時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

北朝鮮はなぜ核を持とうとするのか

2016-04-01 00:36:27 | 北朝鮮
前回の記事では北朝鮮が核を保有する前からアメリカの先制攻撃の対象とされていたこと、
その先制攻撃には核兵器の使用も含まれていることに触れたのだが、つい最近、
この問題について北朝鮮の外相がロシアのメディアであるタス通信社の同様の質問、
つまり、なぜ北朝鮮が核を保有しようとするのかについて回答をしたので、以下に紹介したい。


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朝鮮外相 タス通信社編集局長の質問に回答

【平壌3月29日発朝鮮中央通信】

李洙墉外相は、朝鮮半島に生じた現情勢に対処するわれわれの立場に関連して
29日、ロシア・タス通信社編集局長が提起した質問に次のように答えた。


米国の極端な対朝鮮敵視政策と核脅威は、
朝鮮半島情勢の激化とわれわれの核抑止力強化を生じさせた根源である。

米国は、われわれが核を保有する久しい前から
われわれに核脅威をしつこく加えてきた
し、核先制攻撃を政策化し
それを実践に移すための核戦争演習を絶え間なく行ってきた。

米国は、過去の朝鮮戦争の時期にすでに、われわれに核攻撃を加えようと画策し、
早くも1950年代から南朝鮮に膨大な核兵器を搬入して
われわれを脅かし、恐喝した。


米国のブッシュ行政府は、わが共和国を「悪の枢軸」、
核先制攻撃の対象に指定し、このような政策は今も変わらず持続している。



オバマ行政府が2010年4月、
いわゆる核不使用の対象からわれわれを除いた事実と、
今も数多くの核攻撃装備を南朝鮮に送り込んで合同軍事演習を行いながら
われわれに対する先制攻撃を公言している
のが、それをはっきり実証している。


米国が、自国が保有したすべての戦略核打撃手段を朝鮮半島地域に総集中して
われわれを狙った核攻撃演習を行っているような深刻かつ現実的な核脅威を、
世界のどの国も、どの時期にも受けたことがない。

核でわれわれを脅かす米国に、核で立ち向かうのはあまりにも当然なことである。

米国があくまで核でわれわれを圧殺しようとしたため、
これに対処してわれわれは自主権と民族の生存権のために
不可避に核保有の道を選ぶことになったのである。



米国こそ、われわれが核保有へ進むようにした張本人であり、
過去数十年間、毎日のように強行されている米国の核脅威・恐喝は、
われわれを核保有国につくった基本要因であった。


世界唯一の核兵器使用国、最大の核保有国である
米国の恒常的な核脅威と戦争挑発策動に立ち向かうための唯一の方途は、
核戦力の強化による力のバランスを取ることだけである。



われわれには、米国が願ういかなる形態の戦争方式にもすべて対応できる強大な軍事力がある。
われわれは、弾道ロケットに装着できるように小型化、軽量化した核弾頭を実物で公開し、
大陸間弾道ロケットの大気圏再進入能力も見せた。

われわれは、米国の無分別な敵視策動と露骨な核脅威に対処して、
核戦力を中枢とする国家的防衛力をいっそう強化していくであろう。

今後、わが核戦力の発展速度は米国の行動いかんと
われわれを見る視覚の変化によって左右されるであろう。


今米国は、われわれの度重なる警告にもかかわらず、
南朝鮮全域でわが共和国に反対する歴代最大規模の「キー・リゾルブ」
「フォール・イーグル16」合同軍事演習をヒステリックに行っている。


数十万の膨大な兵力と各種の核戦略資産が総投入された今回の戦争演習は、
われわれに対する核先制攻撃はもちろん、最高首脳部と「体制転覆」を狙った
「斬首作戦」まで実行する実動的な戦争遂行方式で強行されている。


米国は、今回の合同軍事演習が北侵戦争の現実性を最終的に検討するものだということを
はばかることなく明らかにして、今まで表面上「定例的」「防御的」と正当化していた
欺まん的で破廉恥な看板さえ完全に投げ捨てた。


米国が、われわれを狙った各種の軍事的奇襲打撃をすべて想定した
実動訓練を行って先制打撃を既定事実化していることによって、
今にでも戦争が起こりかねないのが朝鮮半島の現情勢である。

われわれが目の前に迫ってきた米国の侵略脅威を
絶対に袖手傍観できないということは、あまりにも明白なことである。


われわれは、米国の核戦争狂気に対処してわが軍隊の軍事的対応方式を
先制攻撃的な方式にすべて転換し、断固たる核先制攻撃意志を明らかにした。

一言で言って、こんにちの朝鮮半島は核戦争か、平和かという岐路に立っている。
朝鮮半島に生じた極度に先鋭な現情勢は前例のないものであり、
これに対して貴国(ロシア)を含む全世界が大きな憂慮と不安を抱いて注視している。

