時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

派遣法改正案、衆院通過

2015-06-19 21:46:35 | 日本政治
NHKは完全に国営テレビになってしまったな……と感じてしまった。

いや、NHKがろくでもないメディアなのは結構言ってきたつもりだが、
それでも、まさか派遣法改正案を「正社員への道を後押しする」ものだと
説明するとは思っていなかった。凄すぎるぞ、NHK。



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(http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015061902000244.html?ref=rank)

働く人を交代させれば企業が派遣労働者を使い続けられる
労働者派遣法改正案は十九日午前、衆院厚生労働委員会で採決され、
自民、公明両党の賛成多数で可決された。

民主、維新、共産の三党は反対した。
与党は同日午後の衆院本会議に緊急上程して衆院通過させ、参院に送る方針。
政府・与党は今国会中に成立させ、九月一日施行を目指す。



◆専門職に「3年後辞めて」

十九日の衆院厚生労働委員会を傍聴した都内の派遣社員の女性(56)は
「三年後には辞めてもらうと言われている。一人一人の生活がかかっていることを、
 賛成した議員はどう考えているのか」と話し、泣き崩れた。


この女性は専門業務で十五年同じ職場で働いているが、改正案では、
現在は派遣期間制限がない専門業務の人も、同じ職場で最長三年しか働けなくなる。




傍聴席には法案に反対の派遣労働者や弁護士、労働組合関係者らが詰め掛け、
民主、共産両党の反対討論の後、改正案が賛成多数で可決されると
「派遣労働者のためになる法案ではない」と口々に話した。


「雇用が途切れないよう派遣先企業や他の企業で働けるようにする」。

安倍晋三首相は、改正案に盛り込んだ派遣労働者の雇用安定措置の
意義を繰り返し強調したが、野党からは「実効性がない」などと批判の声が上がった。

委員会室は時折、与野党議員の大声のやじに包まれた。

(http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015061902000244.html?ref=rank)
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今回の派遣規制改正案の何が問題かと言うと、
これは結局のところ、派遣社員を増やし正社員を減らすことになるということだ。



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実際に最長派遣期間の上限規制を撤廃したドイツの例を見れば明らかだろう。

『労働者派遣法の研究』(高橋賢司/中央経済社)によれば、
ドイツは2002年に最長派遣期間の上限規制を撤廃している。


こうしたドイツの労働市場の規制緩和の動きを日本は見習っているとされるが、
その先に広がった光景は派遣社員が急増し、
「賃金ダンピング」が横行する奴隷地獄だったという。


冒頭に紹介した「私は奴隷同然だと感じた」という
ホームレスになった女性の証言はドイツの労働者の声だ。


まずは、派遣社員の急増。上限規制撤廃直後の
2004年に38万5256人だった派遣社員は、2011年に87万2000人に倍増した。



正社員が次々と派遣社員に切り替えられたのだ。




代表的な事件がシュレッカー事件だ。

「薬のディスカウント・ショップ・シュレッカー社は、
 労働者を解雇し、多くの支社を閉鎖し、MENIARという派遣企業を通じて、
 新たに開業した支社へ同労働者を派遣させた。(略)

 当該労働者の賃金は以前シュレッカー社で雇用されていたときより低く定められ、
 賃金ダンピングだと同社は非難を受けた」(同書より)


シュレッカー社が閉鎖した約4000の支社(小規模店舗)で雇用されていた
約4300人は解雇され、新しい支社(大型店舗)で働くためには、
派遣企業MENIAR社との間での労働契約を締結することを迫られたのだ。


賃金はそれまでの約半分になり、
それまでにあったクリスマス手当も有給休暇手当もなくなった。



回転扉の一方の側からいったん外へ出し、
ぐるりと回る扉の他方の側から中に入れたならば(正社員ではなく派遣社員にすることで)、
それまでとは別の扱いができるようになる現象をドイツでは「回転ドア作用」と呼ぶそうだが、
このシュレッカー社の「回転ドア作用」と賃金ダンピングは大いに問題視された。




派遣社員にとっては無期限に続く低賃金という悪夢のような雇用環境だが、
ドイツでは幸いなことに、2011年に「回転ドア作用」を制限し、
労働者派遣は「一時的」なものとすると定義づけるなど再規制の道を選ぶことになる。

http://lite-ra.com/2015/05/post-1134_2.html
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こういうニュースを見るたびに、私は民主主義の怖さを知る。
真の独裁は民主主義の中から誕生する。


多数決原理に基づく以上、議席の過半数を超えさえすれば、
問答無用で、今回のような強行採決が取れる。


形式手には国家と独立した機関でも、
自発的に協力することで、事実上のプロパガンダ機関に成り下がってしまう。


デモクラシーは魔法の杖ではない。
デメリットを熟知し、上手に使わなければいけないものなのだ。


民主的に労働者を苦しめる法案が決まりそうになる今、
私たち(というか研究者や知識人)はデモクラシーの限界を強く意識するべきだろう。


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