時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

クリミア併合に関する国連無効決議について

2014-03-31 00:53:01 | リビア・ウクライナ・南米・中東
ロシアのクリミア併合に関して国連で無効決議が取られました。
賛成が100カ国、反対が11カ国、棄権が58カ国、欠席が24カ国でした。


忘れてもらっては困るのが、ロシアのクリミア併合は
クリミア自治共和国の国民投票で決定された
ということです。

この投票は外国からの監視団を呼んで行われた結果、
不正がなく行われたということが確認されました。


つまり、この併合はクリミア市民による民主政治の結果だったのです。

ここで具体的な内訳を見ていくと、反対国がロシア、キューバ、北朝鮮、
棄権がブラジルやインド、中国、欠席がイスラエルやイラン・・・
大雑把に言うと、先進国が賛成、発展途上国が反対・中立の立場を取っています。


こういった事実は、ウクライナ暫定政権が一体どの国家にとって
都合のよい政権なのかをはっきりさせてくれるものだと思います。


キューバや北朝鮮などの残忍な経済制裁と武力威嚇を受けている国が
無効決議に反対しているのは当然のことなのかもしれません。


キューバは、ユーゴスラビア、イラク、アフガニスタンなど、
他国の主権を脅かして国際法を破ってきた欧米諸国が
無効決議に賛成することは矛盾だと非難しています。

(筆者は、クリミア自治共和国という国家内にある小国家の意思を
 全く考慮しないという点で欧米の態度は矛盾どころか自然だと考えています)


中国は棄権こそしましたが、かなり厳しい意見を寄せています。
3月18日付の環球時報(中国共産党の中央委員会の機関紙、
『人民日報』の国際版)の社説を読んでみましょう。

-----環球時報社説(一部抜粋)-------------------------------------

クリミアで16日、争議の的となっている「住民投票」が実施された。

クリミアの「独立」はすでに阻止できず、ロシア政府がうなずきさえすれば、
ロシアへの「復帰」が欧州の新たな政治的現実になると
政治評論家の多くは確信している。


国連安保理は15日、米国の提出したクリミアの住民投票問題に関する決議案を強行採決した。
ロシアが拒否権を行使し、中国は棄権した。「棄権」こそが中国の明確な姿勢だ。

これは各国の主権と領土保全の尊重という
中国政府の一貫した立場を反映すると同時に、
クリミア問題が起きたのには原因があるとする
中国の見方を重ねて表明するものでもある。

クリミア問題は白黒をはっきりつけられるものではない。

ウクライナ情勢への西側の干渉によって、
この地域はすでにかき乱されており、ロシアの反発は早くから予想されていた。

重要なのは、西側とロシアがその対立を
エスカレートさせ続けるのではなく、いかにして解消するかだ。


西側は現在、脅しの声を高め続け、制裁の圧力すら加えようとしている。
だが米政府とその同盟国は、それでプーチン大統領を服従させるのは
不可能であることを、はっきりと理解すべきだ。

もし守るべき一線すらなしにロシアの戦略空間を圧迫し続けて、
ロシア政府がおとなしく辛抱すると考えているのなら、
ロシア政府との力比べは危険が生じ続ける事態に陥るだろう。


かつて西側を恐れさせたソ連は轟音を上げて解体し、
東欧のほぼ全てがたちまちNATOとEUになびき、
旧ソ連の共和国複数がNATOに加盟した。
この地政学的突然変異による圧力のほどんどをロシアが受けることとなった。

西側の過ちは、ロシア政府の身になって考えることなく、
貪欲で飽くことを知らず、他国の不幸を喜び、
他国の窮地につけ込む姿勢でロシア政府を一歩一歩と追い詰めていったことにある。


ウクライナで先月起きた事は、
容易にロシア人によって「色の革命」の1つと定義された。

西側メディアはプーチン大統領が座視することはないと早くから分析していた。
だが西側の頭のぼうっとした政治屋は
彼らの支持するウクライナの一派に自制するよう警告しなかった。


西側は今、国家の領土保全の重要性を思い出した。
だが彼らは以前、何をしたか?

