前の記事を整理すると、
【一括比例配分方式】
S_比例 = p*(Rt_1+Rt_2+Rt_3) - k_1*C - δ ・・・ ①
δ = (k - k_1)*C ただし |k-k_1|/k_1 >= 0.5 & |k-k_1|>= 0.05 ・・・②
【個別対応方式】
S_個別= p*(Rt_1+Rt_2+Rt_3) - Ct ・・・③
でした。
ここではδ=0となる場合、つまり②を満たさない場合を考えます。これは、第1年度の課税売上割合と通算課税売上割合に差があまりない場合です。
このとき、①と③より、消費税納税額の差Δは、
Δ = S_比例 - S_個別 = -k_1*C+Ct ・・・④
Δ > 0 となるのは、Ct > k_1*C より、Ct/C > k_1 = Rt_1/R_1 の時です。つまり、第1年度の課税売上割合よりも、課税仕入税額に占める課税取引の割合が高い場合には、個別対応方式の方が有利ということです。
これは、上記の①と③を比較することでも明らかです。つまり、個別方式では課税取引に対する課税仕入税額を差し引いているのに対して、一括比例方式ではそれを計算せずに、課税仕入税額の総額に対して課税売上割合を掛けているわけです。
平成28年の税制改正でδが導入される前に流行ったといわれる自販機スキームは年度末に不動産と自販機を購入し、売上の大半(もしくはすべて)を自販機によるものとすることで、Rt_1/R_1 を1に近づけます。課税仕入税額のほとんどは建物の課税取引が占めるため、Ct/C は小さくなります。(ちなみに、土地は不課税取引なのでCには寄与しません。) このため、Ct/C < Rt_1/R_1 となり、一括比例配分方式を選択することで、建物に対する消費税のかなりの額が還付されたわけです。
しかし、この場合、通算課税売上割合k は k_1 よりも小さくなり、②式の条件をみたすこととなります。そのため、税制改正で3年後に仕入税額調整δが行われてしまい、結局、還付された税金をまた納めることになってしまいます。
【計算の具体例(私の場合)】
具体的に数字を当てはめて試算してみます。
私の場合には、以下のようになります。(以下、単位はすべて万円)
- 課税売上(太陽光発電事業) : 太陽光発電所2基の売上について実績と今後2年間の見込みは以下の通り
Rt_1 = 529, Rt_2 = 550, Rt_3 = 550 (Rt_1は2016年実績、Rt_2およびRt_3 は見込み)
- 非課税売上(不動産賃貸業) : 2016年は新規不動産を3件取得したものの、それらの家賃収入は年途中から。そのため、今後2年間はそれら家賃収入が1月から見込めるため、今後2年間の売り上げ見込みは1年目の実績よりも大きな額となります。
Rnt_1 = 166, Rnt_2 = 365, Rnt_3 = 400 (Rnt_1は2016年実績、Rnt_2およびRnt_3 は見込み)
なお、R_x = Rt_x + Rnt_x (x=1,2,3) とする。
したがって、k_1 = Rt_1 / R_1 = 529/(529+166) = 0.76
k = (Rt_1+Rt_2+Rt_3)/(R_1+R_2+R_3) = (529+550+550)/(529+166+550+365+550+400) = 0.64
k_1 と k から式②の条件を満たさないことがわかります。
したがって、④のΔを計算して、どちらの方式がどれほど得かを評価します。
C (支払った消費税) = 234, Ct (太陽光発電設備購入時に支払った消費税) = 154 より、Δ = -k_1*C+Ct = -0.76*234+154=-23.8 となります。
なお、CとCtの差は主に不動産購入時の建物に対して支払った消費税です。
よって、比例配分方式の方がおよそ24万円ほど税金が安いことになります。
【計算の具体例(妻の場合)】
具体的に数字を当てはめて試算してみます。
妻の場合には、以下のようになります。(以下、単位はすべて万円)
- 課税売上(太陽光発電事業およびトランクルーム事業) : 太陽光発電所1基とトランクルームの売上について実績と今後2年間の見込みは以下の通り
Rt_1 = 750, Rt_2 = 750, Rt_3 = 750 (Rt_1は2016年実績、Rt_2およびRt_3 は見込み)
- 非課税売上(不動産賃貸業) : 戸建て1件の実績と今後2年間の見込みは以下の通り。2年目の年途中に1軒買い足すと仮定。
Rnt_1 = 80, Rnt_2 = 120, Rnt_3 = 160 (Rnt_1は2016年実績、Rnt_2およびRnt_3 は見込み)
なお、R_x = Rt_x + Rnt_x (x=1,2,3) とする。
したがって、k_1 = Rt_1 / R_1 = 750/(750+80) = 0.90
k = (Rt_1+Rt_2+Rt_3)/(R_1+R_2+R_3) = (750+750+750)/(750+80+750+120+750+160) = 0.68
k_1 と k から式②の条件を満たさないことがわかります。
したがって、④のΔを計算して、どちらの方式がどれほど得かを評価します。
C (支払った消費税) = 234, Ct (太陽光発電設備購入時に支払った消費税) = 154 より、Δ = -k_1*C+Ct = -0.76*234+154=-23.8 となります。
なお、CとCtの差は主に不動産購入時の建物に対して支払った消費税です。
よって、比例配分方式の方がおよそ24万円ほど税金が安いことになります。