時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

さる女性学者への省察

2015-08-03 23:10:04 | 反共左翼
日本の女性学・ジェンダー研究のけん引役として活躍してきた上野千鶴子氏。
新たな学問を開拓した人物として尊敬してはいるが、活動家としては正直3流であろう。


そもそも、彼女は慰安婦問題からして90年代から
吉見義明氏と俗に言う上野・吉見論争なるものを繰り広げていた。

http://east-asian-peace.hatenablog.com/entry/2014/07/19/222810

(ここで一部が読める)

この論争と平行するようにして、
彼女は宮台真司氏と一緒になって売春肯定論を展開していた。

より詳しく言えば、セックス・ワーク論というもので、
売春を規制するよりも先に、売春婦の労働条件の改善を優先したものなのだが、
結果的には売春と言う行為を好評価しており、その点をよく批判されていたりする。

http://blog.tatsuru.com/2013/05/29_0836.php


言わば、女版和田春樹といったところか。

学者としては大変優秀に違いないと思われるのだが(※)、
活動家としては「それはどうよ」と思わせる発言ばかりしているような気がする。

(※ 和田の北朝鮮論や上野のセックス・ワーク論については
   私は反対の立場なので、あえて「に違いない」と「思われる」と表現した。

   とはいえ、この点を除外すれば、両者とも優秀な研究者である)



さて、その上野氏が女性週刊誌でコメントを述べていたようで、
早速、右翼に目をつけられている。


安保法案反対の上野千鶴子氏「女性も戦争に行く時代になる」


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「アベ政治を許さない」――そう書かれたプラカードが国会前を埋め尽くす日が続いている。

『安全保障関連法案に反対する学者の会』に名を連ねる
東京大学名誉教授の上野千鶴子さん(67才)は7月20日に開かれた記者会見で、
安全保障関連法案の強行採決に対する抗議声明を発表した。



「この法案が通れば、政権が憲法の解釈を変えたことになり、憲法が根幹から揺らいでしまう。
 憲法順守の立憲主義、ひいては国民主権が揺らいでしまいます。
 そしてこれからは世界中至る所で行われている米国の戦争に巻き込まれてしまう。

 政府は自衛隊の“派遣”と言っていますが、事実上の“派兵”で命の危険が伴います。
 後方支援といえども前線とリスクは変わらないし、戦場から戻ってきた後も問題です。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされることになるでしょう。
 そういう場所に国民の仲間を送るのでしょうか。

 法案が通れば、日本が戦後70年、戦死者を出さず戦争で
 人を殺さず国際社会で築き上げてきた“非戦ブランド”が台無しになってしまう」


また、上野さんは「これからは女性も戦争に行く時代になる」と指摘する。

「若い女の子が、“戦争になっても、男の子だけ行くんでしょ”と言っていました。
 そんなことはありません。ハイテク戦争の時代、女性だって
 “共同参画”する可能性は決して低くない。しかも今の自衛隊は志願制ですが、
 徴兵制になることも充分考えられます。
 女性にとって無関心ではいられないのは当然のことです。

 政治に対して、“言ってもしょうがない”っていう無力感を持っている人が多いと思うんです。
 ましてや、女性にとって“怒り”という感情は許されてこなかった。
 でも、今怒らなくて、いつ怒るのでしょうか。怒りのマグマを今こそ爆発させる時です」

※女性セブン2015年8月13日号

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右翼どものクソみたいな反論は、特に思うことは無いのだが、
それでも、次のコメントにはちょっと思うところがあった。

「徴兵制云々は「ねーよw」で終わりだな。 
 女性も戦争にってのは、男女平等にしろって普段から煩いんだから本望でしょ?
 都合良い時だけ守れとか言わんよね?」


「戦争は男が行くものって考え方、嫌い」

「戦場でも男女平等になるのよね。
 私の仲いいイギリス人の先生なら「フェミニズム万歳」って言うわねw」


これらコメントは、上野氏の発言の一部分だけあげつらって囃し立てている。

前半部の兵士の派兵やPTSD云々の箇所を読めば、同氏が女性のことだけを
考えているわけでもないし、ましてや男性だけ戦場に行けと言っているわけでもない、
むしろ、その反対の立場だからこそ、集団的自衛権に反対しているのは明確だ。


