時事解説「ディストピア」

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トランプとヒラリー、どちらがマシか

2016-06-14 23:30:00 | 欧米


ドナルド・トランプとヒラリー・クリントン。
次の大統領選はこの二人の熾烈な争いになるのはほぼ確実だろう。


日本のメディアはトランプを執拗に攻撃する割にはヒラリーに対しては随分と甘い。

前に説明した通り、彼女はオバマ政権において軍事問題に携わっており、
特にリビア侵略においてはカダフィ抹殺に関与しているのだが。


そればかりでなく、テロ支援国家サウジアラビアから巨額の献金を受けていたり、
スポンサーが国内の軍需産業だったり、率直に言えば彼女は戦争屋以外の何者でもない。

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〈World Opinion〉両米大統領候補の本質的な違い/ロシア・トゥデイ


介入主義VS孤立主義

ロシア・トゥデイ紙は米大統領候補である共和党のトランプと民主党のクリントンの本質的な違いについて
分析したジャーナリストのラニア・ハレクとのインタビューを掲載した。以下は要旨。



トランプが選挙戦で終始一貫して言っているのは、
米国の海外介入には反対だということ。



それは現在の米国の外交政策と比べれば多くの点で孤立主義的な考え方だ。
一方で彼は中国やロシアなどの国々との外交関係改善を目指している。

イランに対しても同じことを言っていた。要するに彼がしようとしているのは、
現在米国の外交政策を支配しているネオコンのやり方と、持論である孤立主義とのバランスをとることだ。


トランプは確かにひどい扇動家、人種主義者でとんでもないことを言い、頑迷固陋なので実に奇妙だ。
彼は政治を行ったことがなく比較すべき実績がないが、その発言や演説を聴く限りでは、
現在のワシントンDCにおける超党派合意より遥かに非好戦的な外交政策だ。


それに比べてクリントンは遥かに好戦的であり、多くの点でネオコンだ。

彼女は政権転覆に大いに関心を持っていて、それをあからさまに発言している。

実際、彼女はリビア攻撃に関与したが、トランプが指摘したようにそれは悲惨な結果を生んだ。
彼女はホンジュラス政権打倒にも参加したが、これも同国に大混乱をもたらした。
クリントンはイラク戦争のような外交政策の大失策の継続に関心を持っている。

トランプは外交政策の最優先課題は安定と平和だと言う。

外部世界、海外とくに中東や中米の人々にとって、
この2人の発言を比較すれば
トランプの方がましな候補者であることに疑いの余地はない。


だが現実的には、トランプは人種差別主義や問題の多い発言、
そして彼の国内政策などから米大統領になれる可能性はほとんどないだろう。


共和党内にはトランプに反対している人が多いが、
それは彼の人種差別主義ゆえにではなく、彼らが好むネオコン・タカ派路線とそりが合わないからだ。

リベラル派はもちろん、そういう連中はヒラリーに投票するので、
両者の対決となればクリントンが時期大統領になる可能性が高いと思われる。


結果はどうであれ、トランプはヒラリーにはっきり言える。
例えば、「あなたはイラク戦争に賛成したが、私は反対だった。
     リビアであなたがしたことを考えなさい。私は反対でしたよ。
     アメリカが介入する至る所にISISが出現するのです
」などと突っ込めば、
二人の議論は興味深いものになるだろう。



オバマ大統領とヒラリー・クリントン国務長官の下での外交政策は「全くの大失敗」だった
というトランプの発言はやや誇張だと思うが、いいところを突いている。

彼はある種、風変わりな候補者だが
その見解は非常に実際的で、現実主義派の外交政策を目指している。

オバマはリビアの政権を打倒しようとして介入し、
イラクとシリアでも違法な無人機戦争をしている。

その点に関するトランプのオバマ批判は
誇張はあっても概ね正しい。


トランプは自分の政権の下ではISISはたちまち消えると言っているが、
ISISから都市を奪い返しても、連中は身を隠し、ゲリラ作戦を取るだろうからいささか楽観的過ぎる。


しかし、軍事力だけを行使するのではなく、哲学が必要だというのは的を得ている。
イスラム主義者集団の多くは現地の権益を握っているが、
米国の介入によってそれが国際的権益に変わっている。連中に志願兵が加わり戦闘で金を得るのである。
トランプが主張するように、米国が関与をやめればテロ問題も緩和されるだろう。

トランプがロシアと中国との関係を改善するというのはよい考え方だ。

http://chosonsinbo.com/jp/2016/06/sinbo-j_160613-2/
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日韓からの米軍撤退を提案したトランプと更なる日米韓三国軍事同盟の強化を図るヒラリー。
どちらの姿勢がアジアの平和に貢献できるかは火を見るよりも明らかだ。


トランプの米軍撤退発言を聞いたとき、私は素直に喜ばしいことだと思ったが、
ほとんどのメディアや学者は「日本の核武装も否定しない」という部分だけを取り上げ、
実にけしからん男だと酷評した。核はNoだが軍拡はYesというわけのわからぬリアクションだ。


トランプがあの場で発言したのは「自分の国は自分で守ってくれ」というもので、
日本は核武装せよとか韓国は核武装しなければならないと言ったわけではない。


アメリカは他国を守るほど余裕がないので、自分たちで何とかしてほしい。
これがトランプの意見の本筋であり、他国の核武装を主張したわけではない。


ところが、オバマ政権下でせっせと日米同盟の強化に努めてきた日本においては
「トランプは核武装を求めてきた。恐ろしい男だ」という評価が当たり前のように吹聴される。

「核を持っても良い」が「核を持つべきだ」と言ったかのように話される。これは実に奇妙なことだ。


もちろん、トランプは博愛主義者ではないし、平和主義者でもない。
特にムスリムに対しては典型的なレイシストとしての顔を覗かせているが、
日本のほとんどのメディアや知識人の見解はあまりにも図式的ではないだろうか。


悪としてのトランプ、善としてのヒラリーという二項対立で説明するのは確かにわかりやすい。
実に池上彰的な明快な解説だ。だが、それは現実をかなり無視したものであり、
結局、読み手側、聴き手側の判断を鈍らせているように感じるのである。

(ちなみに池上彰はヒラリーのヨイショ本をわざわざ翻訳し、解説文を書いている。
 もちろん、この解説もヒラリーを褒めたたえるバカみたいな内容である)