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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

何があなたを苦しめてるの? 『Swallow/スワロウ』

2021年01月14日 00時00分03秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1820回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

『Swallow/スワロウ』

 

 

 

新妻が妊娠をきっかけに静かに心を病んでいき、異物を飲み込み始めるサイコ・サスペンス・ドラマ。

 

主演は、『ガール・オン・ザ・トレイン』、『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』、『悪魔はいつもそこに』のヘイリー・ベネット。

 

監督は、カーロ・ミラベラ=デイヴィス。
手を何度も洗わずにはいられない強迫性障害に苦しんだ自身の祖母のエピソードをヒントに書き上げたオリジナル脚本で、記念すべき長編デビューを飾った。

 

 

物語。

資産家の家に嫁ぎ、ニューヨーク郊外の豪邸で優しい夫と何不自由ない生活を送る新妻のハンター。
誰もが羨む暮らしぶりの裏で、誰にも相手にされず、夫さえもまともに話を聞いてくれない日々に孤独を募らせていく。
待望の第一子を妊娠したことで、その気持ちは拍車がかかり、彼女は、ふとした衝動からガラス玉を呑み込んでしまう。

 

 

出演。

ヘイリー・ベネット  (ハンター・コンラッド)

オースティン・ストウェル (リッチー・コンラッド)
エリザベス・マーヴェル (キャサリン・コンラッド)
デヴィッド・ラッシュ (マイケル・コンラッド)

レイス・ナキリ  (ルエイ)
デニス・オヘア (アーウィン)
マヤ・デイヴィス (Dr.サントス)

 

 

スタッフ。

製作:モリー・アッシャー、ミネット・ルーイー、キャロル・バラトン、フレデリック・フィオール
製作総指揮:サム・ビスビー、コンスタンティン・ブリースト、ヨアン・コント、ピエール・マザルス、エリック・タヴィティアン、ジョー・ライト、ヘイリー・ベネット
撮影:カテリン・アリスメンディ
プロダクションデザイン:エリン・マッギル
衣装デザイン:リエーネ・ドブラヤ
編集:ジョー・マーフィ
音楽:ネイサン・ハルパーン
音楽監修:ジョー・ラッジ

 

 

『Swallow/スワロウ』を鑑賞。
現代アメリカ、新妻が妊娠をきっかけに静かに心を病んでいき、異物を飲み込み、自分を取り戻そうとするサイコ・サスペンス・ホラー・ドラマ。
テンポよくかつ速度も早く、映画的な展開をしていく多層的な物語。このネタでもう2本くらい映画が作れそうなほど濃密。
タイトル通り飲み込む(=Swallow)ものが小から大へいくようにテーマもじわりと拡大していく。
ジャンルも多層的でミクスチャーになっており、娯楽映画でもある凄み。
これがデビュー作とは、早くも次回作が楽しみ。
とにかく、ヘイリー・ベネットの顔が全てをまとめこむ。
無自覚さと社会的なホラーともいえる。
絶望を飲み込み、自分の中にしかない希望を孕むが、安易に生み出さない。
『透明人間』(2020)とのシンクロニシティを感じる。あちらは男性の監督と脚本だが、
恐怖を描くとき、今最も世間が抱えているものなのだということだ。この2作、外にある男性性と中に入れる女性性というジェンダー的なものさえ呼応する。
ホラー映画は社会の空気を敏感に取り込むのだ。
(実際、今作もホラー映画祭で西遊賞作品賞を受賞している。世界のジャンルの受け止め方の懐の深さは見なうべきところ)
安易に逃げず見せていくヨーロッパ映画の系譜を引き継ぐシーンづくりも素晴らしい。
映像と色のコントロール、美術と編集によってぼわんと膨らんでいく。
独特のユーモアも魅力。
劇中で出てくるシンボルのような小説の映画化のような凝縮。
楽園で知恵を食したイブの土作。



 

おまけ。

原題は、『SWALLOW』。
『飲み込む』。

 

2019年の作品。


製作国:アメリカ・フランス
上映時間:95分
映倫:R15+

 

配給:クロックワークス  
 

 

受賞歴。

2019年のBrooklyn Horror Film Festivalにて、Head Trip Competitionの観客賞、脚本賞(カーロ・ミラベラ=デイヴィス)、最優秀女優賞(ヘイリー・ベネット)、最優秀美術賞(エリン・マッギル)を、受賞。

2019年のDenver International Film Festival にて、American Independent Awardの最優秀作品賞を受賞。

その他10以上の賞を受賞。

 

 

日本版のキャッチコピーの「“欲望”をのみこんでゆく――。」はダブルミーニング(言葉を飲み込むのように欲望を当てているとしても)なのかな。
宣伝会議を想像してみる。
SWALLOW(スワロウ)=飲み込む、が伝わるようにしたいだろうから、「飲み込む」を使いたいのだろうので、「欲望」だけ変える感じかね。
「“希望”をのみこんでゆく――。」「“絶望”をのみこんでゆく――。」はきっと候補にあったろうな。
「“私”をのみこんでゆく――。」は女性映画っぽくなりすぎて、男性に訴えないとか思われたかね。

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

柵の前に立つハンターと羊ののカットバックのオープニングで、彼女の状態が島されるため、ハンターが家の外にいる画がほぼほぼない。
これにより、最後の脱出が力を持つ。

スマホのゲーム依存もしているし、他のことを知らないから、はじめられない。
ハメられている。

着信音が『アメリカン・ビューティー』。
花を育てるのはオマージュかも。

 

ルエイの戦争と難民まで重ねていく。
現在の女性の状況が難民と同じであるとまで上げていく。
だからこそ、ルエイは彼女に味方する。

 

生まれ直し、セカンドバースデーの物語。

 

堕胎することで、自分が生まれ直す=自分で選ぶ、つまり自立という、逆転したハッピーエンドというかホープエンド。

 

 

 

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