時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

アベノミクス失敗の中、参院選へ。松尾匡先生は今何を思っているのだろう?

2016-04-17 00:00:12 | アベノミクス批判
ずいぶん前から、アベノミクスが失敗したという評価をよく聞くようになった。

異次元緩和は失敗だった。クルーグマンの『Rethinking Japan』を読む=吉田繁治

共産党をはじめ、いわゆる左翼は、開始直後から、
この金融政策が破たんすることを予言していた
わけだが、
インフレターゲット理論の主唱者が失敗を認めたのは、ある意味衝撃だった。


クルーグマン氏に限らず、海外ではアベノミクスは駄目だったという意見がメジャーである。


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日本のマスコミでは
「アベノミクスで景気が良くなってきた」という安倍首相のウソがいまだに通用しているが、
海外メディアでは、完全に「アベノミクスは失敗した」という認識が一般的だ。


たとえば、
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「アベノミクス、今こそ再考の時」と題した社説を掲げ、

 「アベノミクスの『3本の矢』は、財政出動と金融緩和で始まった。
  その結果、日本の公的債務残高は年末までに対国内総生産(GDP)比250%に達する勢いだ。 
  日銀は年間約80兆円規模の国債購入を実施しており、
  これは米連邦準備制度理事会(FRB)以上に急進的な量的緩和だ。
  それでも、銀行各行は融資を増やしておらず、デフレは続いている」

 「日本経済の停滞に終止符を打つという首相の公約は達成できておらず、
  今こそ抜本的に再考しなければならない」

と勧告している(11月17日付)。


また、国際ニュース通信社ロイターはデンマークの投資銀行で
デリバティブ取引の世界的大手・サクソバンクのCIO(最高運用責任者)にして
主任エコノミストであるスティーン・ヤコブセンのインタビューを配信したが、


アベノミクスは失敗に終わったと思う。
 新・第3の矢は、もはや矢ではない。構造改革はどこへ行ったのか


「日本にはモーニング・コールが必要だ。長い眠りから呼び覚まされなければならない」


などと断言している(11月18日付)。


実際に数字に見ても、「アベノミクスは失敗した」ことは明らかだ。

内閣府が昨年11月16日発表した6~9月期GDP速報値では年率換算0.7%のマイナスで、
4~6月期の同0.7%マイナスに続いて2四半期連続のマイナスに陥ったことが明らかになったのだ。

2四半期連続のマイナスは欧州など海外では「景気後退期」とみなされる。
さきほど紹介した海外メディアの「アベノミクスは失敗した」報道は、これを受けて行われたものだ。

しかし、日本は景気循環について内閣府が認定するために、
「景気の足踏みが長引いている」(日本経済新聞11月16日夕刊1面)
などという官製報道がまかりとおっている。

http://lite-ra.com/2016/01/post-1899_2.html
http://lite-ra.com/2016/01/post-1899_3.html
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今日のスプートニク紙では、タチヤナ・フロニ氏がアベノミクスの破たんを論じていた。
以下に引用してみよう。



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ブルームバーグ通信は、
世界の価格変動(ボラティリティ)の中心は、徐々に中国から日本へと移りつつあると指摘した。

経済学者や投資家達は、日本経済における大規模な危機を懸念している。


巨額の公的債務を抑制し、
「三本の矢」を推進力に
極めて低い経済成長率を引き上げようとの
安倍政権の4年に渡る試みは、どうやら失敗に終わったようだ。


この事は、アベノミクスの破綻を意味するものではないのだろうか?


スプートニク日本のタチヤナ・フロニ記者は、
ロシアの経済誌「エクスペルト」の分析専門家、セルゲイ・マヌコフ氏に意見を聞いた-


「元IMFの主任エコノミストで現在ワシントンのピーターソン国際経済研究所で働いている
 オリヴィエ・ブランチャード氏は、日本は今急速に、深刻な支払い能力危機に移行中だと見ている。

 またIMFや世界銀行といった金融組織やエコノミストの大部分も、
 日本経済に対するそうした否定的観測を口にしている。


 3年前、安倍首相は、日本を長く続く不況から脱却させると公約して政権の座に就いた。

 そして彼のアベノミクスといわれる経済改革が、
 実際、肯定的な効果を持っている事は、多くの人々に示された。
 日本の新たな奇跡とまで言われたものだ。しかし奇跡の期間は、大変短いものだった。

