当サイトで幾度も指摘したように、現在のウクライナ暫定政権は、
司法や国防(つまり軍事)などの重要な機関にネオナチの構成員が就いている
異常事態であって、これに反発したドネツク州が独立を発表(ドネツク人民共和国)、
クリミアやオデッサ、ハリコフ、ルガンスクなども暫定政権に抗議をし、
それぞれ独立、あるいはロシアへの併合を選択しています。
この間、「テロリストを排除する」という名目のもと、
スラヴァンスクに軍を派遣、攻撃を開始するという
ヤコヌヴィッチ前大統領すらしなかった弾圧を始めています。
--------------------------------------------------------
スラヴャンスク自衛団より2日早朝、
ウクライナ軍による攻撃が開始されたとの報告が寄せられた。
自衛団広報担当がリア・ノーボスチに明かしたところによれば、
ウクライナ軍が複数の検問を同時に攻撃し始めた。
「ロシア24」テレビによれば、市上空にウクライナ軍のヘリが認められた。
間欠的にサイレンが鳴る。攻撃の開始を住民らに知らせているのである。
自衛団幹部によれば、地上部隊からも上空部隊からも銃砲が発せられている。
人的被害については報告されていない。
(参照 http://japanese.ruvr.ru/news/2014_05_02/271894706/)
---------------------------------------------------------
もちろん、こういう情報を日本の特派員も承知しているのですが、現政権は
粛清を行っているのではないのかという疑問が呈されることはありません。
たとえば、朝日新聞の記者とか・・・
---------------------------------------------------------
「敵意をあおるメディア」
テレビを見ると頭が痛い。基地局が占拠され、ロシアの放送に替わったせいだ。
戦闘服に覆面の珍奇な集団が「ナチに栄光を!」と唱える。
「ウクライナ政権支持の秘密のファシスト集団の映像を発見」というニュースだ。
ロシアのメディアは、親西欧路線のウクライナ政府はファシストの支援を受けると伝える。
だが、「インターネットで見つけた」とする映像の信頼度はどう調べたのだろう。
ロシアの介入に反対するデモ隊が襲われたときは「ファシストが西部から来て乱闘した」。
現場にいた私には、女性や子供連れの多い平和なデモ行進に突然、
親ロシア派の腕章を巻いた集団が襲いかかったとしか見えなかったが。
http://www.asahi.com/articles/ASG540HG0G53UHBI029.html
----------------------------------------------------------
頭が痛くなってくるのは、こちらのほうです。
ジュリー・ハイランド氏の論評を紹介します。
-----------------------------------------------------------
アメリカが支援したウクライナ・クーデターにおけるファシストの関与を否定したり、
彼らの役割を、取るに足りない枝葉末節であるかのように描き出したりする、
政治的に悪質なマスコミのプロパガンダ攻勢が進行中だ。
~中略~
現実は公然と反ユダヤ主義、親ナチの政党がアメリカとヨーロッパ帝国主義の
ご厚意により、ヨーロッパの首都で国家権力の主導権を1945年以来初めて握ったのだ。
選挙で選ばれたわけではないウクライナ政府は、
アメリカが指名したアルセニー・ヤツェニュークを首班とし、
ファシストのスヴォボダ党から少なくとも6人の大臣が入閣した。
~中略~
スヴォボダは、ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領を
打倒したマイダン抗議運動における主要政治勢力だった。
クーデターに突撃隊を提供した見返りに、彼らは重要な省庁の支配をまかされた。
スヴォボダの共同創設者アンドリー・パルビは、抗議行動では“治安司令官”として活動し、
準軍事組織ウクライナ民族アンサンブル・ウクライナ民族自己防衛(UNA-UNSO)を含む、
ファシストと極右民族主義者の同盟、右セクターによる攻撃を指揮した。
ヒトラーの武装親衛隊を模した制服を着た隊員達は、チェチェン、
グルジアやアフガニスタンで、ロシアと戦ったことを自慢している。
パルビーは、現在
国家安全保障・国防会議議長で、国防省と国軍を統括している。
右セクターの指導者ドミトロ・ヤロシが彼の副官だ。
副首相オレクサンドル・シチも、オレフ・マフニツキー(検事総長)、
セルヒー・クヴィト(文部相)、アンドリー・マフニュク(環境相)や
イホル・シュヴァイコ(農相)等と同様、スヴォボダ指導者の一人だ。
UNA-UNSOと関係していると報道されている他の人々として、
ドミトロ・ブラトフ(青年・スポーツ相)や、
政府の反腐敗委員会議長に任命された
“活動家”ジャーナリスト、テチヤーナ・チェルノヴォルがいる。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-daed.html
---------------------------------------------------------------
木を見て森を見ずとは、このことでしょう。
ウクライナまでわざわざ取材に行っておきながら、
政府の要職にネオナチがいて、しかも、彼らが今回のクーデター、
欧米風にいうならば、革命の中心人物だったという肝心の事実を書かずに、
やれ映像の信頼性が低いだの、私が見たのとは違うと細かい部分にケチをつける。
天下の朝日新聞が、こういう文章を
サイトに掲載しても良いのでしょうか?
