時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

G7による広島記念公園の訪問、献花という茶番2

2016-04-11 22:10:07 | 国際政治
前の記事の続き

(読んでいない人は、ぜひご一読を)


前の記事で、平和を願うと言いながら、
現在進行形で他国を爆撃し、現地の武装勢力を支援しているG7の偽善を指摘したが、
先ほど、良いタイミングでイランラジオの関連記事がアップロードされたので紹介をしたいと思う。


まず、イランラジオの記事を読む前に毎日新聞と日経新聞の記事を読んでみてほしい。

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(毎日新聞の記事より)


現役の米閣僚として初めて被爆地を訪れたケリー国務長官は
11日、G7外相会合後に広島市内で記者会見した。

訪問した原爆資料館について、「私は忘れることはないし、忘れられる人はいないだろう」と述べた。
さらに「戦争とは最後に残された手段であり、最初の手段とすべきではないことを再確認した」と語った。


ケリー長官は、原爆資料館で目にした投下直後の絵画について
「胃をたたかれたようで、驚くべきものだ」と感想を述べた。

平和記念公園では原爆慰霊碑に献花しており、被爆地訪問で
「深く心が動かされたし、初めて広島を訪ねた国務長官であることを光栄に思う」と強調した。


一方でケリー長官は、訪問の目的を
「過去を振り返るためではなく、過去(の教訓)を現在や将来に生かすことが、
どれほど大切なのかを示すためだ」と指摘。第二次大戦で戦った日米両国が終戦後は
同盟国となったことに言及し、「この地(広島)は、同盟の堅固さを示す事例になっている」と強調した。


また、オバマ政権が取り組む国際的な核不拡散や核物質管理強化にも触れた上で、
「資料館を訪れたことで、世界平和の維持のために果たすべき(米国の)義務を再確認した」と語った。

【大前仁】

(日経新聞の記事より)


主要7カ国(G7)外相会合で広島市を訪れたケリー米国務長官は11日記者会見し、
オバマ米大統領が5月のG7首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて
広島市を訪問する可能性について「オバマ氏を含め、全ての人が広島に来るべきだと思う。
だが実際に来れるかは分からない」と述べた。


冒頭、原爆を投下した米国の現職国務長官として初めて市内の平和記念公園を訪れたことを
「感激している。誇りに思う」と表明。

原爆の惨状を示す資料館内の展示物についても触れ
「驚くべき、忘れられない内容だった。核兵器のない世界を目指す必要性を再認識した」と発言した。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK11H6K_R10C16A4000000/

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これら記事を読んだうえで、イランラジオの記事を読んでみてほしい。



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アメリカのケリー国務長官が、広島で、
原爆による攻撃については謝罪せずに
「広島平和記念資料館を訪れたことを誇りに思う」と述べました。


ケリー長官は、G7主要7カ国の外相会合に出席するため、日本を訪問しました。

1945年の広島と長崎へのアメリカの原爆による攻撃で、20万人以上が死亡しました。
その後も後遺症で数万人が死亡しています。

それから70年以上が経過した現在、アメリカの国務長官が初めて広島を訪問し、
広島の記念資料館を訪れました。

こうした中、ケリー長官の広島訪問に際して行われた広島での抗議デモにもかかわらず、
アメリカの関係者は、「国務長官が原爆投下に関して謝罪することはないだろう」と述べました。


ケリー長官はツイッターで、広島記念資料館の訪問に関して、
「広島記念資料館を訪問した最初のアメリカ国務長官であることを誇りに思う」と述べています。

ケリー長官は、原爆攻撃で広島市民が死亡したことについては語らず、これについて謝罪もしていません。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/63566
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前者は基本知識を淡々と述べている印象を受けるが、後者はより批判的な内容になっている。


イランのニュースサイトは、ケリー氏の発言の偽善さについて強く非難しているのに対して
肝心の事実を伝えようとしない日経や毎日の報道姿勢は一体何なのだろうか?


