時事解説「ディストピア」

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米韓合同軍事演習とは何か1

2016-04-05 00:08:00 | 北朝鮮
毎年、批判にさらされながらも、日本では問題ないとみなされてきた米韓合同軍事演習。
皮肉なことだが、北朝鮮が強い反応(水爆実験)を示してようやく言及されるようになった。


とはいえ、これが朝鮮半島の情勢を不安定化させる極めて危険な行為だと非難する声は小さく、
全体を通してみると、むしろ北朝鮮の「挑発」に対抗して実施された強硬な対抗策とみなされている。


そこで、この米韓合同軍事演習(キー・リゾルブ、フォール・イーグル)とは
どういう「演習」なのかを本記事で取り上げてみたいと思う。

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〈そこが知りたいQ&A〉米南軍事演習の危険な中身とは?


国際法に違反、先制攻撃を想定した実戦訓練

米軍と南朝鮮軍が「キー・リゾルブ」「フォール・イーグル16」
合同軍事演習を開始したことで、朝鮮半島の軍事的緊張が高まっている。
「過去最大規模」とけん伝されている合同軍事演習の内容をQ&Aでまとめた。


Q. 今回の合同軍事演習はどれほどの規模で行われているのか。

軍事演習は3月7日に始まり、4月30日まで行われる。
米南両軍が毎年この時期に行う合同軍事演習は、指揮系統を確認する増援演習の「キー・リゾルブ」と、
米南両軍の海兵隊による上陸演習「フォール・イーグル」から成る。


今回の合同軍事演習には、米軍が前年比2倍にあたる1万7000人、南朝鮮軍が同1.7倍の30万人が参加している。
射距離1200~2500kmのトマホーク巡航ミサイルなどを搭載した攻撃型原子力潜水艦ノースカロライナや、
ステルス戦闘機F22、ステルス戦略爆撃機B2など最新鋭の戦略兵器が投入されているという。

~中略~

今回の合同軍事演習はその規模もさることながら、
例年に比べてより侵略的な軍事行動が実施されている。



これまでの米南軍の海兵隊による合同軍事演習は、
北側の海岸を想定した上陸作戦が中心となっていたが、
今回の演習では上陸後さらに内陸部の軍事施設に進むための訓練が強化されているという。

12日、浦項一帯の海岸での上陸および内陸への進撃訓練「双竜訓練」がメディアに公開された。
朝鮮が「平壌進撃作戦」と見なす今回の「双竜訓練」には、
米南に加えてオーストラリア、ニュージーランドの海軍、
海兵隊約1万9000人が参加。同種の訓練としてはこれまでで最大規模だという。


Q. 合同軍事演習には昨年策定された新作戦計画「5015」が初めて適用されるという。その内容とは。

「作戦計画5015」とは、朝鮮が核・ミサイルを発射する兆候を確認した場合、
 朝鮮国内の核・ミサイル施設をピンポイントで破壊する先制攻撃作戦だ。

その柱として朝鮮の首脳部を狙った「斬首作戦」がある。
核・ミサイルの発射命令の権限を握る朝鮮の最高指導者を暗殺する内容だ。


「斬首作戦」には、イラク戦争やアフガニスタン侵攻の際に敵の要人を暗殺する作戦に従事していたとされる
Navy SEALs(ネイビーシールズ)や第1空輸特戦団、第75レンジャー連隊などの特殊部隊が参加すると言われている。
これらの部隊は、合同軍事演習が始まる前の2月上旬にすでに南朝鮮に派遣されたと報じられた。



Q. 米南は年次的な「防衛訓練」だと説明しているが。


主権国家の首脳部を狙った「斬首作戦」を公言しながら
実働部隊を展開する訓練が「防衛」目的ではないのは明らかだ。


作戦計画「5015」の遂行は、
「演習」という名の下の侵略戦争そのものであり、国連憲章にも反する。

米南は朝鮮が核・ミサイルを発射する兆候を確認した場合、先制攻撃するとしているが、
その判断基準は米国にある。朝鮮が武力行使をしなくても攻撃するということは
事実上、予防戦争を想定しているということだ。

