で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2400回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『マッドマックス:フュリオサ』
崩壊し砂漠化した世界で攫われた少女フュリオサが十数年の復讐の旅路を行くアクション・アドベンチャー。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のもう一人の主人公の女戦士フュリオサの若き日を描く前日譚。
物語。
世界の崩壊から十数年が過ぎ、砂漠化したオーストラリア。
暴君ディメンタス将軍の率いるバイカー軍団の手に落ち、故郷や家族、すべてを奪われたフュリオサは、ディメンタス将軍と鉄壁の要塞を牛耳るイモータン・ジョーが土地の覇権を争う、狂気に満ちた世界と対峙することになる。
狂ったものだけが生き残れる過酷な世界で、フュリオサは復讐のため、そして故郷に帰るため、人生を懸けて修羅の道を歩む。
監督・共同脚本は、ジョージ・ミラー。
1979年公開の第1作『マッドマックス』から今作までシリーズ5作を45年間送り続けている。
主演は、『ラストナイト・イン・ソーホー』リミテッドシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』などのアニヤ・テイラー=ジョイと、『シークレット・キングダム ピーターの奇妙な冒険』のアリーラ・ブラウン。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ではシャーリーズ・セロンが演じた女戦士フュリオサの若き頃を演じている。
共演は、『マイティ・ソー』『タイラー・レイク』シリーズのクリス・ヘムズワース、トム・バーク、チャーリー・フレイザー。
原題は、『FURIOSA: A MAD MAX SAGA』(『フュリオサ:マッドマックス神話』)
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のもう一人の主人公の女戦士フュリオサの若き日から『怒りのデスロード』につながる、いわば前後編の前編。(一応、その後もやりたいとジョージ・ミラーは言っているので三部作になるかも)
だってさ、『怒りのデスロード』の原題は、『MAD MAX: FURY ROAD』で、フュリオサ(怒り=FURY)を入れ込まれているのですから。
少女フェリオサがいかにして、腕を失くし、強靭となっていったのか、それまでにあった少女時代から青年期を中心に描き出す。
シャーリーズ・セロンが自身で演じたがったそうだが、今やCGで若返りができるとはいえ、その体の大きさが厳しいということでローティーンをアリーラ・ブラウンと20代をアニャ・テイラー=ジョイが演じていることで、すでに覚悟が出来ている人間が、さらに強くなるとはどういうことかという神話的な人物をつくりあげている。
なにより、チャーリー・フレイザー演じるフェリオサの母の強さという「親の顔が見たい」を見せつける。彼女がフェリオサを生んだ物語も見たくなる。人物を行き来描くのがほんとたまらないのよね。端っこに琉一瞬の人物でさえも刻みつけてきます。つまり、生きているのです。
このつながっていく意思は、今作のテーマの一つ。
生命の循環の循環とも重なる。
ジョージ・ミラー作品は神話的に物語るのが多いのだが、語り部を登場人物にして、今作はがっつり神話として語ることで現実味を超えて、フィクション濃度を上げ、話を盛っちゃうし、盛られるのを楽しむ人間の特性にも踏み込んでいく。
困ったことに、これを理解しない方って案外多いのよね。
今作は未来の話ですが、その時のリアルタイムではなく、誰かがさらに未来から語った過去なのよ。
そういうのをありますが、そもそも画面で起きていることが楽しい。
映画ならではの映像の楽しさが溢れまくる。
前半の砂漠で追いかけ続ける追跡と逃走、途中のカスタムカーにも少し時代を感じたり、過渡期のバトルなど、物語内時間変化を入れて、楽しませてくれる。
新たな相棒との要塞防御戦の激しさは、見たことない速度感で止まった場所での戦いで新たな興奮を見せてくれる。まぁ、もちろん、シチュエーション自体は他作にもあるものではあるのだが。なにしろ、前作は動き続けるアクションのアクション映画革命を起こした傑作ですもの。
でもね、続編だからって前より大きくするのではなく、あえて前時代として抑えめにして観客を信じ物語の方に献身していることにグッときます。まぁ、前以上を望む観客が多かったのもいた仕方ないところではありますが。
そして、今作はアクションとフュリオサの物語を盛り上げる、現代的で新しいもう一つのテーマがある。これがまた『怒りのデスロード』へと拡げる者となてちるのだが、これがまた欲しがる観客には届かなかったと言われることの一つだったりしますが。ここのリーダー論はリーダーが複数出てくる今作と『怒りのデスロード』ならではの味になっているのですけどね。