ちなみに朝日新聞は、こう書いていた。

「ケリー氏は公園訪問で、原爆投下を謝罪する表現は使わないものの
「憎しみではなく愛情の心で再建してきた広島の市民と米国民が、
 戦争を憎み、平和に向けた決意を共有する」と語った。
「日米の和解が並外れたレベルにまで達したことを示すことになるだろう」とも述べた。
 さらにこの高官は「核兵器を唯一使った国として、米国は世界の核軍縮に向けて努力をする責任がある」
 とも語り、オバマ政権が2009年のプラハ演説で提唱した「核なき世界」の実現に向けて
 今後も努力していく考えを強調した。」


アメリカの非核の意思は、自国の戦争犯罪を反省しない程度のものだと非難するイランラジオと、
謝罪こそしないが、アメリカの非核の意思は本物だと言わんばかりに褒めたたえる朝日新聞。

徹頭徹尾、アメリカを擁護する文体。
この国の言論の自由など、有って無いようなものだと改めて実感する。


平和記念公園を訪問し、何かしら思うことがあったのであれば、
広島に原爆を落としながらも未だに謝罪の一言もない自国の有り方について言及すべきだろう。


とはいえ、ケリーの姿勢は、このG7サミットの本質をえぐったものだと思う。
自分たちの行いに対しては、全く反省せず、中国や北朝鮮を非難するというものだ。


これについては朝日新聞も伝えている。

「各国外相は10日夕に世界遺産・厳島神社を訪問。宮島で夕食会を開き、
 核実験や弾道ミサイル発射など挑発を繰り返す北朝鮮の問題や、
 南シナ海で軍事拠点化を進める中国を念頭に海洋安全保障について議論した」

ここにはG7の好戦的な姿勢こそが国際平和を乱しているという意識がない。


無論、朝日新聞もこの独善性について特に非難していない。

まぁ、朝日新聞は先日、話題になったパナマ文書についても
中国については社説で強く非難し、お決まりの「中国は非民主的な国だ」論を述べる一方で、
三菱商事、丸紅、オリックス、バンダイ、大和証券などの日本企業の税金逃れについては
全く非難しない新聞だから、こうなるのも当然と言えば当然かもしれない。


朝日新聞は一応、ヘイト・スピーチに反対しているはずだが、
実際には隣国の悪印象を与える記事や社説を大量生産している。

同社の主筆だった舟橋洋一氏が今、右翼として活動しているのもある意味納得である。

(彼によると、戦後保守は弱者を切り捨てず、国際協調を重んじていたらしい。
 そいつらに長年にわたって攻撃されていたのはどこの新聞だったのか。

 こういう自社の被害を忘却して権力者にすがる卑怯者が
 主筆になれる時点で朝日は終わってしまったのかもしれない)

G7による広島記念公園の訪問、献花という茶番

2016-04-11 22:04:26 | 国際政治
4月11日、G7(米英仏侵略トリオ+日独伊ファシスト同盟+カナダ)外相が
広島記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花し、合わせて世界の非核化を求める広島宣言を発表した。


とんだ茶番である。

核を減らしたいのであれば、7千発以上の核弾頭を保有しているアメリカこそ、
真っ先に非核化すべきであるし、経済制裁を受けねばなるまい。

そればかりか、今世紀に入ってからアメリカは更に積極的な核開発を行っている。

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このなかでアメリカが急いでいるのは小型核兵器の開発である。

06年2月には小型核兵器を開発するための臨界前核実験を英国と共同で実施

その翌月に核兵器の中枢部分「プルトニウム・ピット」の生産について、
核安全保障局(NNSA)のブルックス局長が、今後6年間で年間30~40個の生産体制を確立すると表明。

年間最大450個を量産する新型ピットの工場を建設する方向を明らかにした。

そして米議会で2007年会計年度の新型核弾頭の事業予算を
06年分の2倍にあたる5000万㌦(約58億円)を計上。

ブッシュ政府は新型核弾頭を2012計年度(11年10月~12年9月)に製造する方針を議会に伝達。

小型核量産体制にむけ、「テロ組織への核物質流出を阻止する」と主張し
これまで8施設でしていた核開発を2大施設に集約し、2022以後は
年間125個のプルトニウム・ピットを生産すると決めた。

こうしたなかでミサイルを配備したイージス艦が、ハワイ沖で活発に発射実験を繰り返している。
2月に漁船を沈没させた海自イージス艦「あたご」もその訓練の帰りだった。

ミサイル防衛システムは大気圏外で迎撃する上層システムと、
パトリオット・ミサイルなどを利用する下層システムで構成されるが、
放射能被害の及ぶ下層システムはすべて日本の国土や海域に配備する。


