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“こうのとり”大気圏再突入へ! 9月29日に国際宇宙ステーションから分離

2015年09月21日 | 宇宙 space
JAXAの無人補給機“こうのとり”5号機が、
9月29日未明に国際宇宙ステーションから分離し、
大気圏への再突入を9月30日早朝に実施するそうです。

“こうのとり”5号機が打ち上げられたのは8月19日。

24日の国際宇宙ステーション到着後には、
搭載されていた補給物資は取り出され、
国際宇宙ステーションへの補給が行われています。

また、その一方で国際宇宙ステーションで発生したゴミや、
不要になった実験機器などが積み込まれています。

大気圏への再突入

JAXAによると、
まず9月28日0時15分ごろに“こうのとり”5号機のハッチが閉められ、
続いて20時10分ごろに固定金具が解除。

これをもって「取り外し完了」となり、
国際宇宙ステーションのロボットアームによってステーションから分離され、
29日0時20分ごろに放出されることになります。

その後は、国際宇宙ステーションから徐々に離れるように単独で飛行し、
9月29日23時4分、30日0時35分、30日5時4分ごろの3回に分けて、
軌道離脱のためのエンジン噴射を実施。

そして、9月30日5時31分ごろに地球の大気圏に再突入することになります。

再突入した“こうのとり”は、搭載しているゴミなどとともに、
再突入時の熱や衝撃によって破壊され、燃え尽きる予定になっています。

また万が一、燃え残った部品が発生しても、
太平洋上の人家のないことが確認されている地域に落下させることから、
地上への影響は出ない見込みなんですねー


無人補給船“こうのとり(H-II Transfer Vehicle:HTV)”

国際宇宙ステーションへ物資を運ぶ無人補給船
“こうのとり(H-II Transfer Vehicle:HTV)”は、
日本が開発・運用し、水や食料品、生活用品、
そして実験機器やステーションの予備部品などの物資を、
輸送することを目的にています。

打ち上げ時の質量は約16.5トンで、
最大で約6トンの物資を搭載することができるんですねー
これは他の補給船と比べ最大の積載量になります。

今回の5号機には合計で5.5トンの物資が搭載されていて、
そのおよそ3分の1が飲料水や食料品、
もう3分の1がステーションで使われている部品の補給品、
そして残りの3分の1を実験機器が占めています。

“こうのとり”は、1気圧に保たれた“与圧部”と、
宇宙空間にさらけ出された“非与圧部”の2か所に、
異なる貨物の搭載区画を持っています。

与圧部には飲料水や食料品、日常品や実験パレットを、
非与圧部にはステーション船外に設置する部品や、
大型の実験機器や観測機器などを搭載することが出来るようになっています。


順調だった補給作業

“こうのとり”5号機は、H-IIBロケット5号機に搭載され、
2015年8月19日20時50分に、種子島宇宙センターから打ち上げられました。

ロケットは順調に飛行を続け、打ち上げから15分後に分離され、
予定通りの軌道に入っています。

その後、計4回の軌道修正を行いつつ国際宇宙ステーションに接近。

8月24日の19時29分に、
油井宇宙飛行士が操作するステーションのロボットアームによって、
キャプチャー(把持)されました。

そして、ロボットアームによって、
ステーションの“ハーモニー”モジュールまで運ばれ、
24日23時58分には16本のボルトによって接続され、
取り付け作業が完了しています。
“こうのとり”5号機が結合した国際宇宙ステーションの“ハーモニー”モジュール。

続いて“こうのとり”と“ハーモニー”との間の気圧が調整された後、
電力と通信を送るケーブルが接続され、25日2時28分に結合が完了。

19時24分にハッチが開かれ、宇宙飛行士が船内に入り、
補給物資の運び出し作業が行われました。

また25日の昼には、
船外の非与圧部に積まれていた暴露パレットの引き出し作業も、
行われています。


こちらの記事もどうぞ
  “こうのとり”を打ち上げたH-IIBロケット第2段機体が制御落下に成功
  順調すぎて予定を前倒し。“こうのとり”が国際宇宙ステーションに到着

ツインジェット星雲の輝きはカラフルな蝶の羽

2015年09月20日 | 宇宙 space
ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた“ツインジェット星雲”の画像が公開されました。

蝶を思わせる左右に広がったカラフルな構造の内部には、
中心星から吹き出した時速100万キロ以上ものジェットが存在しているようです。
ツインジェット星雲“PN M2-9”