朝鮮半島で日増しに深刻になっている緊張激化の悪循環を防ぎ、
戦争の危険を取り除いて平和と安全を保障するには、現れた現象だけ見るのではなく、
その根源を正しく見て根源治療のための対策から講じるべきであろう。


朝鮮半島と地域の平和と安定を願うすべての国は、
世界支配のための戦略的中心をアジア太平洋地域へ回し、
われわれを第1次的な攻撃目標にしている米国の策動に警戒心を持って対し、
それを防ぐための当然な努力を傾けるべきであろう。---

http://www.kcna.kp/kcna.user.article.retrieveNewsViewInfoList.kcmsf#this
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客観的に言って、北朝鮮はアメリカと韓国の軍事的挑発に対して
これ以上の挑発を行うのであれば、攻撃もありえると警告をしているのだが、
これも大国のメディア(ロシアや中国も含む)では威嚇脅しと表現されている。

他方で、アフリカや東欧、アジア、中東の小国では北朝鮮に同情的な声も多い。
北朝鮮が孤立しているように見えるのは、
周りを中国、ロシア、日本、アメリカと大国にぐるりと囲まれているからだと思われる。

北朝鮮は10年以上前から一貫して、平和条約の締結と
米韓合同軍事演習の中断を条件に自国の核開発を取りやめることを提言している。


北朝鮮の核開発を中断させるには、アメリカの北朝鮮に対する敵視政策を止めさせ、
北朝鮮がアメリカに攻撃されることがないという安心感を得させなければならない。

そのためにはロシアや中国なども有事には
北朝鮮に向かい、友軍となるということを約束しなければならないだろう。

少なくとも、北朝鮮の武装だけ解除して、
アメリカの兵器開発、特に核開発はそのままにさせるというのでは話を聞いてもらえるわけがない。

(北朝鮮のような経済的に影響力のない国は
 リビアやイラクのように外国に滅ぼされる危険が常に伴っていることを忘れてほしくない)

加えて、この10年以上、北朝鮮の提言に聞く耳を持たず挑発的な軍事演習を毎年実施し、
核開発とミサイル実験に勤しんでいたのはアメリカなのだが、
なぜかこの点は一切、無視され、お咎めを受けることがない。


日本では、核先制攻撃を含む軍事演習は「例年どおりのものだから問題ない」と言われてきた。
例えば、朝日新聞社の記者だった田岡俊次氏は合同軍事演習を見学しながらも、
全く問題がない、危険なものではないと断定している。


アメリカの言い分をそっくりそのまま伝えるしか能がないクズ記者しかこの国にはいないのだろうか?
思えば、記者クラブ制度など、事実上の御用メディアとしか機能していないこの国のマス・メディアが
海外ニュースに限って、政府の意向に逆らうような報道をするはずがない。問題はその他の人間だ。


この国には北朝鮮の専門家がいないのだろうかと不安に思う時がある。
仮にいるとすれば、普段どこで何をしているのだろうか?

ロシアや中国では、北朝鮮に対してフォローする人間とそうでない人間がいて、
彼らはどちらも等しく発言の機会を与えられている。アメリカでさえ著名な人物、
例えば、ノーム・チョムスキー氏やブルース・カミングス氏のように、
内政には否定的ながらも外交の面では北朝鮮の主張に賛意し、擁護的発言をする人物がいる。


北朝鮮に対して擁護する者も非難する者も共通見解として、
アメリカの帝国主義的な行為がそもそもの発端なのだという意識があるように感じる。
それは、ロシア政府や中国政府の発言からも伺える。

対して、日本では、ブログやツィッターのような個人が用いる極めて小さなメディアでしか
北朝鮮の発言や主張、それを取り巻く状況を踏まえた上で見解を述べることが出来ない。

発言の自由はあるが、それは口をパクパク動かしても逮捕されない程度でしかない。
そのような有っても無くてもさして変わらない自由なら、どこの国でも十分に保障されている。

北朝鮮が飢餓に向けて準備するよう住民に呼びかける?