 今もますます多くのエコノミストが、外国人も日本人も含め、
 全体としてアベノミクスは、その破綻を示したと指摘するようになっている。


 アベノミクスの基礎に置かれたのは、円安だった。
 日本銀行は、絶えず数千億を日本経済につぎ込んだ。

 そうした強力な流動資産の流入は、東京の証券市場で時に、
 真の陶酔を呼び起こし、主要企業の株は相当上がり、86%という数字さえ記録した。

 当時は、日本の新たな奇跡だと語られたものだった。


 しかし、人工的に作られたこのブームは、長くは続かなかった。

 今の日本銀行の主な夢は、インフレ率を2%にまで上げる事だ。
 そうした目的を持って今年1月、日銀はマイナス金利を導入し、皆をひどく驚かせた。

 この決定は、日銀内部の分裂を呼び起こした。
 マイナス金利導入に際しての投票では、5対4と支持派はかろうじて勝利した。
 この政策は、商業銀行の収益性を疑わしいものとし、様々な国々の市場下落を招いた。

 日銀が主な目的とした円安の代わりに、円の対ドルレートは思いもかけず7%も上がってしまった。
 しかし日銀指導部は、マイナス金利は、インフレ率が期待する2%にまで
 上がるまで据え置くと主張している。その際日銀は、今後国債を買ってゆくと発表した。
 そのため80兆円という途方もない資金を費やす考えだ。つまり重大な措置を講じているという事だ。
 しかし、それによって必要な成果は得られない。


 客観的原因と並んで、純粋に日本的特殊性が、そこにはある。
 国民の高齢化、そして急速に進む労働人口の減少だ。

 人口動態学的予測によれば、日本の人口は、2060年までに8600万人にまで減る。
 つまり、今の人口の事実上三分の一が失われるという事だ。

 昨年第4四半期のGDPは、ほぼ1,5%減少した。国民の実質収入は、すでに4年連続で減っている
 それゆえ日本人が、お金を消費するのを急がず、
 まさかの時のためにお金を貯蓄している事は驚くに値しない。

 経済学者らも、そうした形で日本人自身が、自国経済の成長にブレーキをかけているのだと捉えている。
 一方円高によって、経営者は、より用心深くなり、労働者の給与を上げる事に強く抵抗している。

 しかし安倍首相が、自分の政策を変更する事はないだろう。
 今年、経営陣と労働組合の間の交渉で、彼は、経営陣に対し、労働者の賃金を上げ、
 そうする事で国内に漂うデフレの雰囲気を壊すよう根気よく求めた。給与が上がれば、消費の伸びを助ける。
 そうなれば、日本が抱える巨額の債務を助けることになるというわけだ。

 ちなみに日本の債務は、およそ10兆5千億ドルで、対GDP比250%に近づいている。
 世界の先進国の中で、これだけ高い債務を抱えた国は他にない。

 http://jp.sputniknews.com/japan/20160416/1976564.html
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素人の見解ではなく、多くの経済学者やエコノミスト、投資家が日本に見切りをつけている。
これは言い逃れのできない事実。知らないのは海外メディアに触れていない人間だけだろう。


フロニ氏の論説の中では、円安によって株価が上がったことをもって、
アベノミクスが当時多くの人間に絶賛されたということが書かれている。

確かにアベノミクスが事実上開始された2013年度は、
毎日のようにアベノミクス成功ニュースが流されていた。


だが、その一方で、景気の回復を実感できないと答えた人間が半数を超えていたのである。


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景気回復、7割実感せず=時事世論調査

安倍内閣の発足以降、景気の回復を実感するかどうかを時事通信の4月の世論調査で尋ねたところ、
「実感する」と答えた人は23.7%にとどまり、「実感 しない」とした68.6%を大きく下回った。

「アベノミクス」効果で株式市場などは活況を呈しているが、
国民全体では景気回復の実感が乏しいことが浮き彫りになった。(2013/04/13-14:22)

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アベノミクス効果「実感せず」8割超、消費増税「反対」7割超 各社世論調査


2014年10月の記事

アベノミクス道半ば 景気回復「実感せず」が78% 期待度低調

2015年1月の記事

景気回復実感ない人は「たまたま」 世論調査73%でも首相強弁

2016年2月の記事


同時代を生きた人間として告白するが、アベノミクスが効いていると言っていたのは
メディアや御用学者リフレ派の学者だけだった。


円安と株価の上昇で恩恵を受けたのは輸出を生業とする企業、いわゆる大企業だったが、
ほとんどの人間は、暮らしの悪化(もしくは無変化)は実感しても、その逆はなかった。


私は、身の回りの人物、彼らの知人や上司、両親の労働について
よく話を聞いていたから、アベノミクスなど毒でしかないと考えていた。


例えば、さる学生の上司は非正規から正規雇用になったはいいものの、
その代償として週休1日という明らかに法に触れるだろう労働を強いられるようになった。

正規職に就けず、非正規職としていわゆるワーキング・プアに陥っている若者も少なくない。
(特に高卒の青少年)