予防戦争とは、差し迫った危険性がなくても、
将来的に脅威となる可能性のある潜在敵国に対して先制攻撃し、敵の攻撃を未然に阻止するものだ。
きわめて積極的な攻撃意思を有した、侵略戦争の一種といえる。

米国が「大量破壊兵器の脅威」に関する虚偽の情報を口実にして侵攻を開始したイラク戦争が代表例だ。

米国主導のイラク戦争が明白な国連憲章違反、国際法違反であることは周知の事実だが、
同様の違法行為が今、朝鮮半島で行われている。


また、北への軍事制圧訓練に
日本にある米軍基地から米軍が参加していること自体、
憲法9条に違反する行為だ。



作戦計画「5015」に基づく先制攻撃訓練がいつ実戦に移行しないとも限らない。
実際に演習には、有事の際に一定期間の戦闘能力を有する海上事前集積船団(MPSS)が投入されているという。
MPSSは、戦車と装甲車、弾薬など戦争に必要なすべての装備を搭載する、一種の軍需司令部だ。

さらに米南両軍は今回の演習で、
有事の際に米軍の増員戦力を朝鮮半島に迅速に展開することにも焦点を当てるという。



Q. 合同軍事演習の実施によって、朝鮮半島の緊張が高まっている。

侵略的な軍事行動によって核戦争を挑発しているのは米南だ。

「斬首作戦」のような武力による威嚇は、最高指導者を国家の「最高尊厳」として
重んじる朝鮮が強い反発を示すのは必至であり、結果として軍事的緊張が激化する。

米南は今回の合同軍事演習を「過去最大」だとけん伝し、
核攻撃手段が大挙投入された戦争演習の場面をメディアを通じて拡散させることで人々の不安を煽っている。

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北朝鮮は、最近、ノドンなどの中・短距離弾道ミサイルを発射することで
アメリカや韓国に警告を発しているが、なお、米韓は気にも留めず演習に固執している。


なぜ彼らは、それほど演習にこだわるのだろうか?
その答えを知るためには、評論家の朴斗鎮氏の意見が参考になる。


基本的に、彼の意見は米韓日首脳部の意向をそのまま伝えたものなので、その主張を聞くことで
アメリカや韓国がなぜ執拗に米韓合同軍事演習を行うか、その理由がハッキリしてくると思う。




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米国や韓国との連携も強めていく。人権問題として、北朝鮮追及の国際化をはかる。
北朝鮮は今、国連の追及で防戦に必死じゃないですか。

米韓軍事演習も圧力になっています。

軍事演習をすると、北朝鮮もそれに合わせて、軍隊を動かさなければいけない。
演習は3月と8月ですから、田植えの準備と刈り入れのときです。この圧力はキツイ。

国際的な圧力を高めれば、外貨が枯渇し、内紛の火種になっていく。
こうやって、相手の政治的権威を揺さぶるんです。そうしないと相手は脅威を感じない。
餓死者が何万人出たところで、眉毛ひとつ動かさないような国ですからね。
しかし、トップの権威が揺らぐと、あの国は意外にもろいんです。


今の安倍首相は欲と過信で判断が甘い

――小泉訪朝で拉致を認めたときもブッシュ大統領が徹底的に悪の枢軸として叩いたときでしたね。

1976年、ポプラ事件という米朝が一触即発の事件がありました。
板門店の共同警備区域で視界を妨げるポプラの木を切ろうとした国連軍の米兵が殺され、
韓国兵も負傷し、緊張が高まりました。この時、米・韓軍が臨戦態勢を敷いたら金日成が謝ってきた。
歴史に学ばなければいけません。

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/154599/7
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江華島事件【こうかとうじけん】

明治8年(1875)、日本の軍艦雲揚号が江華島付近で挑発行為をし、江華島砲台と交戦した事件。
これを機に日本は朝鮮に開国を強要し、翌年日朝修好条規(江華島条約)を結んだ