2016-04-01 00:01:29 | 北朝鮮
先日、スプートニクに
「北朝鮮当局 飢餓に向けて準備するよう住民に呼びかける」という記事が掲載された。


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北朝鮮の住民は、新たな「苦難の行軍」に向けて準備しなければならない。
1990年代の北朝鮮における4年間の飢餓が、「苦難の行軍」と呼ばれていた。
「労働新聞」の社説の中で述べられている。

記事中では次のように述べられているー

「革命への道は遠く、険しい。我々は、再び草の根を食べなければならない苦難の行軍を
 行わなければならないかもしれない。もし我々が自分の命を捧げることになったとしても、
 私たちは我々の人生の最後まで、我々の金正恩リーダーに忠実であり続けなければならない。」

「苦難の行軍」という用語は、1993年に北朝鮮指導部が考えたもので、
 北朝鮮で4年にわたって続いた飢餓をあらわすために使われた。

複数の評価によると、この飢餓により24万人から350万人が死亡した。

http://jp.sputniknews.com/asia/20160330/1870684.html
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案の定、北朝鮮に否定的な見解がコメント欄に寄せられているが、
私はこの記事は今の北朝鮮報道の特徴がよく表れたとても良い記事だと思った。


次の英文記事を読んでみてほしい。


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N.K. warns of another 'Arduous March' amid tougher U.N. sanctions



SEOUL, March 28 (Yonhap) --3月18日ソウル(ヨンハプ通信)

North Korea warned its people that
 it is facing some tough times and the country may have to endure
   another "Arduous March" of economic hardship, state-controlled media said Monday.

北朝鮮は民衆に
「厳しい時代に直面し、国が新たな苦難の行進に耐えなければならないかもしれない」
と警鐘を鳴らした。国家統制下にあるメディアが月曜日に話した。


The article carried by the Rodong Sinmun,
an organ of the ruling Workers' Party of Korea (WPK),
said that

朝鮮労働者党の機関紙である労働新聞に書かれた記事には、

while the country may experience hardship,
its people must not waver in their allegiance to leader Kim Jong-un.

It also said that the road to revolution is long and difficult.

国が苦難を経験するかもしれないが、
国民はリーダーである金正恩への忠誠が緩いではならないと書かれている。

同紙は革命への道は遠く険しいとも書いている。


http://english.yonhapnews.co.kr/northkorea/
2016/03/28/0401000000AEN20160328007600315.html?eacc93f8
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実は上のスプートニクの記事は
この韓国のヨンハプ通信をもとに書かれた記事なのである



つまり、直接、労働新聞の記事を読んで書かれたものではない。
私が最初にスプートニクの記事を読んで思ったのは、
こんな社説、なかったぞ?というものだった。


実は労働新聞の社説は英語で公開されている。

正しくはKCNA(朝鮮中央通信)から転載されているのだが、
3月28日月曜日の記事に北朝鮮が国民に飢餓を強いるようなものは存在していなかった

代わりに掲載されていたのは、日本の安保法案を非難する記事である。


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Rodong Sinmun Slams Japanese Reactionaries' Security Legislation

労働新聞、日本の反動勢力の安保法を酷評する


Pyongyang, March 28 (KCNA) -- 3月28日、平壌、KCNA

The security legislation will reportedly take effect in Japan soon.

報道によれば、まもなく日本で安保法が施行される。

In this regard Abe blustered that
 the enforcement of the law would make a more positive contribution
  to the peace and stability of the region and the international community
    and it would be of "historic importance".

この面で安倍は
「同法の執行は地域・国際共同体の平和と安定に積極的に貢献するもので、
 それは歴史的重大事と言えるものだろう」とわめき散らした。

Rodong Sinmun Monday says in an article in this regard:

労働新聞はこの点について月曜の記事で以下のように語っている。

It is sophism of the Japanese reactionaries
 that the security legislation is certainly necessary for preserving "peace" and "security"
    in Japan and, furthermore, in other parts of the world.

日本の反動勢力が
「日本、さらには世界の他の部分における「平和」と「安全」を保障するために安保法は確かに必要だ」
というのは詭弁である。


The Japanese authorities are working hard to veil the security legislation
with such rhetoric as "peace" and "security", but they can not cover up its danger.

日本当局は懸命に安保法を「平和」や「安全」というレトリックを用いて
はぐらかそうとしているが、この法律が危険であることを覆い隠すことが出来ていない。



Explicitly speaking, the security legislation is a war law for overseas aggression.
はっきり言って、安保法は外国を侵略するための戦争法だ。


Why are they justifying the security legislation
despite the unanimous opposition of the public at home and abroad?

どうして日本政府は安保法を正当化するのだろう?国内外の公衆が一致した反対をしているのに。


Their ulterior intention is to launch reinvasion at any cost,
backed by the U.S. Their scenario has already entered the phase of its implementation.

