森出じゅんのハワイ生活

ハワイ在住のライターが、日々のあれこれをつづります。

ハワイ―ポリネシア―日本の架け橋、篠遠博士逝く

2017年10月15日 | ハワイアナ


ポリネシア人類学の世界的権威、篠遠喜彦博士が10月4日に亡くなりました。享年93歳でした。心からお悔やみ申し上げます。

篠遠博士は日本人ながら、ポリネシア文化の殿堂、ビショップ博物館所属の学者として半世紀以上にもわたりポリネシアの人類学、考古学を究めた方です。特にタヒチ・フアヒネ島やマルケサス島の発掘で知られ、ポリネシアで一番有名な日本人だったと言えるでしょう。

なんたってタヒチには篠遠博士を讃える人気ソングまでありますし、タヒチ政府は2000年、篠遠博士に騎士の称号&勲章も授与しています。あ、もちろん! 日本政府からも1995年に勲章を授けられていますよ。



この写真は4年前のものですが、篠遠博士のセミナーを受けた際に撮影しました。あの時、博士は89歳だったんですね…。とてもお元気で、セミナー内容もそれはディープで…そんなお年だったとは信じられません。著書「楽園考古学」にサインをいただきましたが、今では宝物になっています。

実は以前、このブログに博士のことを書いたと思うのですが見つからず…。10年前、以前のブログに書いた原稿をここに貼り付けますね。ずいぶん長いですが…。読んでいだけたら嬉しいです!

以下、どうぞ!(冒頭の写真は、今朝見たレインボーです。うっすりダブルレインボーなのがわかりますか?)

皆さんは篠遠喜彦博士(シノトウ・ヨシヒコ博士)をご存知でしょうか? 篠遠先生は東京出身者ですが、1954年にハワイ移住。ポリネシア研究の殿堂であるビショップ博物館所属の学者として、実に50年以上もポリネシアの研究に携わってきた、ポリネシア考古学の世界的権威なのです。

「ハワイアンのルーツを探る」という研究テーマにのっとり、篠遠博士の研究エリアはハワイというより、ソサエティ諸島やマルケサス、イースター島などなどが中心。熱帯の気候の中では歴史的遺物など残らない、従ってポリネシアには考古学という学問が成り立たないと思われていたポリネシアの島々で、実に多くの遺跡や遺物を発掘した篠遠博士。神殿跡や大型カヌーなども含めて、です。

それが各島の歴史やポリネシア民族移動の軌跡を知るのに役立ったのはもちろん、島の人々が、自分の土地に誇りを抱くきっかけにもなり…。加えて貴重な遺跡の保存運動にもつながったりと、ポリネシアに対する篠遠先生の功績の大きさは、計りしれません。

ハワイが誇る篠遠博士は、もちろん日本の誇りでもありますネ。日本でも上の写真のような著書「楽園考古学」(平凡社。荒俣宏との対談集)などを発表しているので、多くの方々が篠遠博士の名前を知ってらっしゃるのでは?

私も以前、篠遠先生にインタビューしたことがありますが…。堅苦しいところは微塵もない、目の輝きが印象的な先生でした。80歳を越えた今でも、毎夏タヒチ・フアヒネ島の発掘に出かけている篠遠博士。日本語、英語だけでなくタヒチ語も話すので、現地の人々のハートもガッチリつかんでいるよう。ポリネシアの島々で一番有名な日本人が、まぎれもなく篠遠博士、と言えるでしょう!

前書きが長くなりましたが、先日、この篠遠先生を記念して、「サー・ヨシヒコ・シノトウ」と名づけられた新種のハイビスカスが誕生したそうです! 過去7000種ものハイビスカスの交配に成功したハワイ在住のジル・コリエルさんが作り上げた青と赤の花だそうで、ジルさんと篠遠博士が一緒に、ビショップ博物館に植樹するセレモニーが行われたばかり。私はまだこのハイビスカスを見ていないのですが、美しいハイビスカスに自分の名が付けられるなんて…嬉しいでしょうね! 誰かアンセリウムに、私の名前を付けてくれないかな~。

篠遠先生にとっての名誉は、もちろんこれが初めてではなく。なんと! タヒチには、「タオテ・シノト」という流行歌まであります。昔、人気歌手によってレコードにもなったので、パレードで使われるような有名な唄なのですって。さらにマルケサスにも、「ウェルカム・シノト」という唄があるとか! …ポリネシアの人々の篠遠博士に寄せる想いが、ヒシヒシと伝わってきますね~。

おまけに2000年には、篠遠博士はフランス領ポリネシア政府から、騎士の称号まで授与されています。そう。篠遠博士は、タヒチの貴族でもあるわけですね! この授賞式にタヒチに赴いたときは、「タヒチだから、正装で出席するならマロ(ふんどし)になるか? なんて考えちゃいましたよ。アハハ」と、冗談を言っていた篠遠博士。帰国後、ビショップ博物館に出勤すると、女性スタッフが「騎士、篠遠博士~」と皆、深くお辞儀して迎えてくれた、ともおっしゃってました。

私もポリネシア、ハワイの事柄を勉強するのが好きですけれど、篠遠先生の足元には、数百キロも及びません。どうか末永く、現役で活躍していただきたいと思います。




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