そもそも、徴兵制云々は、若い女性(教え子?)の
「どうせ男子だけ行くんでしょ」という発言へのアンサーであるわけで、
「女性も戦場に生かされる、偉いこっちゃ!」と騒いでいるわけでもない。


この辺の理解ができない辺り、さすが右翼である。
日本人の誇りがどーたらこーたらほざくわりには、国語力が全く無い。


とはいえ、ここまでボロクソに右翼を批判しておきながら何だが、
上野氏の発言自体にも問題があることをこれから指摘してみようと思う。



「これからは世界中至る所で行われている米国の戦争に巻き込まれてしまう」


『これまで』の日本国を振り返ってみれば、朝鮮戦争、ベトナム戦争、
 湾岸、アフガン、イラクと常にアメリカの戦争を支持・支援してきた。


反戦論者の多くに見られるのが「戦うか・戦わないか」の二元論で考える態度で、
あたかも、これまで日本が戦争に関与してこなかったのかのように語るのだが、
実際には日本はアメリカの戦争にすでに関わっているのである。


日本は戦後、公に参戦してはいないが、協力はしてきた

アフガン・イラク戦争の際、日本政府は最大限の支援を行った。
この支援には学者の支援も含まれる。

名高い国際政治学者たちがアフガン・イラク戦争および中東のカラー革命を
正しい戦争として支持・アメリカ軍への協力を政府に促した。

このことは私にとって絶対に忘れられない事件である。


本来、日本政府に対してNoを叩きつけるべき学者がYesと言った。
しかも「アラブの春」という言葉を発明して、
数年経つ今も、革命自体は肯定した立場を維持している。


こういうアメリカ追従の学者・政治家の姿勢を何とかしない限り、
日本は国際平和に何らかの貢献ができないと私は思う。



「後方支援といえども前線とリスクは変わらないし、戦場から戻ってきた後も問題です。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされることになるでしょう。
 そういう場所に国民の仲間を送るのでしょうか。」



平和論者に多いのが、この手の殺す側の人間を擁護する見解だが、
より重要なのは、殺される側、すなわち現地の民間人の心配だろう。



例えば、今、パキスタンではタリバンが潜伏しているという理由で
アメリカの無人戦闘機が住宅地を爆撃し、民間人が犠牲になっているが、

こういう事態を見ても、「戦う人間の気持ちを考えろ!」戦法は
「無人機にすればOK」で簡単に論破されてしまう。


本当に戦争に反対したいのなら、今、アメリカやイギリス、フランス、
その属国・同盟国が世界各地で何をしているのかを説明したほうが良いだろう。


(最近のニュースで言えば、イスラエル兵の幼児殺しなどが相当する)


「日本が戦後70年、戦死者を出さず戦争で
 人を殺さず国際社会で築き上げてきた“非戦ブランド”が台無しになってしまう」


非公式として日本は、朝鮮戦争において、機雷の撤去や細菌兵器の開発・投下を
行っているし、アメリカ・韓国軍の一員として参戦する旧日本兵も存在している。


確かに公式の場では参戦はしてこなかったが、
アメリカの横暴を黙認し続けてきた70年間でもあるわけで、

その辺を軽視・無視して日本平和国家論を唱えるのは如何なものかと感じる。


「しかも今の自衛隊は志願制ですが、徴兵制になることも充分考えられます。」


現在、アメリカは志願制だが、ベトナム戦争の時代から、
貧困層の人間が兵士に志願したくなるようなシステムを構築していた。


つまり、失業・貧困の状態にある人間が
最も簡単に就ける職業が軍人なのである。



ということを考えれば、志願制ならOKという話にはなるまい。


無論、上野氏は志願だろうと徴兵だろうと結果的に兵士が
ダメージを負うのだから、戦争には反対だと主張しているわけだが、
結果的には、「志願制ならOKで、徴兵制ならNO」という理屈に対して
強力な反撃を与えることに失敗している。その中途半端な見解のために。


