日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

法人税の減収と内部留保の拡大

2017年11月04日 09時29分49秒 | 日々雑感
 2011年度の法人実効税率は約40%であり各国に比べ高いため、2012年9月に返り咲いた安倍首相は20%台に引き下げることを、成長戦略の目玉に据えた。法人税の引き下げにより、企業活動が活発になり、特に海外競争力が増し、企業が儲かり、その結果税収が増えるとの成長戦略である。この引下げは、2012年度から開始され、その効果はその後3年間は発揮された。

 財務省による2016年度の決算概要では、税収総額は55兆4686億円で7年ぶりに前年を下回ったとのことである。税収総額が前年割れした主な要因は法人税収の低迷だそうだ。すなわち法人税収は4.6%減の10兆3289億円と2年連続で減少したそうだ。前年度から約5千億円減少し、2012年度以来の低水準にとどまったようだ。

 アベノミクスの影響を受けた円安で企業業績が回復し、法人税収は2014年度まで増加が続いてきた。しかし、翌年度に減少に転じ、昨年度も自動車や金融など大企業からの税収が伸び悩んだ。政府は今年度の法人税収を12兆3910億円と見込むがハードルは高いとのことだ。安倍政権が取り組んできた成長頼みの税収増は息切れしつつあるが、今回の総選挙での大勝利を背景に、二匹目の泥鰌、異次元緩和を引き続き推し進めるようである。

 法人税収は景気回復の初期に増加しやすいそうだ。現在企業業績は庶民には実感の無いアベノミクス景気で悪くないが、日本企業のグローバル化で海外子会社が利益をあげても現地で納税するため、国内の税収に反映されにくくなっている側面もあるとの事である。従ってこれまでと同じ異次元緩和を続けたところで、税収の増加となるのであろうか。

 安倍政権は消費税10%化を2019年10月から実施することを前提にその使用目的変更を今回の総選挙の焦点の一つに据えた。てっきり10%化の再三延期を言い出すのではないかと心配していたが、野党各党が先手を打って凍結等と主張したため、言い出せなかったのではないかと思われる。

 政府としたら税収が落ち込む中、消費税の10%化による税収の増加は願うところであろう。しかし、増税により消費そのものが低下したのでは税収は増えないと、これまでの増税見送りの際の言い訳であるが、安倍政権は何とか理屈をつけて、再三延期を言い出す懸念は残る。

 さて政府が進める各種政策にいずれも財源不足が指摘される。教育無償化、社会保障費の自然増、介護職員の処遇改善等であり、身を切る改革は何処かに消えてしまった。

 一方企業の内部留保は400兆円を超えたらしい。今回の総選挙で内部留保の多さを指摘したのは、共産党と希望の党であった。この内部留保に1%の税金を掛ければ、4兆円の税収になると素人は考えるが、税の2重取り等の問題があるらしい。

 兎も角、異次元緩和による景気好循環の淀みの主たる原因はここにあると思われるが、安倍政権もようやく気が付いたのであろうか。

 政府の経済財政諮問会議が11月26日開かれ、安倍首相は来年の春闘で3%の賃上げをするように経済界に要請したそうだ。春闘の賃上げ闘争は労働組合の役目であった筈だが時代は変わった。

 また、安倍首相が衆院選で公約した待機児童対策など年2兆円規模の政策の財源に充てるため、政府は企業に対し、新たに計約3千億円の負担を求める方向で調整に入った。消費増税による税収増分だけでは足りないためだが、経済界の反発も予想され、調整は難航すると思われたが、経済界は受け入れる検討に入ったらしい。

 この2つの動きは、内部留保の多さに目を付けた結果であろうが、経済界としても儲け過ぎの後ろめたさはあるのだろう。しかし、まだ400兆円のごく一部と思われるので、財政難の政府の要求は続くであろう。2017.11.04(犬賀 大好-387)