連星系が作り出す構造

“ツインジェット星雲”の愛称を持つ“PN M2-9”は、
へびつかい座の方向4200光年の彼方にある惑星状星雲です。

一生の最終段階にある恒星が外層のガスを放出し、
中心に残った星が、そのガスを照らして輝くのが惑星状星雲です。

特にこの“ツインジェット星雲”は、
双極星雲という特徴的な構造をしているんですねー

通常、惑星状星雲の中心には1個の星が存在します。
でも双極星雲の場合は違っていて、星が2つ存在する連星系になります。

“ツインジェット星雲”の場合、
太陽質量の0.6~1倍程度の星と、1~1.4倍程度の星の連星で、
大きい方は、外層を宇宙空間へ放出して一生を終えつつある段階で、
小さい方は、さらにその先の段階となる白色矮星になっています。

惑星状星雲には、中心星から球殻状に広がる構造のものが多く見られます。

でも、蝶の羽のような“ツインジェット星雲”の特徴的な姿は、
連星のうち白色矮星が、もう一方の周りを動くことで出来たと考えられています。

ただ、すべての双極星雲が連星系から作られたものかどうかは、
分かっていないんですねー

羽の広がる速度から計算すると、
星雲が形成されたのは、ほんの1200年前のことのようです。

羽の中に、中心から水平方向に広がる静脈のような青い部分があります。

星雲の七色の輝きに比べると一見かすかなんですが、
実は時速100万キロ以上で流れる激しい双極ジェットで、
これも星雲中心の連星が生み出したものです。

さらに羽や双極ジェットだけでなく、
連星はその周囲に、太陽から冥王星軌道の15倍もの大きさを持つ円盤も、
作っているそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 天の川銀河中心の双極星雲、銀河面に沿って広がる謎

開発中の探査機ハリネズミロボとは?

2015年09月19日 | 宇宙 space
小惑星や彗星のような重力の小さな天体用の探査機…

NASAのジェット推進研究所(JPL)とスタンフォード大学、
そして、マサチューセッツ工科大学が、
ハリネズミのような立方体の探査機を共同で開発しているようです。

ハリネズミ(ヘッジホッグ)

重力が小さければ、モノは飛んだり跳ねたりし易くなります。

そんな天体のデコボコした地形を探査するには、
車輪の付いた機械よりも球状の方が適していたりします。

たとえば、車輪のある火星探査車はひっくり返ると働けなくなりますが、
このハリネズミ(ヘッジホッグ)と呼ばれるロボットは、
どんな体勢になっても稼働するんですねー

もっとも単純な動きは“その場回転”といい、
長距離を飛び跳ねながら移動でき、
目標が決まれば、1、2本の針(スパイク)を使うだけだそうです。

さらに低重力を実現する放物飛行試験では、
自らを天体から打ち上げる“トルネード”という技を披露したそうです。
この技は砂の穴にはまったときの脱出などに有効に働くことになります。

開発当初の基本コンセプトは、
内部にある弾み車を動かしたり止めたりして動かせる針のついた立方体。

針には温度計測用のセンサーなども入れられていて、
弾んだり転がったりするときは、本体の保護にも役立つんだとか…

ハリネズミロボの開発は2011年からスタートしていて、
いまは第2段階で、より自律的に動けるような機能を開発しているようです。


着陸機“MASCOT”

実は、“はやぶさ2”にも小型の着陸機“MASCOT”が搭載されているんですねー
“はやぶさ2”と着陸機“MASCOT”

“MASCOT”はドイツ航空宇宙センターが中心となり、
フランス国立宇宙研究センターとJAXAで共同開発された機体。

“MASCOT”は10キロほどの箱型の機体で、
“はやぶさ2”が目的地の“1999 JU3”に到着後、
分離して小惑星の表面に着陸。

内蔵している重りを動かすことで、
起き上がったり、ホップしたりして移動することができます。

カメラや熱センサー、磁力計、分光顕微鏡といった観測機器を搭載しているので、“1999 JU3”の表面を直接観測することも可能なんですねー

現在“チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星”で探査を行っている、
彗星探査機“ロゼッタ”にも、“フィラエ”という小型着陸機が搭載されていました。

“MASCOT”のチームには、
この“フィラエ”の開発に関わった人々が多く参加しています。

なので、この手のロボットに関して非常に高い技術を持っているようです。


こちらの記事もどうぞ
  打ち上げは今の冬に、小惑星探査機“はやぶさ2”が公開
  地球スイングバイへの準備完了! 小惑星探査機“はやぶさ2”
  彗星着陸機“フィラエ”のデータから16種の有機物を発見。