1875年9月,日本の軍艦雲揚号が朝鮮の江華島付近に進入,砲撃され,これに対し砲台を撃破した事件。
これを理由として維新後間もない明治政府は,欧米列強にならうやり方で朝鮮政府に迫り,
鎖国政策をやめさせ,1876年2月,不平等条約である日朝修好条規を結ばせ,朝鮮半島侵略のてがかりを得た。

(https://kotobank.jp/word/%E6%B1%9F%E8%8F%AF%E5%B3%B6%E4%BA%8B%E4%BB%B6-61628)


要するに米韓合同軍事演習は
北朝鮮の攻撃を誘うパフォーマンスなのである。



辞書によれば、挑発とは
相手を刺激して、事件や欲情などを起こすようにしむけること」らしい。

ポプラ事件は未遂に終わった江華島事件にすぎない。
北朝鮮の攻撃を誘い、いざ事件に発展すれば、すかさず、侵略を開始しようとする。
これが向こうの策略であり、挑発としか言いようのない行為である。


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朝鮮の外相は核戦力の強化は米国との戦争を防止するための手段と呼んだ。

朝鮮の政治家は、ワシントンが真剣に戦争の準備をしており、
そのために南朝鮮に弾道弾迎撃ミサイルシステムであるTHAADを配備したがっていると考えている。

朝鮮当局者たちは核問題に関して交渉の用意があると言明しているが、
米国は様々な予備条件を持ち出すことで二国間対話の開始を妨げていると信じている。

朝鮮が米国が嘘をついていると非難しているが、それは、
米国側が朝鮮半島での戦争演習を中止するならばその見返りに
朝鮮側は核実験を一時中断する措置を講じるとする提案を米国が拒絶したからだ。


「今の状況は朝鮮の指導部を悩ませている。
それは、過去1年半の間に有益な対話を進めようとする彼等のあらゆる試みが
無視、拒否された事実と関係がある。にも拘わらず、朝鮮側は米、日、南朝鮮など
すべての関係国に対し幾多の事態打開のための実践的な試みを行ってきた」

-ロシア科学院・朝鮮・モンゴル部のアレクサンドル・ボロンツォフ部長はこう述べている。

ボロンツォフ氏によると、朝鮮への米国の侵略的意図を示すさらなる証拠は、
1月のバラク・オバマのユー・チューブとのインタビューだった。

1月22日、彼(オバマ)は北朝鮮を崩壊させ、
 南朝鮮に吸収させるのが米国の政策であると明言した。

 北朝鮮の人々は米国の侵略的政策は上辺だけのものではないと言う。
 朝鮮側に残された選択肢は、核抑止力の強化に主眼をおいた防衛力向上の集中以外にない」

この専門家はさらに言う。

米国としては、
この地域での弾道弾ミサイル防衛システム構築を正当化するために朝鮮を悪魔化する必要がある。

これは軍事専門家たちに言わせれば、実際にはロシアと中国を標的にしたものだが、
朝鮮にとっては米国の行動は朝鮮半島における核の圧力を増大させるだけである。

制裁、孤立化の圧力強化と朝鮮の核能力強化は正の相関関係にあることは明白だ。

http://chosonsinbo.com/jp/2015/06/sk616-7/
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上の記事は2015年の6月に書かれたものだ。
つまり、今まで何度も継続して北朝鮮は平和条約の締結を提言してきたのに、
それにも関わらず、アメリカと韓国は無視を決め込み、挑発行為を続けてきた。


これが北朝鮮の攻撃を誘うものであることは朴斗鎮のコメントからも伺える。
そういう意味では、北朝鮮の水爆実験は向こうの狙い通りの行為だったとも言えよう。


 ちなみに彼は産経新聞主催、櫻井よし子が音頭を取る講演会に招かれ、
 講演料をたんまり頂きながら、連中と一緒になって韓国の反日(笑)行為を非難している。

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近年の韓国政府による歴史認識に根ざした反日行動は度を超していると言わざるを得ません。
天皇への不敬発言然り、「竹島」問題然り、所謂「従軍慰安婦」問題に関する国際社会への喧伝然り、
五輪開催地決定直前の禁輸措置然り、朴政権による安倍政権への悪口雑言然り
―これらは到底看過できるものではありません。

