森出じゅんのハワイ生活

ハワイ在住のライターが、日々のあれこれをつづります。

ダライラマとの3日間

2012年04月17日 | 日記


何とも大袈裟なタイトルをつけてしまいましたが、3日間連続でダライラマのお顔を拝見したのは本当です。最初の2日間はハワイ大学での講演で遠くから! 昨日はクアロアビーチでのセレモニー&記者会見で、ごく間近く拝見することができたのでした。

クアロアでは、最近、修理を終えて遠洋航海に再び乗り出すホクレア号のお清めが、ダライラマにより行われました。ホクレア号は古代ハワイの双胴船を再現したカヌーで、日本も訪問していますね。クアロア・ビーチパークが今、ホクレア号の母港?となっており、そこにカヌー関係やホノルル市長などお偉いさんが集まって、儀式が行われたのでした。

メディア関係者の集合はセレモニーの3時間半前でした! ところが、一帯の徹底したセキュリティチェックのため、ある一角で2時間近くも待たされて。でも私は幸せでした。目の前には世にも美しいクアロアの海。そしてこれから、あのダライラマにお会いするのですもの。「いつまで待たせるの?」なんて文句をたれるほど、私は罰当たりな人間ではありませんからネ。

それにしても、厳重な警備でした。夫が某ホテルで見たのと同じく、ジャーマン・シェパードを連れた一団も到着。ゲストにビュッフェの昼食を振る舞った豪華なテントがあったのですが(メディアは別テントで、ただお弁当が配られました。涙)、そのケータリング設備やトラックも、犬達はしきりにクンクン。海には多数のジェットスキー、モーターボートが走り回り、ちょい大きめなボートの上には人が立って、透きとおった海の底を覗きこんでいました。

おまけに。海から3人のダイバーがビーチに上がって来た時は、ド肝を抜かれました。これでも、米本土での警備よりはずっと軽いのだそうです。

記者会見のテントはごく簡素なものでしたが、ダライラマの座られたステージの横には、警備関係者、お付きのお坊さん、スーツに身を固めた同行者がずらり。会見場の最前列にいた私は、ステージ横のその関係者一行の中の一人を見て、口をあんぐり。なぜって、その方は昼食会場で見たウェイターの装いだったからです。エプロン姿の…。ウェイターさんのトップ? …いえいえ、私が想像するに、それはウェイターに身をやつした警護官だったのカモ。記者関係用のテントには、儀式のチャンターなどメディア以外の人もいましたが、その方々は席の後ろに座っていましたからね。

ともかく、この会見の後に私はダライラマと握手する機会があり、天にも昇る気持ちになりました、とさ。

話変わって。ハワイ大学では学生向けと一般向けと、2日間にわたってダライラマの講演がありました。家族と出かけた一般向けの講演にも、子供はたくさん来ていて。この日にも、15歳になる息子の友人に、数人遭遇しました。子供達も、ダライラマの飾らない人柄に、感銘を受けたよう。だって。「写真を見るといつも笑っていますね。人の見ていないところでも笑顔なのですか?」との質問に対し、ダライラマは、「私はトイレの中でも笑顔ですよ。ただし便秘の時は別」なんておっしゃるんですよ!

ですが、ほかの質問への返答の一部で次の言葉を聞いて、私はダライラマの真の黄金なる姿というか、崇高な魂を強烈に感じて、涙が…。ダライラマは繰り返し、物事に動じるな、自分の心の平和がよい現実を創りだすと言っていたのですが。「ある一面だけ見ればネガティブに見えるかもしれない。でも物事は角度を変えて右から左から、上から下から見なければ。遠くからも。そうすると、ネガティブに見えることにもよい意味、よい側面があるのが見えてくる。ある一面だけをごく近くから見ていたらダメ」と。

そして言ったのです。「私は一国を失ったんだよ。それでも。その出来事にもよい面があったと言える。あのことによって、チベット人は目を開いた。目が覚めたんだ。今、チベット人は中国内のいくつもの省に別れて暮らしている。それでも、チベット人全体の団結はそれは強い! それもあの、中国共産党のお陰なんだよ、と、私はインドを訪れるチベット人にいつも言っている」

…ダライラマはチベットの精神的最高指導者というだけではなく、チベットという一国の主なんですよね。この言葉を聞いた時、ユーモアたっぷりに人の道を解くダライラマの奥底に、真の王者の姿を見た気がしました。そしてその強靭な精神も。日頃、とかくネガティブな想いを抱きがちな私なのですが、これからはくだらないことで落ち込んだ時、必ずダライラマの言葉を思い出すことでしょう。「私は一国を失った。それでも」の言葉を。

あまりに崇高なダライラマの姿に打たれ、インドまでダライラマを追いかけていきたくなった3日間。また逢う日までお元気でいてほしいです。


コメント (4)
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