こういう状況下で物価が上がればどうなるか、まともな人間ならば想像がつくだろう。


ところが、世の中にはイマジネーションというものとは無縁の人種が存在するらしく、
一貫してアベノミクスに効果あり、景気は回復すると強く主張し続けている人間も少なくない。

彼らのほとんどは政府とつながりのある人間だったり、
あるいは政権の支持者であるわけだが、なんと左翼を自称している人間にもそういう輩が存在する。


それが今回の記事の副題で名指しされている松尾匡さんで、
彼は立命館大学の経済学教授という立場から、盛んにアベノミクスの正しさを主張し続けてきた。



2014年12月にはこういうことを書いている。

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【設備投資は増えないのか】
 設備投資が増えていないというご指摘がなされることもよく耳にします。
 日本政策投資銀行(旧長銀)が6月に発表した今年の「全国設備投資計画調査(大企業)」では、
「大企業(資本金10億円以上)の2014年度国内設備投資額は、
製造業(18.5%増)、非製造業(13.2%増)とも増加し、全産業で15.1%増と3年連続の増加となる」と、
大幅な増加が示されていました。
 (※原文でもわざわざ大文字で表示されている)
 
もっとも、消費税増税の悪影響で、実際にはかなり抑えられると思います。
この計画の勢いが復活するかどうかは、今後の景気対策次第だと思います。

今後何もたいした対策をとらなければ、消費税増税の悪影響を抜け出すことはなかなかできないと思います。
しかし、もし消費税増税がなければ、もともと景気拡大の勢いには底堅いものがあったと言えます。

今後、追加的な財政、金融の拡大政策がとられることで、
来年一年間かけて、それなりに好況が実感されるところまでいくのではないかと思います。

これは、「楽観」で言っているのではなくて、
改憲に向けた安倍スケジュールが着実に進むことを警告して言っているのだ
ということを間違えないようにお願いします。


それゆえ安易な「アベノミクス失敗」論はやめてほしいし、
そもそも何度も言いますが、「アベノミクス」という言葉を反対側の陣営が口にするのはやめて下さい。

2016年に好況の熱狂の中で、
安倍応援アイドルが「アベノミクス!アベノミクス!」と叫んで踊り回ったらどうする!


私をはめるときには、アイドルのハニトラでお願いします。

http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__141215.html
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踊り回ったらどうする!ヽ(`Д´#)ノゴルァッ!

と確かに松尾さんは仰っていたのだが、今となっては何とも言えないものを感じる。
ここまで堂々と書くからには、景気が良くなると本気で信じていたのではないだろうか?


上のページでは、アベノミクスの仕掛け人である浜田宏一氏の言い分を彼なりに
かみ砕いて説明している(意図的かどうかは知らないが)だけなので、
浜田のことを知っている人間には読む価値なしの文章なのだが、
浜田宏一と同じことを語っている人間が左翼を自称するということを思えば何とも凄まじい。

まぁ、もっとも、彼は左派系出版社の大月書店から新著を出したし、
護憲派の団体にも呼ばれたようだから、今の護憲派の連中のレベルもこの程度なのかもしれない。


ところで、上の文章が書かれた2014年12月15日の少し前、
共産党の機関紙である「しんぶん赤旗」では次のような記事が掲載された。


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GDP改定値 「増税不況」くっきり
エコノミストも “若い世代ほど重負担”



8日発表された7~9月期の国内総生産(GDP)改定値が
実質で2四半期連続のマイナスだったことは、消費税率の引き上げで
「増税不況」に陥った日本経済の実態を改めて示しました。

「所得の低い人や就職、結婚をして子育てしている若い世代の人たちほど負担が重い。
 物価が上がり実質賃金が抑えられている」


政府の経済政策に影響力を持つエコノミストも、消費税増税の影響をこう分析しています。


2012年からの1年間で働く貧困層(年収200万円以下のワーキングプア)は、30万人拡大。
貯蓄なし世帯の比率は、14年に30・4%と、3割を超えました。
消費税増税は、社会的弱者を直撃しています。


金融緩和による円安が物価を押し上げ、家計を圧迫しています。
日銀が追加緩和に踏み切って以降、わずか1カ月余りで10円以上円安が進行。
即席麺やアイスクリームなど身近な商品の値上げ発表が相次いでいます。


