カジノ建設候補地の確定は2021年~2022年頃になると推測され、建設候補地を抱える自治体の競争が激化しているようだ。
観光庁はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の整備区域の選定に向けた基本方針で、日本を代表する観光施設にふさわしい、スケールや独自性を持つことや重要な国際会議に対応できること、それに、観光客の増加や地域の雇用の創出が大きく見込まれることなどの利点を挙げている。
この基本方針では、カジノの名前は全面に出ず、カジノの負のイメージをかき消す美しい言葉が散りばめられている。しかし、カジノ無しのIRでは観光客の大幅な増加や雇用の増加は見込みは期待できない。東京ディズニーランドのような娯楽施設も考えられるが、候補地の多くの地域では既に同じような施設もあり、客寄せパンダはギャンブルである。
また、国土交通省も9月4日、基本方針案を公表した。観光庁の案が概念的であるのに対し、国交省の案は、カジノを営業するためには展示場面積などの規則をIR開業当初から順守することなど詳細が決められているようだ。
ここで決められる基本方針に従って、あるいは参考にして誘致をめざす自治体は国への申請書を必死に作り上げるのであろう。しかし、申請書の中身はあくまでも想像力に基づく作文であり、どこも似たり寄ったりでこれだけで決めることは出来ない。最終的に決めるのは政治力であろう。
候補地に選らばれれば、IR建設では莫大な投資が行われ、経済効果は抜群だ。世界のIRをみると、建設には驚くほどの多額の資金が投じられている。例えば、2010年に開業したシンガポールのあるIRには、約6680億円がかけられたそうだ。九州電力玄海原子力発電所の3号機の建設費は約4000億円とのことであるので、投資規模は原発相当だ。
またカジノは利権の巣窟だ。自治体が申請するIR施設の建設を認可するのは観光庁を傘下に置く国交省だが、カジノ運営事業者を審査・監督するカジノ管理委員会は内閣府に置かれて官房長官が握る。エンターテインメント業界は経産省、賭博関連は警察の所管で、ギャンブルの上がりの3割は国庫に納付されるから財務省、ギャンブル依存症対策は厚労省の担当になるそうだ。関係する各省は利権を求めて大騒ぎするだろう。利権の代表は天下り先の確保だ。
カジノ候補地を最終的に決めるであろう最高意思決定機関の“カジノ関係閣僚会議”は、総理の他に官房長官と財務、国交、経産、厚労の各大臣、国家公安委員長(警察担当大臣)の6閣僚がメンバーになるようだが、この会議に上がるまでには関係庁の水面下の争いがあるだろう。
第4次安倍内閣改造では、政権の要である麻生氏、菅氏、の他二階氏も続投させた。IR建設候補の長崎には麻生氏、大坂には菅氏、和歌山には二階氏が背後に控えていると見られているそうだ。決定されるのは当面3候補地とのことであるので、これで決定と思われがちだが、和歌山と大阪は近すぎるため、どちらかにせざるを得ないであろう。
この点、安倍内閣を仕切る菅官房長官と建設・観光業界のドンである二階幹事長の争いが見ものである。2019.10.05(犬賀 大好-537)