連中の隠された意図は、いかなるコストを払おうとも
アメリカの支援を受けながら再び侵略に着手することにある。


日本政府のシナリオはすでに実行段階に突入した。



The Japanese reactionaries are rushing headlong into carrying out it,
seized with the daydream
that they can become the "leader" of the Orient through the enforcement of the war law.

日本の反動勢力は安保法を施行しようと性急に奔走し、
戦争法の施行をもってして東洋の指導者になることが出来るという夢想を抱いている。

Only pitfall of destruction awaits the running militarist chariot of Japan.

日本の軍国主義者たちのチャリオット(戦車)が走ったところで、待っているのは破滅のみだ。

http://www.kcna.co.jp/item/2016/201603/news28/20160328-13ee.html
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アメリカの手下になるかわりに、東洋の王として君臨する。


労働新聞の編集者、記者たちの言い分は言いえて妙だ。
こういう記事は完全に無視され、存在するのかわからない社説が取り上げられる。


北朝鮮報道の特徴として、

1・韓国経由 2・出典の未提示 

が挙げられる。特に国家情報院などの誤報ばかり流す機関からのネタが多い。

今回の記事も韓国の通信社であるヨンハプ通信が元ネタで、
同通信社の記事には、元となった記事のタイトルも全文もろくに紹介されていない。


全体の中から、都合のよい部分だけを切り取って作り上げた嘘記事の可能性が高いのである。


今に始まった話ではないが、韓国のメディアは
やったのかどうかもハッキリしないハッキングや地雷敷設を北朝鮮が行ったと決めつけ、
証拠が提示されていないのに、極右政党であるセヌリ党の主張をそのまま真実とみなして伝えている。


自民党の言い分をそのまま伝えて安保法のメリットを解説(笑)した池上彰とスタンスは同じ。
政府に反対しているポーズだけ見せていながら、その実、ただの御用メディアに成り下がっている。


最後に、3月28日に掲載された労働新聞の社説をもう一つ紹介したいと思う。

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Rodong Sinmun Terms U.S.-led "Nuclear Security Summit" Hypocritical One

労働新聞、アメリカ主導の「核安全サミット」を偽善的なものだと呼ぶ


Pyongyang, March 28 (KCNA) --

It was reported that the 4th "Nuclear Security Summit" would be held in the U.S. soon.
まもなくアメリカで第4回「核安全サミット」が開催されるだろうとの報告があった。

The Park Geun Hye group is taking this as a good chance
to stir up the atmosphere of confrontation with the DPRK.

朴槿恵一派は、これを北朝鮮に関する宇宙の衝突を挑発する好機とみなしている。

Rodong Sinmun on Monday observes in a commentary in this regard:

労働新聞はこの点について、月曜の論評の中で以下のように洞察した。

The U.S.-led "Nuclear Security Summit" is a mockery and hypocrisy
towards the public desirous of building a world without nuclear weapons.

アメリカ主導の「核安全サミット」は
核兵器がない世界を設けようとする人々の願いを笑いものにした偽善的なものだ。

If the nuclear issue is to be discussed,
the U.S. and the south Korean warmongers should be called into question and censured.

もし核問題が議論されるのであれば、
戦争屋であるアメリカと韓国が清廉潔白を表明し、咎めを受けるべきだ。


But the reality is quite contrary to this.
だが、現実は全くもってこれと正反対である。


The "Nuclear Security Summit" will certainly turn out to be a sinister confab
for hurting and slandering the DPRK which had access to deterrent for self-defence
to cope with the ceaseless nuclear threat of the U.S. imperialists.

「核安全サミット」はアメリカ帝国主義の絶え間ない核の脅威に対処して
 自衛のための抑止力に着手する北朝鮮を傷つけ、中傷するための悪意ある談話だとはっきりとわかる。

Its objective is, indeed, against the will of humankind.
Such warmongers as Obama and Park would be main players of the "summit." It,

therefore, will be nothing but a fig-leaf for covering up the arbitrary and high-handed nuclear activities of the U.S. and the moves of the pro-U.S. lackeys for a nuclear war against the DPRK. That's why the "summit" will only leave the most shameful blot in the history of international conferences.
実際、その目的は人類の意思に反するものである。
オバマやパクのような戦争屋が「サミット」の中心人物になっている。

それゆえ、サミットはアメリカや親米国家の身勝手で横暴な核活動の数々を覆い隠すものでしかない。

With no gimmick can the tricksters conceal their true colors
as disturbers of the denuclearization of the Korean peninsula and
maniacs keen to ignite a war of aggression against the DPRK.