今回の改定値では、GDPの6割を占める個人消費の低迷に加え、設備投資の弱さも鮮明になりました。
設備投資が、速報値より改善するとの事前の見方に反して下方修正されたのは、
「小規模事業者や個人事業主の設備投資の動向が弱かったため」(内閣府)です。


町工場やクリーニング店など暮らしに密着した
個人経営の商店などの景気判断(総務省の個人企業経済調査)が、4月以降落ち込み続けていることが要因です。


今こそ、大企業応援の経済政策から、暮らし第一に転換することが求められます。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-12-09/2014120903_03_1.html
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つまり、松尾教授が古いデータをもとに「大幅な増加が示されていました」と
大文字で表記し、アベノミクスには効果があるかのように論じた数日前に、
共産党は最新のデータをもとに設備投資が減ったことを伝えていたのである。



経済学者の松尾氏は、当然、専門家なのだから、この国内生産改定値を知っていたはずだ。
にも関わらず、修正前のデータをあえて使ったのは、何か理由があるのだろうか?ないのだろうか?


なお、上の赤旗の記事ではワーキングプアの増加、特に若者の負担増を主張しているのだが、
松尾氏は同記事が書かれた2か月後に朝日新聞の取材に対し、こう答えている。


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 ――日本では自民党が金融緩和を進める一方、
   共産党が反対して、政治的立場と政策がねじれています。


なぜ左派が金融緩和に反対するのか。
 言ってしまえば、左派は雇用問題が一番深刻な若い世代の支持がだいぶ細っていて、
 古参の支持者に依存する現実がある。

 退職して年金生活者になっている支持者は金融緩和による物価上昇を恐れる気持ちが強い。
 それが一つの理由ではないか


http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20150217/1424131087
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どうも松尾氏は赤旗を読みもしないで、上のような評価を下したのではないだろうか?

アベノミクス(金融緩和)を支持しないのは、若者のことを考えていないからだ。
こういう印象操作が全国紙の紙面に載り、読者に伝わるその意味をよく考えてほしい。

これは、関連資料を読まずに南京事件を否定する意見広告を
ニューヨークタイムスに載せた極右の連中のそれとどこが違うのだろうか?



少なくとも、共産党の論調は勤労世帯の苦境を率直に代弁しているし、だからこそ、私も
同党の経済政策に関しては素直に評価している。前回、前々回で議席が増えたのもそれが一因だろう。


翻って、若者をないがしろにしている=金融緩和は若者にとって利益になるという印象を与えながら、
この数年間、浜田宏一や高橋洋一のような自民党や維新の党の協力者と同じ主張を取り続けた松尾氏。

信用を失うのはどちらなのかなと不思議な気持ちになる。


松尾氏の主張によれば、アベノミクスは正しくて景気が回復する可能性があるのに、
このまま共産党が失敗を主張し続けていれば、参院選で民心を失って後悔するぞということらしいが、
今思えば、実施当初から、その失敗を主張し続けてきたのは本当に良かったなと思わずにいられない。


松尾氏を見ると、私は慰安婦問題における朴裕河現象を連想する。


忘却のための「和解」

―『帝国の慰安婦』と日本の責任―



朴裕河の『帝国の慰安婦』は鈴木裕子氏や小野沢あかね氏、金富子氏をはじめとした専門家らには、
事実を改ざんし、日本軍の協力者という虚像を植え付けようとした悪書として低く評価されているのだが、
これが、90年代のアジア女性基金を肯定しようとする一部の左翼には非常に好評なのである。

元慰安婦らが朴氏を訴追し始めると、これを連中が非難するという逆転現象まで起きている。
その抗議文は、次のように書かれている。


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検察庁の起訴文は同書の韓国語版について「虚偽の事実」を記していると断じ、
その具体例を列挙していますが、それは朴氏の意図を虚心に理解しようとせず、
予断と誤解に基づいて下された判断だと考えざるを得ません。

何よりも、この本によって元慰安婦の方々の名誉が傷ついたとは思えず、
むしろ慰安婦の方々の哀しみの深さと複雑さが、
韓国民のみならず日本の読者にも伝わったと感じています。


http://www.huffingtonpost.jp/2015/11/26/park-yuha-charge-remonstrance_n_8659272.html
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慰安婦本人が訴えているのに、どうして名誉が傷ついていないと断言できるのだろうか?
実に不可思議である。

この声明の賛同人には大江健三郎や高橋源一郎がいる。
高橋氏は今をときめくSEALDSの後見人だ。


つまり、「戦争はんたーい!9条まもれー!」と叫んでいる連中のボスが
慰安婦問題では被害者が抗議しているのに「朴先生を攻撃するとは許せん!」と言っている
のである。