1999年のコソボ紛争前、西側は主権国家である
ユーゴスラビア連邦共和国に対してコソボ・メトヒヤ自治州からの
軍の撤退を強制。NATOは国連の承認を得ずに
ユーゴスラビア連邦共和国に対して70日以上の空爆を実施した


コソボ独立は完全に爆撃によって実現したものだ。


西側はチェチェン分離運動も支持した。
欧米メディアはしばしばチベットを「国家」と見なして描く。
クリミアの独立運動の前に、実は西側は主権国家の領土保全と
いう国際規則の尊重に、数え切れないほどの落とし穴を掘ったのだ。


---------------------------------------------(引用終わり)

この社説は直接、国連の無効決議に反対したものではありませんが、
中国の姿勢は基本的にこのまま維持されているとみて間違いないでしょう。


なお、中国は自国はロシアのような思い切った政策は取るべきでない
と、同じく人民日報において語っています。また、以前紹介したように
ネオナチの台頭を指摘した上で、対話による解決を望んでいます。

日本では、中国=頭の固い狭量な独裁国家というイメージが
流布されていますが、これら提言からは冷静な現状分析と
先進諸国の独善的な行為に対する明確な反対意思を見ることができます。



キエフの議事堂を見守っているウクライナ市民の皆さんの図。

現在のウクライナ暫定政権が軍事や司法の機関にスヴォボダ党(自由党)
という名のネオナチ政党がいることは既に当サイトで書きましたが、
極右のなかにも派閥があるようで、先日、政権から外された極右政党
右部党(Right Sector)の重要人物が警察に殺害された報復に、
内務大臣の辞任を求めて議事堂を包囲しているようです。

http://rt.com/news/right-nationalists-storm-ukraine-701/
(写真も同ページより引用)



(http://rt.com/op-edge/ukraine-radical-right-eu-145/より引用)
ネオナチ同士の衝突がキエフで起きています。

現在のウクライナは、もはや親ロシアだけでなく、
同じ極右に対しても弾圧・報復が行われる非常に混乱した状態です。


支持するのは勝手ですが、こういった状況をきちんと民衆に
知らせた上で、納得できる意見をEU・アメリカはすべきでしょう。


今回の無効決議に対して、ウクライナ暫定政権は
「国際社会はクリミアで起こっていることを認めないという
 極めて重要なメッセージを送った」と歓迎したそうです。


これでは、暫定政権に対して
無言のエールを送ったと言われても弁解できないでしょう。




なお、今回の決議ではリビアが賛成票を投じました。


リビアは長らく反米国家でしたが、NATOの爆撃と、
彼らによって指導された反政府組織によって転覆されて以降、
欧米諸国にとって都合のよい政権に生まれ変わったと言って良いでしょう。


赤旗によると、リビアは「ロシアの軍事介入について、
国家主権と領土保全の原則を無視するものと指摘。
国境の変化は関係国の憲法や国内法の枠内で保障されなければならない」
と述べ、解決には対話が必要であると強調したそうです。



・・・ギャグで言っているんでしょうか?

現在の政権は、まさにリビアの国家主権と
領土保存の原則を無視した反政府軍と欧米軍
によって文字通り消滅されて生まれた
ものです。


しかも、NATOの空爆のきっかけとなった
カダフィが民衆を爆撃したというニュースは誤報でした。

その結果、病院や大学、鉄道、高速道路などの国民にとって
必要な施設が破壊されました。当然、そこには人がいたのです。

誤報から始まった空爆、その後の親米政権、相次ぐテロと政権側の虐殺。

これら状況はイラク戦争とかなり類似していますが、
イラクとリビアの決定的な違いは、サダム・フセインと違い、
カダフィは裁判にかけられることもなく殺されてしまった
ことです。

私はリビア紛争はイラク戦争より性質が悪い戦争だったと思います。

今のリビアは、かつての朝鮮総督府、満州国と同じ
かいらい政権だと考えても過言ではありません。

こういう国にしてしまったのは、どこの誰なのかを考えると、
それは空爆を行ったアメリカ、イギリス、フランスの3国です。

そして、これら3国が今回もロシアやクリミアに圧力をかけている
これはかなり重要な事実だと思います。


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