米軍岩国基地内での核ミサイル攻撃を想定した待避演習は米兵とその家族だけを国外に脱出させ、
岩国市民は攻撃されるにまかせる訓練を繰り返している
が、それは全国共通の問題となっている。

http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/nihonntatenikakusennsoutakuramubeikoku%20kyoui%20aorisennseikakukougekitaisei.htm
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そもそも、アメリカは今年の2月に核ミサイルの実験を行っている。


「 アメリカとロシアの緊張が高まる中、アメリカ軍が軍事競争に対して
  核の力を見せ付けるため、2発目の弾道ミサイルを実験しました。

  この弾道ミサイルは、25日木曜夜、カリフォルニア州の空軍基地から
  マーシャル諸島に向けて発射されました。

  アメリカ国防次官は、この実験の前に、

 「アメリカは2011年1月以来、これまでに少なくとも15回のミサイル実験を行っており、
  ロシア、中国、北朝鮮といったアメリカの戦略的な競争国に対し、
  アメリカは強力な核兵器を有しているというメッセージを含んでいる
」と語りました。

  http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/62616-」


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アメリカが、中国あるいはロシアに対する初の核攻撃を計画中



アメリカ人ジャーナリストで反戦活動家のブルース・ギャノン氏が、
アメリカは現在、中国あるいはロシアに対する初の核攻撃を計画中である」と語りました。

ギャノン氏は、プレスTVの取材に対し、
アメリカによる韓国へのTHAAD・終末高高度防衛ミサイルの配備は、
 中国あるいはロシアに対し初の核攻撃を行うというアメリカの計画の一部である
」と述べています。

また、「THAADの配備は中国とは全く関係がない、
    とするアメリカのカーター国防長官の主張は虚偽である」としました。

さらに、「北朝鮮は決して、アメリカにとっての脅威とはみなされず、
     アメリカによるこの措置の主要な動機となっているのは中国だ」と語っています。

ギャノン氏によりますと、北朝鮮は低レベルの宇宙技術しか保有しておらず、
アメリカにとっての脅威とはならない、ということです。

ギャノン氏はまた、
「アメリカは、韓国へのTHAAD配備を正当化するために、北朝鮮を口実として利用している」
と語りました。

さらに、
「アメリカは、イランの核問題を口実に、THAADに類似したミサイル防衛システムを中東に配備し、
 それによってロシアを包囲しようとしている」と述べています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/63557
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中国や北朝鮮、ロシアの核保有に対しては・・・




G7「やめろぉおおおおおお!!!!」



アメリカの核保有、先制攻撃を想定した実験と演習に対しては・・・







G7「・・・・・・」




このやる気のなさ、どうしたものか・・・


このG7外相の目的は反核ではなく、むしろ北朝鮮と中国にむけたけん制、
ならびに大国がテロリストと決めつけた連中に対する空爆や斬首、拉致作戦にむけての相談だろう。



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文書は「核兵器保有の透明性を向上させたG7の核保有国の努力を歓迎する」としたうえで、
保有している核兵器の数を明らかにしていない中国を念頭に、「他国にも同様の行動を求める」として、
透明性の向上を求めています。

~中略~

会合の成果などをまとめた共同声明では、
「テロ・暴力的過激主義対策」に最も多くの分量が割かれ
テロを「全世界的な喫緊の安全保障の脅威」と位置づけたうえで~(中略)

また、ことしに入っての北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射について、
「最も強い表現で非難する」としたうえで、北朝鮮にこれ以上、挑発的な行動をさせないため、
国際社会に対し、国連の安全保障理事会が決定した北朝鮮に対する制裁措置を完全に実施するよう呼びかけています。


~中略~

直接の名指しは避けながらも、中国が南シナ海などで海洋進出の動きを活発化させていることに
G7として懸念を共有するとしたうえで、大規模な埋め立てや軍事拠点化の動きを自制するよう求めています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160411/k10010474921000.html?u
tm_int=news-international_contents_list-items_001

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この声明はアメリカ軍やオーストラリア軍が
南シナ海を旋回している
ことにはまったく触れていない