これは非常に問題があることで、すでに前田朗氏をはじめとして、
何人かの知識人は、これに反対する書誌や講演会を開いている。

大江たちは日本の右翼の歴史改ざん行為にも反対しているのだが、
実際には、非常に悪質な歴史改ざん本を擁護するという何がしたいのかわからない行為に走っている。


これをアベノミクスの言論状況に当てはめれば、松尾氏のそれはまさに経済版高橋源一郎であろう。
護憲を唱え左翼を自称する一方で、極めて政府にとって都合の良い意見を積極的に発言している。


そもそも、安保法が可決されたのも自民党の議席数が十分に確保されていたのが背景にある。
つまり、2013年7月の参院選の時に、議席数が今よりも少なければ強行採決は不可能だった。

この時期は安倍も靖国に参拝していなかったし、今よりは過激なことをしていなかった。
改憲よりもアベノミクスの成功を前面に押し出して選挙に臨んでいた。

さて、そうなると、ここで問題になるのは、
当時、アベノミクスは正しいのだと盛んに主張したことは、
結果的に自民党に投票することを支援したことにはならないのか
ということである。


実際、アベノミクスによる景気の向上を期待して投票した人間は少なくないだろう。

あの時、テレビをはじめとするメディアによる連日のアベノミクス成功神話の大合唱がなければ、
多少なりとも、結果は変わっていたのではないだろうか?

共産党は当時からアベノミクスは効かないと主張していた。

参院選直前の2013年7月1日に共産党は
「アベノミクスをとことんやり抜かれれば日本経済は破たんします。」と主張した。


で、実際に多くの経済学者、エコノミストらからアベノミクスは失敗したと現在、評価されている。

他方、当時からアベノミクスを支持し、未だに支持しているであろう人間がそれなりにいるのだが、
彼らは2013年7月の参院選において景気向上を期待する有権者を結果的にだましたのではないのか?


少なくとも、参院選において自民党の議席数が増えたこと、
それが2015年9月の安保法強行採決を可能にさせたと認め、責任を感じるべきではないのか?


もちろん、私は浜田らのような根っからの体制支持者に自省を求めているわけではない。

戦争に反対すると言いながら、戦争をさせるシステム作りに協力したことに対して
自称左翼の連中は自覚しているのか
ということが気になるだけ
である。


そういう自覚なしの反戦なら右翼にも出来ることであり、
そうしている間にも、前の記事で述べたように日本海軍は南シナ海で活動を始めている。


中途半端なNoほど心強いYesはない。

私たちがこれから持つべきは、徹底した反抗の意志であり、
右翼と妥協できるような態度は、早々に捨て去ってしまったほうが良いだろう(※)。


※ただし、この問題(日本左翼の隠れた右傾化)は一部左翼における現象というよりは、
 より深刻なもの、冷戦終結以降、一貫して主流左翼全体におきている現象だと言える。

 中国や北朝鮮、ロシア、イラン、イラク、シリアなどにおける態度はまさにそれだ。
 そのことは、日ごろからこのサイトで指摘し、問題視している。

 また、松尾氏が現在、どのような見解を抱いているのかについては私は知らない。
 生憎、彼のストーカーではないので、逐一発言をチェックしていない。
 
 もしかすると、今は違う意見を持っているのかもしれない。
 (それでも、過去の発言に対する反省は必要だと思うが……)

 そういう意味では彼だけを責めても仕様がない。
 
 なお、私が観察する限りでは過去にアベノミクスを支持していたなかで、
 現在、その政策の失敗を多少なりとも感じている人間は、消費税の増税や中国経済の減速を
 アベノミクス失敗の原因に仕立てようと躍起になっている印象を受ける。あくまで印象だが。

 そういう御仁には、
 そういった不確定要素に左右されるような脆弱な経済政策をなぜ支持したのだ
 と問い詰めたい。

 アベノミクスの反対論は多く出版されているが、
 金融緩和が景気回復の武器になるとは限らないということを指摘した本として、
 2003年に出版された『デフレとバランスシート 不況の経済学』がある。

 これはアメリカのニューヨーク連邦準備銀行でエコノミストとして活躍し、
 出版当時、野村総合研究所の経済研究部主席研究員、チーフエコノミストだった
 リチャード・クー氏が著したもので、小泉政権が実施した金融緩和政策を批判したものだ。

 つまり、金融緩和が効かないということは10年以上前から指摘されたことだったのである。
 インフレ・ターゲット論の成功を疑問視するこういう声を無視してアベノミクスは敢行された。

 まさに、歴史は二度繰り返した。一度目は悲劇として。二度目は喜劇として。