「政治に対して、“言ってもしょうがない”っていう無力感を持っている人が多いと思うんです。
 ましてや、女性にとって“怒り”という感情は許されてこなかった。
 でも、今怒らなくて、いつ怒るのでしょうか。怒りのマグマを今こそ爆発させる時です」


これは、多くの人間がそうだと思うが、
日本人の政治に対する無気力感の原因として左翼の弱さがある。


民主党が何だかんだで政権を奪取できたのも、
年金問題をはじめとして、次々と自民党の悪事を暴露した強さに惹かれた面が大きい。


対して、上野氏をはじめとして、日本の主流左翼は総じて
反対意見といいつつ、非常に控えめな、あるいは弱腰なNOを唱えており、
その中途半端な意見はかえって、強力なYesとなって敵を応援する結果に終わっている。


徴兵制云々についての問題は、その典型的なものだ。

志願制自体が問題なんだ!
アメリカでもどこでも貧困層を戦場に送っているんだ!
韓国を見ろ!徴兵制と言いつつ、金持ちや有名人は金を払って免除されてるじゃないか!


これぐらいの語気で志願制というものを通じて、経済のみでは秋足らず、
命の格差すら生じさせている現代国家の残忍なシステムを非難しなくては
中盤で引用したネトウヨどものように無視されて終わってしまうのではないだろうか。


ヘイト・スピーチはダメ!と言いながら思いっきり北朝鮮バッシングをしている
有田芳生氏もそうだが、この国の有名な活動家は中途半端な意見を掲げているので、
敵に対抗するには弱すぎて、結果的に敵対者の意見を勝たせてしまっている。


上野氏だけを責めてもどうしようもないが、岩波・金曜日、すなわち、
現在の主流左翼はもう少し本質的な部分を語らないと、結局のところ、
右翼と同じで支持稼ぎのパフォーマンスだと失望されてしまうのではないかと心配になる。


実際、左翼は信用できないと語る人間は少なくない。
もちろん、右翼を支持するための詭弁として語る阿呆も相当数いるが、
本当に、右翼も左翼も信用できなくて右往左往している人間も多い。

彼らに対して強い左翼を見せ付けることも今後必要になってくるのではないかと私は思う。

集団的自衛権の論争で忘れられていること

2015-08-03 00:35:05 | 軍拡
集団的自衛権の反対自体は大切だが、あわせて安保体制にもNoを唱えなければなるまい。
現在の日米同盟の最大の問題点は、アメリカとの間に対等関係が結ばれていない点にある。


集団的自衛権を容認させる動き自体が、湾岸戦争時に
日本が参戦しなかったことへのアメリカの不満が発端だったことを忘れてはなるまい。


集団的自衛権容認を阻止できたとしても、アメリカの正義=日本の正義とみなす
システム自体に変化がなければ、本質的な問題の解決にはなりはしない。


そういう本質的な問題に言及する論者は割りと少なくて、
私の知る限りでは浅井基文氏や白宗元氏ぐらいしか思い当たらない。


それどころか、「日本が北朝鮮(あるいは中国)になってもいいのか!」という
あんまりな意見も少なくない。視野が狭いと言うか何と言おうか……


そういう中で、私が最近、注目している方がスプートニクで
オピニオンを担当しているアンドレイ・イワノフ氏。

彼はモスクワ国際関係大学の上級研究員だが、
なかなかどうして、日本の論者にはない視点で物事をみつめている。

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29日、安倍首相は、参議院で安保関連法案を検討する特別委員会で発言し、
今回もまた、自衛隊の権限を拡大する法案が、憲法の平和主義の原則を変える事はない点を強調した。