韓国がこのままアプリオリに反日一色に染まった振る舞いを継続すれば、
日韓関係のみならず韓国の国益をも大きく損なうことに気づくべきでしょう。

我が国も自虐的歴史認識による従来の日韓外交の立て直しが必須であることは言うまでもありません。
最近になって韓国国内からも朴政権の反日姿勢に対する疑問の声が上がっているとはいえ、
我が国は今こそ「韓国」の国柄を再考し、
確かな認識の下で今後の日韓関係の在り方を模索する時ではないかと考えます。

http://www.jfss.gr.jp/shinpujum/symposium30kai/20140131a.htm
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朴斗鎮は沖縄の米軍基地も「気の毒だが必要」と述べているし、
韓国市民による日本の戦争責任を追及するのも北朝鮮の思想にかぶれたからだと語っている。

悪いのは全部、北朝鮮と中国。これが氏の基本的なスタンスだ。

こういう妄言としか言いようのない発言を繰り返す老人が極右評論家と仲良く
産経主催のシンポジウムで御高説を垂れ、講演料を頂いているのは、ある意味自然で必然なことだ。

問題は、こういう人物に北朝鮮を攻撃する本を書かせる左派系出版社だろう。

揺れる北朝鮮

上の本は「自由な発想で同時代をとらえる」つもりになっている左派系出版社、
花伝社から最近、売り出された可燃ゴミだが、同書では当然、米韓の挑発行為には一切触れていない。

金正恩が政権を握ってから、北朝鮮の経済、食糧事情が飛躍的に改善されたのは
専門家なら誰もが知っている事実であるが、これを朴はアメリカのCIAと関わりのあるNEDという組織
から資金援助を受けているデイリーNKというサイトの情報をもとに、否定しようと躍起になっている。

要するに、産経新聞に載っていそうな文章を左派系出版社が発信しているのが今の日本というわけだ。
(なお、同じく左派系出版社の大月書店からも類書が出版されている)


歴史問題に固執せず米韓日の軍事同盟を強化せよとか
沖縄の米軍基地は必要だとか、韓国の反日行為は冷戦後、韓国市民が
反共を忘れたことで北朝鮮の主体思想の影響を受けるようになったからだとか
その辺の右翼よりもクレイジーな陰謀論と帝国主義的策略を述べるこの男に本を書かせる。

これが今の左派系出版社のありのままの姿である。

差別主義者や軍国主義者と握手をしながら平和と共存を叫ぶ。
こういう連中の何を信じればいいと言うのだろう?
(そういう意味では鳩山由紀夫元首相や孫崎享氏の語る東アジア共同体論も、
 北朝鮮を生贄にした平和論であると言える。)


日本の右傾化は左翼の右傾化だ。
護憲派が米韓合同軍事演習を違憲として訴えたことがあったかどうか考えてみてほしい。

私が今の日本の平和運動を非常に偽物くさく感じているのは、
その思想の根底にある矛盾を直に感じ取るからである。

つまり、戦争をする国にして良いのかと騒ぐわりには
戦争を起こそうとする行為に対して強い拒否反応を示さない。


こういうのは反戦ではなく、厭戦というものだと言えよう。
(よそで好きにやってくれ、巻き込まないでくれというスタンス)


今回の記事では長くなるため触れなかったが、米韓合同軍事演習は、
実のところ、冷戦時代から続いているもので、その起点は1957年の在韓米軍の核武装化にある。

この点を朝日新聞は完全に無視をして、米韓合同軍事演習は北朝鮮の水爆実験に起因するもので、
自業自得なのだと社説でほざいている。朝日といい花伝社といい、リベラルのイメージをふりまいて
良心的な人物をだまし、購買意欲を誘う合法詐欺集団は、総じて痴呆症にかかっているのではないだろうか?


歴史的に米韓合同軍事演習はアメリカの核威嚇とセットになって展開されてきた。
これについて、おあつらえの記事が2本あるのだが分量があるのでそれらは次回で紹介することにしたい。