朝鮮半島の非核化をかき乱すというペテン師たちの本音を隠せるタネなどない。
北朝鮮への侵略戦争を起こそうと熱中している狂人の本音を隠せるものもない。

http://www.kcna.co.jp/item/2016/201603/news28/20160328-14ee.html
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北朝鮮は核を保有する前から、
アメリカの核攻撃の対象国になっている。


(「核兵器保有国及び核兵器不拡散条約を遵守しない国家に対応:
  アメリカは、アメリカ、その同盟国及びパートナーの決定的な利益を防衛する
  究極の情況においてのみ核兵器を使用しうる。
(<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/NPR2010_0406_jp.pdf>))


アメリカ主導のNATOはユーゴスラビアの紛争の時も
ジェノサイドを止めるためという口実で空爆を開始し、
結果、空爆の前よりも多くの人間がその犠牲になった。



イラク戦争の際には、大量虐殺兵器を持っているという嘘をでっち上げ国を消滅させた。
アラブの春の時には、人権を守るためという口実で現地のアルカイダ系過激派と結託して空爆を実行した。

ノーム・チョムスキー氏は2005年の対談で、イラク戦争によって
「米国は核兵器を持たない国には攻撃を仕掛ける」という教訓をアメリカの敵国は得たと語っている。

(『チョムスキー、民意と人権を語る』集英社新書、2005年、47-49頁)


少なくともブッシュ政権の時代から
北朝鮮はイランと共に核兵器の使用も含めた先制攻撃の対象だった。


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06年3月に発表した「米国の国家安全保障戦略」では
「先制攻撃戦略の維持」を強調し北朝鮮、イラン、シリア、キューバ、
 ベラルーシ、ミャンマー、ジンバブエの7カ国を「圧制国家」と規定。
 「単一国家としてはイランが最大の脅威」と位置づけた。

 ~中略~

このなかでアメリカが急いでいるのは小型核兵器の開発である。

06年2月には小型核兵器を開発するための臨界前核実験を英国と共同で実施。

その翌月に核兵器の中枢部分「プルトニウム・ピット」の生産について、
核安全保障局(NNSA)のブルックス局長が、
今後6年間で年間30~40個の生産体制を確立すると表明。
年間最大450個を量産する新型ピットの工場を建設する方向を明らかにした。

そして米議会で2007年会計年度の新型核弾頭の事業予算を
06年分の2倍にあたる5000万㌦(約58億円)を計上。


ブッシュ政府は新型核弾頭を
2012計年度(11年10月~12年9月)に製造する方針を議会に伝達。

小型核量産体制にむけ、「テロ組織への核物質流出を阻止する」と主張し
これまで8施設でしていた核開発を2大施設に集約し、
2022以後は年間125個のプルトニウム・ピットを生産すると決めた。

こうしたなかでミサイルを配備したイージス艦が、
ハワイ沖で活発に発射実験を繰り返している。


2月に漁船を沈没させた
海自イージス艦「あたご」もその訓練の帰りだった。


ミサイル防衛システムは大気圏外で迎撃する上層システムと、
パトリオット・ミサイルなどを利用する下層システムで構成されるが、
放射能被害の及ぶ下層システムは
すべて日本の国土や海域に配備する。


米軍岩国基地内での核ミサイル攻撃を想定した待避演習は
米兵とその家族だけを国外に脱出させ、
岩国市民は攻撃されるにまかせる訓練を繰り返しているが、
それは全国共通の問題となっている。

http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/nihonntatenikakusennsoutakuramubeikoku%20kyoui%20aorisennseikakukougekitaisei.htm
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このような事情を完全に無視して悪印象を与えるのが北朝鮮報道のトレンドである。

スプートニクの場合、オリジナルの部分、
つまり、アンドレイ・イワノフ氏やタチヤナ・フロム氏のオピニオン記事では
北朝鮮の事情も含めた解説記事を書いており、ある意味、中立的な内容になっているが、
日本の場合は、極右と右翼と主流左翼が団結してひたすら危険を煽っている凄まじい状況だ。

右翼がそういう行動をとるのは、自然で必然であり、ある意味、納得できる。
腑に落ちないのは大新聞やニュース番組、左派系論壇(『世界』や『金曜日』)で活躍する自称平和主義者だ。


上で説明したように、北朝鮮の脅威を煽る行為は日本を事実上の核の砦にする計画と連動している。

つまり、北朝鮮の悪魔化をもくろむ動きは日本人にとっても極めて危険で、
口先だけではない愛国者と協力して日本の左翼はいい加減にしろと怒らなけれならないはずなのだが、
実際は、どうだろう?その逆である。右翼と左翼がつるんで北朝鮮をバッシングしている。

そういう現状を思うと、彼らがどれほど護憲を叫ぼうと、
その思想は非常に浅はかなのではと危惧してしまうのである。