そうそう、一応、マッドマックスもほんのちらっと出てますので、見つける遊びもあります。
今作見た後で、帰ってすぐに『怒りのデスロード』観ちゃったもの。
まだどちらも見てない方は、『フュリオサ』から『デスロード』の順で行ける快感があることが羨ましくさえある。
時間を感じさせる3人一役を味わう神話的一本。
製作国:オーストラリア / アメリカ
上映時間:148分
製作年:2024年
映倫:PG12
スタッフ。
監督:ジョージ・ミラー
製作:ダグ・ミッチェル、ジョージ・ミラー
脚本:ジョージ・ミラー、ニコ・ラソウリス
撮影:サイモン・ダガン
美術:コリン・ギブソン
衣装:ジェニー・ビーバン
編集:エリオット・ナップマン マーガレット・シクセル
視覚効果監修:アンドリュー・ジャクソン
アクション監督:ガイ・ノリス
音楽:トム・ホルケンボルフ
配給:ワーナー・ブラザース映画
出演。
アニャ・テイラー=ジョイ (フュリオサ)
アリーラ・ブラウン (フュリオサ(少女時代)/リトルD)
クリス・ヘムズワース (ディメンタス)
トム・バーク (プレトリアン・ジャック)
チャーリー・フレイザー (メリー・ジャバザ/母)
ラッキー・ヒューム (イモータン・ジョー/リザデイル・ペル)
ジョン・ハワード (人食い男爵(ピープルイーター))
リー・ペリー (弾丸将軍(バレット・ファーマー))
ネイサン・ジョーンズ (リクタス・エレクタス)
ジョシュ・ヘルマン (スカブラス・スクロータス)
ジョージ・シェヴェストフ (ヒストリーマン)
アンガス・サンプソン (オーガニック・メカニック)
エルザ・パタキー (ミスター・ノートン/ヴァルヴァリーニ将軍)
イアン・ロバーツ (ミスター・ハーレー)
ガイ・スペンス (ミスター・ダビッドソン)
デビッド・フィールド (トー・ジャム)
ラヘル・ロマーン (バルチャー)
デビッド・コリンズ (スメグ)
ゴラン・D・クルート (ザ・オクトバス)
CJ・ブルームフィールド (ビッグ・ジェリー)
マテュス (ファング)
ショーン・ミルズ (ローン・ウォーボーイ)
ディラン・アドニス (バルキリー)
ロバート・ジョーンズ (スクイント)
クラレンス・ライアン (ブラック・サム)
ティム・バーンズ (ハングリー・アイズ)
ティム・ロジャーズ (スナッパー)
フローレンス・メッツァーラ (サッド・アイズ)
クァデム・ベイルス (ウォー・パップ)
ピーター・ステファンズ (ガスタウンの守護者)
リチャード・ノートン (プライム凱旋将軍閣下)
ブライアン・プロベッツ (チャムバケット)
『怒りのデスロード』以後に、「デスロード」とついたあやかり作品がたくさん生まれました。
フュリオサをフェリオサと言ってしまう。
フューリーが基なのに。
ややネタバレ。
ジョシュ・ヘルマン演じるスキャブラス・スクロタスは、ビデオゲーム版『マッドマックス』(2015)で登場したキャラクター。
ガスタウンで壁に模写されているのは、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの『ヒュラスとニンフたち』(1896)
ネタバレ。
デメンタスが「君には壮大な作品を作る力があるか?」と尋ねるのは、記憶に残らず目立たなければ、忘れられるだけでなく、残酷に処分されるぞという脅しでもある。
追加クレジット。
ジェイコブ・トムリ (マッドマックス/ザ・ドッグマン)
ジェイコブ・トムリは、『マッドマックス4』と『レヴェナント:蘇えりし者』の両方でトム・ハーディのスタントダブルを務めていた。
ジョージ・ミラーは、インタビューで、フュリオサのセリフが少ないのは、単純な理由だと答えた。「映画は速いものであるべきだからだ。セリフがあると映画が遅くなる」
章立てになっている。
1:到達不能極
2:ウェイストランドからの教訓
3:密行者
4:帰路
5:復讐を超えて
『怒りのデスロード』でフュリオサってイモータン・ジョーにそこまでこだわっていない。
『怒りのデスロード』のフュリオサは故郷を目指すのがモチベーションで、イモータン・ジョーに怒ってはいても殺すほどではなく、脱出優先。砦はそのままであってもしかたないという個人ができる反抗の範囲に収まっていた。
ただ旅の途中で花嫁を殺されたことや世界への鬱積で怒りが盛り上がる。(前作だけだと説明ないので、昔色々あったんだろうなぁという感じを抱いたが)
今作で、悪政者の個をないがしろにすることへの怒りだったことが明白になる。(あんたは私が使えるから警護隊長にしたけど、そもそも私という個とあなたの行動を覚えてる?となった)
フュリオサは故郷の有り様を見て、自分が権力者になる覚悟をする。(ヴァヴァリーニ、ディメンタス、イモータン・ジョーという3人の治世を見てきたという過去が影響もする)
だからこそ、ジョージ・ミラーは構想として、権力者となったフュリオサが権力の罠に落ちるかどうかを描きたいと言ったのではないかと。