ところで、このリポートでは、デモ隊に乱入する親ロシア派のことが書かれていますが、
もしかすると、この記者はオデッサの虐殺を目撃していたのかもしれません。
-------------------------------------------------------------
2日夕方オデッサのクリコヴォ・ポーレ広場にある労働組合会館で起きた火災は、
2か月前にキエフで起きた出来事を彷彿とさせるこの日の騒乱の悲劇的幕切れとなった。
民族主義グループの戦闘員や地元のサッカーチーム「ウリトラス」のファン達が
「統一ウクライナ」を合言葉に組織した無許可の行進は、
その後、クリコヴォ・ポーレ広場にテントを張り少し前から
抗議行動をしていた連邦制支持者達との対立に姿を変えた。
そして新しいウクライナの「革命的伝統」に従って、
バットによる殴り合い、投石、火炎瓶投げが始まった。
警察は、双方を引き離そうと試みたが、
その行動は消極的で、断固としたものではなかった。
その結果、所謂「右派セクター」の民族主義過激派らは、
テント村に火をつけ始めたため、キエフの現政権の政策に同意しない
連邦化支持の活動家達は労働組合会館に逃げ込んだ。
しかし過激主義者らは、そこにも火を放った。
そのため、ある人は生きたまま焼かれ、
別の人は発生した黒煙に巻かれ一酸化炭素中毒で命を失った。
炎から逃れようと、人々は窓から外に飛び降りた。
目撃者によれば、消防隊がようやく到着したのは、
火が出てから30分も経ってからの事だった。
(http://japanese.ruvr.ru/2014_05_03/271950269/)
--------------------------------------------------------
行進の最中に武装した親ロシア派が乱入したとの情報もありますから、
もしかすると、このことを言っているのかもしれません。
しかし、その後に何が起きたのかといいますと、
建物から脱出しようとした人間に殴打し、病院送りにしているわけです。
(行進者・乱入者、双方が重火器を所持していたとの情報がある)
(http://jp.rbth.com/politics/2014/05/08/48219.html)
これもまた、「木を見て森を見ず」であり、
先にどちらがやったかにこだわって、その後に起きた
建物に閉じ込めて焼き殺す(逃げてきた人間は殴り殺す)という
この事件で最も重点的に扱うべき内容に触れもしません。
特派員が何を思っているかは知りませんが、
この文章は結果的に現地での行き過ぎた民族主義を無視し、
ロシアを悪漢に仕立て上げる欧米の戦略に乗っかったものになっています。
これは、殺す側にとっては都合がよい報告だが、
殺された側にとってはたまったものじゃない。
テントを焼き払い、
建物に親ロシア派を追い込む
平和的デモ行進者の図。
朝日新聞が反共左翼であることは重々承知しているつもりでしたが、
それにしたって、この報道はありえないでしょう。
得てして、内戦とはどちらに非があるのか、はっきりしないものですが、
少なくともハッキリしていることは確かに伝える義務があるはずです。
朝日新聞の記者は、余所のメディアを小馬鹿にする暇があるならば、
自身の隔たった報道を猛省するべきです。
追記・
このオデッサの虐殺事件、朝日新聞は、「火災が起きた」と報じていました。
ちなみに、TBSニュースでは、ちゃんと放火したと報道しています。
書いた記者は、本記事で批判した方でした。喜田尚さんですか…覚えておきましょう。