時事解説「ディストピア」

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なぜNATO諸国はシリア・ロシアを非難するのか

2015-10-06 23:23:43 | 中東

ロシアの空爆に対する欧米諸国の非難に対してシリア政府が抗議の声を上げた。


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シリアのオルマン・アズ-ゾウビ情報相は、国営テレビのインタビューの中で

「シリアにおけるロシアの空爆作戦は、米国主導の国際有志連合による空爆とは異なり、
 テロリストグループの頭目らの間に、まさに嵐のようなパニックを呼び起こした」と述べた。

ゾウビ情報相は、次のように指摘した。

「テログループや、彼らをかばっている連中は、
 テロリストらの拠点に対するロシアの空爆に大きな悲鳴を上げた。

 一方(ロシアの空爆開始とは違って)米国政府とその同盟国がIS(イスラム国)に
 対する空爆開始を発表した時には、テログループが逃げ出すことなど、一度もなかった。

 ISに対する米国主導の国際有志連合の行動は、効果がなく、成果をもたらさなかった。
 彼らの攻撃は、テロリスト殲滅のためではなく、
 できるだけ長く彼らをシリア領内に留まらせるためのものだった。


 ロシアによる最初の空爆後、マスコミは、
 子供がたくさん死んだとか、インフラが破壊されたとか、
 多くのプロパガンダ的ニュースを流し、ロシアに対する脅威をかき立てた。

 一部のマスコミは今でも、一般の人々の間に広がるように、
 正しくないウソの情報を再び利用し、ロシアに対する恐怖をかき立てようと試みている。」

続きを読む http://jp.sputniknews.com/middle_east/20151006/998457.html#ixzz3nnCpjVNQ

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先日も取り上げたが、
ロシアはシリアの要請に応じて出動し、ISISの本拠地をピンポイントで爆撃している。

もちろん、市民の犠牲がゼロであるとは思えないわけだが、
なぜロシア「だけ」こうまで非難されなければならないのだろうか?

その答えはISIS誕生の経緯を知るとハッキリと見えてくる。
ベトナムの軍事専門家、レ・テマウ氏の意見を紹介しよう。

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「CIAは、1980年代アフガニスタンでソ連軍部隊と戦わせるために、
 アルカイダを武装させ資金援助した。2001年9月11日の同時多発テロ後、
 米国は、アルカイダを第一の敵と呼び、テロリストに対する『十字軍』を始め、
 それを口実にアフガニスタンに入った。ワシントンが行った大きな地政学的ゲームの中で、
 アフガニスタンは重要な役割を演じた。その結果、15年後の現在、
 アフガニスタンは、世界における麻薬生産と密輸の中心地に変貌してしまった。」


現在、米国とアルカイダの関係は「IS」の例において繰り返されている。

西側の専門家らは
「イラク・レバントのイスラム国」及びその継承者である「IS(イスラム国)」は、
2003年の米国によるイラク侵攻の結果誕生し、その後、
西側諜報機関の物質的精神的さらには人的支援を得て、急速に力を蓄えて行ったと見ている。



2012年から2014年の間に「イラクとレバントのイスラム国」は、
所謂「シリアの在野勢力」に積極的に参加し、米国と同じ目的、アサド政権の打倒を追求した。

「イラクとレバントのイスラム国」がイラクの町を攻撃した時も、
米国は、ペルシャ湾の空母の上からそれを眺めるだけで、沈黙を守った。


しかし彼らがイスラム国家創設を宣言するや、
彼らはたちまち「世界の主要な脅威」に変わったのだった。



米国の支援を利用するあらゆる運動体は、こうした事から教訓を引き出さなければならない。

ベトナムにおいても、1970年代から80年代に、
当時の政権を打倒する目的で、米国が援助する山岳諸民族の運動体が作られた。

米国には、恒久的な同盟国などない。関心があるのは恒久的な利益だけなのだ。
それゆえ、いかなる同盟国も、結局は敵になりうる。

必要なのは独立した政策であり、米国に追従する事ではない。
どんな場合であっても、第三国に向けられた米国のゲームに乗ってはならないのだ。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/asia/20150701/523123.html#ixzz3nnPRkw5z
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何のことは無い、ISISは欧米が育てたテロリストだったのである。
欧米は未だに「シリアは滅ぶべきだ」という理念の下、動いている。

ISISが世界の敵になったのは、
シリアだけでなく自分たちにも刃が向けられたからにすぎない。

これでは、ソ連への当て馬としてヒトラーやムッソリーニを利用し、
東欧諸国の侵略を黙認した1930年代の帝国主義諸国と変わらないではないか。

(その後、自分たちが攻撃されるようになり、初めてナチスは今世紀最悪の政権になった。
 もちろん、数十年もアフリカや中東、アジアを支配した自分たちはナチスより
 健全な社会だったというわけだ。こういう自分勝手な歴史観こそ改めなければなるまい)


未だに欧米政府はシリアの消滅を最大目的とし、ISIS打倒は二の次にしている。
忘れてはならないのが、現在のシリア消滅作戦が、アラブの「春」にルーツがあることだ。

何人かの人間が指摘しているが、あの一連の事件は春どころか冬であった。
その結果として、内戦の激化、難民の大量発生、過激派の拡大、
そしてそれらを口実としたNATO諸国の移民締め出しと軍事干渉が起きた。

つまり、今回のISISの台頭と、それに対するシリア・ロシアの反撃に対する
欧米の反応はアラブの「浄化」作戦の一環として、打ち出されているわけである。

あくまで目的はアラブの浄化(シリアの消滅、親NATO政権の樹立)であり、
ISの駆逐ではない。ISの敗北によりアサド政権の権力が強化されては困るのである。
そういう意味では、欧米の反応は自然であり必然なものなのだ。


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