で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2059回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』
老境の愛し合う女性2人の新人生がある事件に翻弄されるサスペンス・ドラマ。
主演は、『ローザ・ルクセンブルグ』、『ハンナ・アーレント』のバルバラ・スコヴァと舞台を中心に活躍するマルティーヌ・シュヴァリエ。
監督は、フィリッポ・メネゲッティ。
本作が長編デビューとなるイタリアの新鋭。
物語。
南仏モンペリエのアパルトマン。
最上階の向かい部屋に暮らすニナとマドは、長年愛し合ってきた秘密の恋人同士。
もう老境に入った2人は、かねてからの夢、ローマへ移住して二人暮らしを始めること、の実現の最終段階に進もうとしていた。
マドは秘密にしていたニナとの関係を、中年の娘と息子に伝えることにする。
ある日、マドは昏倒してしまう。
脚本:フィリッポ・メネゲッティ、マリソン・ボヴォラスミ
共同脚本:フロランス・ヴィニョン
出演。
バルバラ・スコヴァ (ニナ・ドーン)
マルティーヌ・シュヴァリエ (マド/マドレーヌ・ジラン)
レア・ドリュッケール (アンヌ/娘)
ジェローム・ヴァランフラン (フレデリック/息子)
ミュリエル・ベナゼラフ (ミュリエル)
オーガスティン・レインズ (テオ)
スタッフ。
製作:ピエール=エマニュエル・フルーランタン、ロラン・ボジャール
撮影:オーレリアン・マッラ
プロダクションデザイン:ローリー・コールソン
衣装デザイン:マグダレーナ・ラブ
編集:ロナン・トロンショ
音楽:ミケーレ・メニーニ
『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』を鑑賞。
現代フランス、老境の愛し合う女性2人の新人生がある出来事に翻弄されるサスペンス・ドラマ。
ラブストーリーでありつつ、ほとんどサスペンス。愛が突き動かす人の行動なだけなのに。シンプルさが人と人の関係にまつわる心理を微に入り細を穿つ。心は常にスリリング。だからこそ逼迫が愛を貫くことの難しさにつながっていく。現代でもまだなのだ。
社会の眼よりも家族の眼という痛みが映画を貫く。そして、なにより刻んできた人生が背中を刺すのだ。
『ローザ・ルクセンブルグ』や『ハンナ・アーレント』のバルバラ・スコヴァが映画を牽引する。マルティーヌ・シュヴァリエのいるいる感。レア・ドリュッケールが締める。
監督と共同脚本のフィリッポ・メネゲッティは今作が長編デビュー。イタリアの新鋭というから恐れ入る。フランスは隣だけど。ローマに行きたいって話ではあるけどね。
ほとんどを占めるアパルトマンの美術がいいのよね。今の邦画界では逆立ちしても届かない美的センスが目を潤わせる。
世俗より家族こそ気流が横たわる。
不穏をはらむ冒頭がとてもよく、演劇的であるこの物語を映画へと誘導する。
これぞ、欧州映画の伝統の幻想。
定番だが、映画的なぐっと胸にくる終盤、ああ、映画を見たなぁと抉られる。
邦題も繊細。これ、『ふたりの部屋、ふたつの暮らし』じゃまるで変わってしまうのよ。
この刹那と永遠よ。老いの奏でる悲しみと生きるよろめく喜びと人生の機微と厳しさよ。
あなたが私を見てくれる見つけてくれるだけで温かい。
扉の取っ手に手をかけて回せることがどれだけ嬉しいか。
レコードには針が、手には手が添えられる房作。
おまけ。
原題は、『DEUX』。
『2』。
ところが、「a deux」で「二人(だけ)の」や「二人(だけ)で」の意味になる。
深読みすれば、内容的に、「a」がないことを想像させるよね。
フランス語の「2(ドゥー)」って、英語の「DO」にも通じる響きよね。
英語題は、『TWO OF US』。
『二人組』、『二人きり』、『二人で』。
ビートルズの有名曲がありますね。
2019年の作品。
製作国:フランス / ルクセンブルク / ベルギー
上映時間:95分
映倫:G
配給:ミモザフィルムズ