安倍首相は、次のように述べているー

日米同盟の絆をさらに強化することによって、戦争を未然に防ぐ抑止力はより強化され、
 また、日本が国際社会とさらに連携し、地域や世界の平和のために協力することによって、
 より世界は平和になっていくだろう。



モスクワ国際関係大学のアンドレイ・イワノフ上級研究員は、
平和の強化に貢献したいとする安倍首相の意向は、尊敬に値するものとしながらも、
米国との軍事同盟を強化する事で、それができるとの首相の期待については、驚きを禁じ得ないでいる。


イワノフ上級研究員の見解を、皆さんに御紹介したい-


「多分、安倍首相は、米国のオバマ大統領を大変尊敬し、大変信用しているのだろう。

 一方オバマ大統領は、米国のみが世界中で平和と自由、
 そして民主主義を守るのだと演説するのが大好きなのだろう。

 20世紀中盤、米国は確かに、まずソ連がナチス・ドイツを壊滅させるのを助け、
 続いてソ連の支援を受けて軍国主義日本を壊滅させ、実際
 世界の平和と自由、そして民主主義を守った。


 戦後は長らく、米国は、ソ連を出所とする、共産主義の脅威と戦った。
 その際、彼らは、2つの体制の平和共存や平和的競争を訴えるソ連の提案を無視した

 
 そして1991年末、ソ連邦及び社会主義陣営の崩壊と共に、
 共産主義の脅威が消滅したが、米国の野望を押しとどめるものもなくなり、
 米国人は、世界中に自分達の価値観を積極的に植えつけ始めた。

 残念ながら、米国人達は、それを必ずしも平和的手段のみで行ったわけではなかった。
 こじつけられた口実で、彼らは、ユーゴスラビア、イラク、アフガニスタンで戦争を始め、
 リビアウクライナを含む一連の国々では、カラー革命を起こすか、あるいはそれを支援した。


こうした米国の『自由と民主主義の輸出』による罪なき一般市民の犠牲者は、
何百万とは言えないまでも、すでに何十万にも達している。


 そもそも米国は、ほんの200年と少しの歴史の間に、数多くの戦争を起こしてきた。
 
 様々な時期に直接米国の侵略を受け犠牲となった国々として、
 メキシコ、キューバ、ニカラグアなどがまず挙げられる。


 しかし誰も一度も米国を国際法廷に引き出さなかった。
 それゆえ今も米国人達は、武力を用いて、世界中に自分達の価値観を確立させ、
 実際上は自分達の利益を守る権利があると主張し続けている。

 そうした事を一人で行うのは難しいために、
 米国は、欧州ではNATOに頼り、アジアでは、特に日本に頼ろうと欲している。


 これまでのところ『自由と平和と民主主義』を米国人が守ろうとする時、
 それには独立国家への侵略や一般人の大量殺戮を伴ってきた。

 それなのに、安倍首相はなぜ、米国流に平和や自由を守る事が、
 より平和的だなどと期待感を表明するのだろうか?
 

 安倍氏は、それほどに素朴な人間なのだろうか? 
 そうした人物が、政治家としての権利をお持ちになり、軍事面を含めて、
 日本のような大国のリーダーで、果たしてあるべきなのだろうか? 

 日本の皆さんに、今まだ安保関連法案の討議が終わっていないうちに、
 この問いに是非答えて頂きたいものだ。後では、残念ながら、もう遅すぎるからである。」

続きを読む http://jp.sputniknews.com/japan/20150729/657148.html#ixzz3hfoR2SbN

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戦後70年を記念して、様々な企画が練られているが、
総じて太平洋戦争のことばかり取り上げられていて、
戦争が終わった後に日本やアメリカが何をしてきたのかを
反省しようとする動きは全く無い。



今、求められているのは、まさしくそれだと言うのに。
残念至極である。