負けてらんにぇ ! みんなでなんとかすっぺ !!

南相馬市から新潟県三条市へ集団避難→同市内の雇用促進宅に→2015.2~同市内の戸建に転居 妻と二人暮らし。

もちの数 ・・・ 齢の功

2013-10-03 20:35:39 | 原発震災避難者


散歩



齢の功

                筏井 嘉一

ものごとにうとくなりつつ動ぜざる

これをしも わが歳の功とす



若い時はちょっとしたことにおどろき

もうこれで自分の人生も終わりかと思い

自分ほど不幸なものは世の中にあるまいと悲しみ

自殺を決意することもあったが

どうやらこの年齢までこぎつけてみると

感受性がにぶってきたのか

どんなことにも心おどろくことなく

淡々としょしてゆくことができる。

一面図太くなったともいえようが

どうやらこれも餅をたくさんたべたおかげというものであろうか

・・・ と

この人はものに動じなくなった老年の自分を肯定しているが ・・・

表むきはそうであっても その底にはどうも

そういう自分をさびしく悲しくながめている一面が

・・・ 秘められているようだ。


歳の功とす ・・・ と大見得を切ったところに

かえって 自嘲のひびきがありそうに思える。

本音は

・・・ 若々しい感受性の退化してきたことがなさけないのではないか。



年とって肉体の衰えてくることは

肉体の法則ゆえやむをえないにしても

感受性だけは私たちのこころがけによって

・・・ いつまでも若々しくもつことができるのではないだろうか。







聴覚脱失 ・・・ 幼い日

2013-10-03 17:35:05 | 原発震災避難者


散歩



幼い日

               八木 重吉

幼い日は

水がものをいう日

木がそだてば

そだつひびきがきこえる日



子どもが一人で遊びながら しきりに何かしゃべっている。

あれはひとり言ではなくて 会話である。


会話の相手は もの言わぬ石であり 草であり 水である。

子どもにはわかるのだ。

水のことばが。 風のことばが。木のことばが。


子どもにとっては 一切が生きているのだ。

生きて動いているのだ。


全身で語っているのだ。

子どもは 人間のことばが未熟であるがために

かえってもの言わぬ世界の一切のものの

・・・ 語りかける声がきこえるのだ。


人間のことばを覚えるにつれて

・・・ 水や石と語ることを忘れてしまうのであろう。



コンクリートの壁がそびえるようになってから

私たちの耳に入るのは 騒音ばかりになってしまった。



自然は はるか彼方に後退して

人間の暴力におびえるような目つきで

・・・ じっと沈黙を守っている。