日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

民泊法は縦割り行政の弊害をまともに受ける

2018年02月14日 09時22分18秒 | 日々雑感
 最近、個人が旅行客を泊める”民泊”なるものが盛んになりつつあるようだ。これまでも”民宿”なるものはあったが、その違いはよく分からない。民宿とは一般の民家が副業として安い料金で客を泊めることを指すが、民泊は友達の家に泊まりに行く感覚のサービスと言われているそうだが、両者のサービス内容に本質的な差は無いだろう。

 民泊流行の切っ掛けを作ったのは、Airbnb(エアビーアンドビー)等の、宿泊施設を貸し出す人向けのウェブサイトであり、既に世界192カ国の33,000の都市で80万以上の宿を提供しているそうだ。日本でも、外国人旅行客の増加、空き家や空き室の増加、またインターネットの普及により、広がっているとのことだ。インターネットを積極的に活用する点で、民宿との大きな違いがあるかも知れないが、それは単に運営上の話であろう。

 これまで、一般客を宿泊させる場合、旅館業法に適合しなくてはならなかった。この法律では、営業の種別は、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の4つに分類され、その営業種別毎に許可条件が決められており、個人宅に宿泊させる場合、上記4つの営業のどれかに当てはめる必要があった。先述の民宿はこの簡易宿泊に分類されているそうだ。

 政府は、外国人観光客の増加と宿泊施設の不足に対処するため、世界的に流行しだした民泊の活用を渡りに船とした。しかし、民泊運営の許可は、民宿と同様に”簡易宿所”としての営業許可が一番近いが、客室の延床面積が33㎡以上必要である等からしてすべての個人宅が同許可を取得出来ない。そこで、外人観光客の誘致に熱心な政府は、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を設け、大阪府や東京都大田区等を指定したのだ。

 更に、民泊を全国に広げるため、”住宅宿泊事業法”(民泊法)を昨年6月に制定し、今年6月より施行することになった。社会の要請に応えてと言えば聞こえはよいが、業界の要求に抗しきれなかった面もある。

 この民泊新法では、民泊事業は、①住宅宿泊事業者、②住宅宿泊管理業および③住宅宿泊仲介業に分類され、それぞれ規制が新設される。更に、騒音などの苦情や開設手続きなどの相談を一括して受け付ける専用窓口を観光庁に設ける方針だそうだ。

 自宅を民泊に活用しようとする①住宅宿泊所業者、すなわち家主は都道府県知事への届出が義務付けられる。家主は、客と家主が同じ屋根の下で過ごす家主居住型と、別荘等を貸し出す家主不在型に分類され、ともに年間提供日数の上限は180日に制限されているとのことだ。余り多いとこれまでの旅館業を圧迫することになるからであろう。

 ②住宅宿泊管理業は、家主に代わり宿泊を管理する業だ。家主不在型の民泊については、住宅宿泊管理業者への管理委託を要し、国土交通大臣への登録義務が必要とのことだ。この業種には、都市部の空きマンション等を多く抱える不動産業社が多く参入することであろう。

 宿泊者に家主を照会する③住宅宿泊仲介業は、Airbnbが代表例であるが、観光庁長官の登録を義務付けられるそうだ。

 旅館業法の管轄は厚生労働省一本であったが、民泊はこれまでの旅館業法の隙間を狙った新たなサービスであるため、管轄権は都道府県知事、国交省、官公庁と多岐に亘る。従って、縦割り行政の弊害、すなわち利権の争奪や面倒な仕事の押し付け合い等が、もろに現れるだろう。

 例えば、民泊法では180日を超えない範囲で営業出来るとされるが、その日数の確認方法はどうするのであろうか。宿泊は個人的な好みが大きく、リピーターとなる場合が多いと予想される。お馴染みさんになると、インターネットを介するより直接電話連絡した方が、利用者も家主にとっても、客の選択、仲介料の省略等、何かと便利である。上限180日は無意味となりそうである。

 また、民泊施設でのゴミ出しや騒音の苦情対策は、既に社会問題化しているが、責任を持つのはどの監督官庁であろうか。仕事の押し付け合いが目に浮かぶ。自治体の中には、早くも住宅地での民泊を完全に禁止するなど厳しい方針の自治体もあるそうだ。

 観光庁は、自治体の独自の規制について、実施そのものを制限するような規制は不適切とするガイドラインをまとめたそうだが、強制力はない様だ。そもそも民泊は外国人観光客の誘致が目的であった筈だ。すべての責任は観光庁が負うくらいの覚悟で、管轄権はここに一本化すべきと主張するべきであろう。2018.02.14(犬賀 大好-416)