時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

安倍談話を絶賛する不思議な人たち

2015-08-17 00:00:55 | 浅学なる道(コラム)
あまり長々とは書かないが、この談話は
ポツダム宣言と東京裁判の内容を受け入れる形で書かれている。


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何の罪もない人々に、計り知れない損害と苦痛を、我が国が与えた事実。
歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈なものです。

一人ひとりに、それぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。
この当然の事実をかみしめる時、今なお、言葉を失い、ただただ、断腸の念を禁じ得ません。

これほどまでの尊い犠牲の上に、現在の平和がある。これが、戦後日本の原点であります。


(中略)


我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、
痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。


その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ
東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が
歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。


こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。


ただ、私たちがいかなる努力を尽くそうとも、家族を失った方々の悲しみ、
戦禍によって塗炭の苦しみを味わった人々の辛い記憶は、
これからも、決して癒えることはないでしょう。


ですから、私たちは、心に留めなければなりません。

戦後、六百万人を超える引き揚げ者が、アジア太平洋の各地から無事帰還でき、
日本再建の原動力となった事実を。中国に置き去りにされた三千人近い
日本人の子どもたちが、無事成長し、再び祖国の土を踏むことができた事実を。


米国や英国、オランダ、豪州などの元捕虜の皆さんが、
長年にわたり、日本を訪れ、互いの戦死者のために慰霊を続けてくれている事実を。


戦争の苦痛を嘗め尽くした中国人の皆さんや、
日本軍によって耐え難い苦痛を受けた元捕虜の皆さんが、
それほど寛容であるためには、どれほどの心の葛藤があり、いかほどの努力が必要であったか。

そのことに、私たちは、思いを致さなければなりません。

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安倍の普段の主張とは真逆の内容になっているわけで、
すなわち、日ごろから誇り高き日本人の皆様が反日と認定し、
攻撃し続けている自虐史観を同談話では肯定しているのだが、なぜか絶賛されている。



特に「戦争の苦痛を嘗め尽くした中国人の皆さんや~思いを致さなければなりません」
などは、安倍をはじめとした右翼どもの行いを戒める発言なのだが、
なぜか日常的に反日だの自虐だの日本人だの文化だのとゴチャゴチャと
小うるさくわめいている連中が総じて称えているのは変だ。



例えば、次のような記事がある。


「安倍晋三首相が発表した戦後70年談話について、インドネシア外務省は14日、
 公式ツイッターで「高く評価する。インドネシアはアジアのすべての国に
 平和維持への貢献を果たすよう求める」とコメントした。
 
 安倍首相の談話はインドネシアの国名も挙げた上で、
「アジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、
 その平和と繁栄のために力を尽くしてきた」と言及している。 」

(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150814-00000162-jij-asia)


これを一部掲示板や動画サイトが取り上げ、
誇り高き日本人がインドネシア偉い!最高!と喜んでいるが、
彼らは次の記事を読んでいないのだろうか?



「シンガポールメディアの聯合早報網は5日、
 インドネシアのユスフ・カラ副大統領が4日(8月)、
 日本の安倍晋三首相に対して、
 第2次大戦の被害者に謝罪するよう呼びかけたと報じた。


中央社の報道によると、副大統領は4日、

「日本―東南アジア国家協会メディアフォーラム」の出席者らと会った後、

「安倍首相が戦争の被害国に謝罪できればいいと思う」と語った。
 日本軍は戦時中、オランダ領だったインドネシアを占領し、軍政を敷いた。

副大統領は先ごろも、「日本が大戦の被害者に謝罪するのか、
それとも遺憾を表明するだけなのか、それを決めるのは安倍首相だ」と発言しており、

「安倍首相が被害者に謝罪することができれば、
戦時中に日本から被害を受けた人々の感情はずいぶんと改善される」、との考えだという。

(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150806-00000030-xinhua-cn)


要するに、インドネシアも誇り高き日本人が言うところの
自虐史観に則ってコメントを述べているし、
上のユスフ・カラ氏の謝罪要求発言は、
右翼からすれば反日発言に他ならないはずなのだが、なぜか褒め称えている。



連中が危惧する反日史観とやらは、何も中韓だけが所有しているものではない。

正しい歴史とやらを伝えた気持ちになっているが、
実際には政治家やメディアの手のひらで踊らされている一部のアホを除いては
日本の侵略戦争は世界の常識であり、現に、今回の談話、市民レベルでは
ヨーロッパのメディアも批判的な見解(内容が不十分だという見解)を示している


ついでに言えば、誇り高き日本人には真実の友と認定されている台湾も、
日本政府に対して、第二次世界大戦時の侵略行為について調査を行い、
歴史から教訓を得よと語っている。


「歴史上の過ちは忘れることができるかもしれないが、
 歴史的な真実は忘れることはできない」とまでコメントしている。




連中の基準からすれば、台湾は恐ろしい反日国家になるはずだし、
実際、近年の台湾は歴史認識に関していえば、
少しずつ日本政府に対して厳しい態度を取りつつある。



いずれにせよ、どの国も自虐史観を前提に話をしているのであって、
誇り高き日本人にとってみれば、どいつもこいつも許しがたい反日だ。


このような世界の常識に対して「仰るとおりでございます」と
受け入れたのが今回の談話なのだが、右翼はどの辺が凄いと勘違いしたのだろう?


わかりやすく言えば、甘口カレー(安倍談話)を前にして、
「辛口カレーはないの?」と文句をつける客もいれば、
「まぁ、カレーなら別にいいよ」とコメントする客もいる中、

日ごろは「カレーなど邪道!人が食うものにあらず!」とほざいている連中が
「カレーなら別にいいと言ってくれた!大勝利ぃいいい!!!」とわめいているのが今の状態。




こういうちょっと危ない連中が、模範的日本人に相当するらしい。マジか?
最大限、フォローすれば安倍の二枚舌を権謀術数と評価しているのかもしれない。

あるいは「したたか」と褒めているのかもしれない。

まぁ、その場合も相手国は連中いわく間違った歴史観を改めることはないし、
むしろその歴史観を日本が受け止めたことを前提に今後、話を進めるのだから
いずれにせよ褒めるどころか叱るべきだと思うのだが……


あまり言いたくはないが、やっぱり安倍を崇拝するカルト教団にしか見えない。
困ったもんだ。