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森出じゅんのハワイ生活

ハワイ在住のライターが、日々のあれこれをつづります。

さようなら、ダニエル井上議員

2012年12月18日 | 歴史


ハワイ選出の連邦上院議員、ダニエル井上氏が昨日、亡くなりました。享年88歳でした。高齢ではありましたが、健康状態が取りざたされたのはつい10日前のこと。酸素ボンベを使用中の井上氏が、それでも呼吸困難を起こし、入院したというニュースは、初めハワイよりも全米のニュースで大きく取り上げられたほどです。

井上氏は、連邦議員生活53年。アメリカでも初の日系議員だった人で、上院議長という要職にありました。上院議長といえばアメリカの議会政治の権力構造の中ではアメリカ大統領をNO.1とするとNO.3、つまり大統領、副大統領に次ぐ高位置。今だ人種差別の残るアメリカで、アジア系議員としてここまで成功した井上氏。ダテな政治家ではなかったということですね。

しかも、53年の議員生活のなかでハワイがたくさんの連邦補助金を獲得するのを手助けした大政治家です。州知事よりもハワイへの影響力は強く、いろいろな意味でハワイのドンでした。その井上氏が急に亡くなったのですもの。ハワイ中が悲しみに暮れています。私のように、一度も面識のない人間でも、なんだか物悲しさに襲われています。悲しいな…。

井上氏は横浜出身の両親の下、ハワイで生まれた日系2世でした。第2次世界大戦では日系人兵士で構成された有名な442部隊に属し(イタリアなど一番危険なヨーロッパ戦線の前線に送られ、戦死者も多ければ、アメリカ軍の中で最多の勲章を与えられた英雄部隊)、井上氏もイタリアで手榴弾により右腕を失くしています。その後、弁護士になり、政治の道へ。ある時、白人政治家に「Little Jap」と罵られたそうですが、「彼はイタリアで右腕を失くしているんだ」と、周りが庇ったそうです。井上氏は日系人にとっても英雄でしたが、アメリカの政界でも英雄だったんですね。

…それにしても、ハワイ選出のもう一人の連邦上院議員、ダニエル・アカカ氏も88歳と同い年。アカカ氏は来年1月に政界を引退することにし、先の選挙で後継者も決まっていました。一方、次回の選挙にも出て続投をと明言していた井上氏。それがアカカ氏と時を同じくして、こんな形で議員生活を終えることになろうとは。しかもアカカ氏よりもひと足早く。なんとも奇遇です。

ハワイで井上氏の死を悼む人は多いわけですが、このアカカ氏はその最たる人ではないでしょうか。実は6年前、こんな出来事がありました。当時82歳だった、アカカ氏と井上氏。2人ともハワイの誇る政治家であり、その上院議員職は永久職と思われていました。引退、もしくは今回のように本人が亡くなるまで、このポストは2人のものである、とハワイの誰もが敬意を込めて思っていたのです。

それなのに。当時ハワイ選出の連邦下院議員だった若きエド・ケース氏(50歳代)が、同じ民主党から立候補したから大変! ケース氏はこともあろうにアカカ氏の年齢を持ち出し、議員としての能力に疑問を投げかけて、その座から蹴落とそうとしたのですね。ハワイの人は皆、「なぜアカカ氏が引退するまで待たないのか」と、唖然。というか憮然! もちろんアカカ氏が再選されたわけですが、中でもこのケース氏の蛮行?に怒ったのが井上氏でした。盟友、アカカ氏を侮辱し、ポジションを奪おうと立候補した新米政治家ケース氏を、井上氏は絶対許さなかったのです。「私の目の黒いうちは…」と井上氏が言ったかどうかわかりませんが、以来、ケース氏は何度も選挙に立候補してはいますが、負け続けで。井上氏は、日本人特有の仁義とか義理人情とかを大切にする人だったような気がします。

ハワイでは恐らくオバマ大統領よりも、英雄視されていたダニエル井上氏。長い間、お疲れさまでした。天国で健康な身体を取り戻して、ゆっくりお休みくださいね。MAHALO!
コメント (6)
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