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なぜ土星の環は、Aリングだけ高密度で若いのか?

2015年09月23日 | 土星の探査
「土星のAリングは他の環よりも密度が高く若い」可能性があることが、
探査機“カッシーニ”による土星の環の温度変化データとモデル計算の比較から、
示されました。


土星の環の消失

土星は約29年で公転していて、
その半分にあたる約15年ごとに、赤道の真上から太陽が照らします。

地球での「春分、秋分」にあたるこのタイミングでは、
土星の環の真横から太陽の光が当たることになります。

なので見かけ上、土星の環が消失したように見えるんですねー

また、この前後の数日間には、
環の中に見慣れない影や、波立ったような構造が現れ、
環の温度が下がります。
“カッシーニ”がとらえた2009年の春分時の土星



なぜAリングの温度は下がらないのか

NASAのジェット推進研究所の研究チームは、
土星が春分を迎えた2009年8月ごろに、探査機“カッシーニ”が取得したデータを調査。

コンピュータでモデル計算した温度データと比較しています。

すると、環の大部分では温度の下がる様子がモデルと一致しました。

でも、明るい環のうちで一番外側にあるAリングの温度だけは、
モデル計算よりも高いことが分かるんですねー

さらに詳しく調べたところ、
Aリングを構成する粒子の大半が1メートルくらいの大きさで、
成分のほとんどが氷であると考えれば、
観測されたような温度に最もよく合うことが分かってきます。

粒子が一部分に集まっている原因として考えられるのは、
過去数億年以内に、衛星が巨大天体の衝突で破壊されたという可能性。

残骸が環全体に均等に拡散するほど、時間が経っていないということです。

あるいは、複数の小衛星が環の内部に移動し、
氷の粒を外から運んできたのかもしれません。

この小衛星たちが、土星や他の衛星の重力で破壊され、
氷塊がAリングに広がったという説です。

こうした説が正しければ、
Aリング(とくに温度上昇が顕著な中央部)の年齢は、
土星本体と同じくらい古いと考えられている他の部分よりも、
ずっと若いことになるんですねー


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