長らくアメリカは防衛ライン以内における中国軍の侵入を警戒していたが、
最近では防衛ラインより外側、つまり南シナ海より内側の海を徘徊し、挑発的な行動を取っている。

アメリカの影にこそこそ隠れて同様の行動を取っているのがオーストラリアで、
この国は、シリアに対しても去年の秋から空爆を行っている。

客観的に言って、G7は世界中で戦争をしている。


イギリス、アメリカ、フランスを中心とするG7の面々は、
一貫して、中東や中央アジアにいる武装勢力を支援してきた。

その目的は現地のテロ集団を利用した国家転覆であり、
特にシリアとリビアにおいてはアルカイダの系列にある過激派を支援したことで、
地域内の治安を余計に悪化させ、その中には欧米にも牙をむける組織も出現してきた。

言わずもがな、ダーイシュ(イスラム国、IS)である。


こうして情勢が悪化するなか、不可避に生じた大量の難民を欧米圏から締め出し、
現地人の復讐をテロリストによる逆恨みであるかのように演出し、悲劇の主役を気取って見せている。

その裏側では自国の民衆に対する監視体制を強め、他国の空爆を開始・支援している。


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欧州議会で、サウジ向け武器禁輸要求決議が採択


欧州議会が、イエメンでの戦争犯罪を理由に、
サウジアラビアに対する武器の禁輸を求める決議を採択しました。

ファールス通信が25日木曜、報じたところによりますと、
この決議はイエメンでの国際人道法に関する調査が行われるまで、
EUによるサウジアラビアへの武器の大規模な禁輸を求めています。

この法案は、サウジアラビアに大量の武器を輸出している国として、
はっきりとイギリス、フランス、ドイツ、スペインを挙げています。


この法案の採択に努力した、欧州議会のアラン・スミス議員は、
「サウジアラビアへの武器禁輸という欧州議会の要求は前代未聞であり、
 サウジアラビア空軍によるイエメン戦争の管理方法に対する失望を示すものだ」と語りました。

また、
サウジアラビアは、イギリスとフランスの武器の主要な顧客であり、
 イエメンでこれらの武器が国際法に違反して使用されているという証拠が存在している。


イエメンでは、昨年3月にサウジアラビアに戦争をしかけられてから、
これまでに数千人の民間人が死亡している」と述べています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/62599



なお、アメリカもサウジアラビアに武器を与えているという情報がある。
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イエメンにおけるサウジ軍の空爆で、最低3万人の国民が死傷し、インフラの8割が破壊された。
これら空爆はイエメンで勢力を握っているフーシ派というテロリストを掃討するためのものだと言われた。

欧州議会は武器の輸出を禁じてはいるが、侵略を援助した国々に対する制裁は与えていない。


同様に、アメリカや日本、EUはウクライナ政府を経済支援しているが、
同政府がテロリストを倒すための作戦と称して自国民を爆撃し、
住宅地や病院、教会を破壊してきたことについて全く責任を問いていない


(それどころか今回のサミットではウクライナ問題の処置について、
 つまり、自分たちの行いが正しいことを前提にどう事態を収拾させるかを話し合っている)

ある集団をテロリストとみなすか、
それとも抵抗勢力とみなすかは侵略者の気分次第である。



G7やNATOはどれだけ破壊工作を行っても制裁を受けはしない。


北朝鮮の核実験は今のところ、一人も犠牲者を生んでいないが、
アメリカやイギリスやフランスが現在進行形で行っている反テロ戦争では
直接的な死傷だけでなく、テロ容疑者の拉致、拷問も発生した(悪名高いグアンタナモ基地が好例)。


これら自分たちの悪行を列挙した上での献花と非核宣言ならば意味があるだろうが、
実際には、非核という言葉が侵略の隠れ蓑として利用されている。

G7は、まずイエメンやウクライナの犠牲者に向けて花を捧げるべきだろう。


自らの行いを真に反省しない限り、そこで行われるのはいつまでたっても茶番でしかない。



※追記

そもそも、G7は元はG8、つまりロシアも含まれていたのだが、
ウクライナ問題で米英仏と対立したために、ロシアはG8から外されてしまった。


2015年のドイツでのサミットではG7のメンバーはロシアに対し、
ウクライナ問題への介入継続に関して警告を発し、更なる厳しい制裁を行使すると述べている。

この「言うことを聞かない国は追い出してしまえ、制裁してしまえ」という独善としか
言いようのない行動をしている連中が、平和記念公園の前で何を思うと言うのだろうか?