次の目標天体が決定! “ニューホライズンズ”はカイパーベルト天体“2014 MU69”へ

2015年09月18日 | 冥王星の探査
7月14日に冥王星への接近通過(フライバイ)を果たした、
NASAの探査機“ニューホライズンズ”。

次の探査目標天体は、
冥王星より、さらに約16億キロ外側を公転している、
カイパーベルト天体“2014 MU69”になるようです。
カイパーベルト天体とフライバイする“ニューホライズンズ”(イメージ図)。

“ニューホライズンズ”は当初から、冥王星系だけでなく、
他のカイパーベルト天体も探査するように計画された探査機でした。

なので追加の目標をフライバイするための燃料も残っていて、
電力系統も、あと数年は稼働するように設計されているんですねー


カイパーベルト天体“2014 MU69”

新たな目標として選ばれたカイパーベルト天体“2014 MU69”は、
2014年にハッブル宇宙望遠鏡で発見された天体。

大きさは約45キロと見積もられていて、
典型的な彗星より10倍以上大きく1000倍以上重い天体になります。

一方で冥王星と比べると0.5~1%の大きさで質量は1万分の1しかなく、
冥王星などを作る元になった天体と考えられているんですねー

冥王星探査で分かったように、
地球からの観測では決して得られない多くの情報が、
フライバイ探査で得られると期待されています。

地球から49億キロの距離を飛行中の“ニューホライズンズ”の状態は良好で、
冥王星系に関する膨大な画像やデータの送信を始めたばかり。

予算が無事に通れば、
来年には“2014 MU69”が正式なターゲットとして承認されることになります。

それに先駆けて、今年の10月後半と11月初旬には軌道修正が行われるれ、
2019年1月1日には“2014 MU69”に到着するそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 【冥王星探査】フライバイ(接近通過)を振り返ってみると

天文衛星“あかり”は“はやぶさ2”の目的地を8年前に撮影していた

2015年09月17日 | 宇宙 space
赤外線天文衛星“あかり”が撮影した、
小惑星“1999 JU3”の画像が公開されました。

“1999 JU3”は、
小惑星探査機“はやぶさ2”の目的地として知られる小惑星で、
この画像は2007年5月16日に撮影されたものなんですねー

“あかり”がとらえた小惑星“1999 JU3”。
左下には別の小惑星“2000 RY100”も写っている。


2007年の小惑星“1999 JU3”

約10分間の観測時間中に取得された多数の画像データの中から、
波長15マイクロメートルでの画像を2枚選び出して重ね合わせています。

約7分の間に小惑星が空を移動していく様子が、
写っているんですねー

このとき“1999 JU3”は、
やぎ座の方向にあり、可視光での明るさは約22等級。

地球からの距離は約0.99天文単位、
太陽からの距離は約1.4天文単位だったそうです。

また画像には、
偶然にも別の小惑星(67535)2000 RY100も写っていたそうです。

JAXAによると、このような赤外線のデータと、
可視光線による地上観測のデータを組み合わせることで、
小惑星の大きさや表面の性質を推定することができるそうです。

これは、小惑星の素性を明らかにするだけでなく、
探査計画にも重要な情報になります。


日本初の赤外線天文衛星

“あかり”は日本初の赤外線天文衛星で、
2006年2月22日にM-Vロケットによって打ち上げられました。

赤外線専用の望遠鏡と2種類の観測装置を搭載し、
全天にわたって赤外線源を観測。

目標寿命3年を超えて運用され、
2011年11月24日に停波され運用を終えています。

“あかり”は、
約130万天体に及ぶ“赤外線天体カタログ”を作成するなど、
赤外線天文学に関する多くの成果をあげているんですねー

得られた観測データは、世界の研究者に広く利用されています。

あと、“SPICA”という“あかり”の後継機が、
2020年代の後半に打ち上げを目指し、
現在、日本と欧州との共同で検討が進められています。


“はやぶさ2”の目的地“1999 JU3”

“はやぶさ2”は小惑星“1999 JU3”を目指して、
2014年12月3日に打ち上げられました。

現在まで、太陽を周回する軌道を順調に航行していて、
今年の12月3日に、地球スイングバイに挑むことになります。

地球スイングバイとは、
地球の公転速度を利用して探査機の航行速度を上げ、
地球の重力を利用して軌道の変更を行う航法テクニックのことです。

これにより、速度を上げつつ軌道も変え、
2018年の6月か7月ごろに、目的地の小惑星“1999 JU3”に到着。

約1年半にわたって探査活動を行い、2019年11~12月ごろに小惑星を出発し、
2020年の11~12月ごろに地球に帰還する予定になっています。


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 天文衛星“あかり”がとらえた全天画像
 “すばる望遠鏡”で撮影された“はやぶさ2”の目的地