日本で働く価値が低下したとは言え、安心・安全な生活が送れる日本への希望は激増すると思われる。しかし、この政策は移民政策に繋がると反対意見も強いようだが、少子化の歯止めがかからない日本では避けて通れない道であろう。
2023.05.03(犬賀 大好ー911)